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テレワーク中に転職活動、止まらないエンジニアの流出 どうやって引き止める?

キャリコネニュース

エンジニアを引き止める極意とは

突然、部下が退職を申し出たら――。マネージャーにとって不可避とも言えるメンバーの退職だが、社内事情などを考えて、どうしても手放したくない場合は引き止めを行うことになるだろう。

ところが、エンジニア不足を解消するLIG社のサービス「BiTT」の開発事業部マネージャーを務める久松剛さんは、「しっかりと予算を確保し、KPIを立てて管理される採用活動に対し、入社以降のキャリアパスに関する問題意識が相対的に低い。採用しっぱなしの状況になっている企業も多い」と警鐘を鳴らす。キャリコネニュースでは、エンジニアを引き止めるための極意を久松さんに聞いた。

テレワークの普及で転職面接は「平日の日中」に


久松さんは引き止めの重要性を語る前に"穴の空いたバケツ"を例に出す。

「去る人が多いと、当然メンバーは増えません。それどころか、離職率の高さは、新たな人材を採用する時にも不利に働きます」

採用には力を入れている半面、入社後のフォローアップが疎かになっている企業が多いのは問題だと話す。

また、テレワークが広く浸透してきた関係で、転職活動の仕方にも変化が起きているという。

「新型コロナウイルスが広がる2019年以前は、19時以降と退勤後の面接が多かったです。ところが、現在は軒並み平日の日中に行われることが多いのです。つまり、業務していると思っていても、テレワーク中に転職活動をしている人がいます」

こうした傾向から、リファラル(紹介)採用などを含めると、応募の時点で察知し、引き止めることは難しくなっていると言えそうだ。

引き止めのチャンスは「退職の直前」

久松さんは、自身が作成した「退職ジャーニーマップ」を元に、メンバーが退職に至るまでの行動と心理的作用を解説する。曰く、退職までには次の12ステップがあるそうだ。

(1)(他キャリアの)認知
(2)(他キャリアの)関心
(3)(転職への)きっかけ・後押し
(4)話だけでも聞いてみる
(5)お試し転職
(6)応募
(7)本選考
(8)内定
(9)内定承諾
(10)退職交渉
(11)退職決定
(12)退職

このうち(6)応募の時点では、メンバーに対して「何を言っても言葉が届かない」と指摘する。「この時は退職に向かうと思い込んで行動していますから。『自分の市場価値を調査する』という美化された言葉もありますよね」。下手に引き止めに動かず、気を付けて接する必要があるという。

一方で「意外と話を聞いてくれる」と話すのが最終局面の(10)退職交渉だ。久松さんは「エンジニアの中には、新しい職場で人間関係をゼロから構築することを面倒くさく感じる人も多いです」と話し、この(10)の時点が引き止める最後のチャンスだとした。

退職を事前に察知するには、傾聴ベースの「1on1」に加え、普段からの関係部署を含めた情報共有が大切となる。

「部署間でリーダー、マネージャーを集めて『このメンバーの様子が最近おかしい』と情報共有することも有効です。自部署の相手ではないからこそ『転職活動をしている』と打ち明けられる場合がありますし、同様の話が見えたり聞こえたりしてくる場合も多いです」

このほか、転職しそうなメンバーのツイッターアカウントを知っている部下に相談し、不満を吸い上げることも大切になるという。

退職理由の聞き取りは必須

よくある退職のきっかけとして、久松さんは「評価」「業績・景気」「事業方針の変化」「賞与」「同僚の転職」「年齢(特に30歳、35歳、40歳といった節目)」「結婚・出産」を挙げる。そして、こうした退職理由をメンバーが会社を辞める前に可能な限り聞き取ることが"今後に生かす"ために重要になるとする。

「メンバーが次に何をするのかに加えて、どこのエージェントを利用したか、リファラルならば誰の紹介で転職するのかを押さえることが大切になります。これを怠ると、芋づる式のメンバー離脱につながりかねません」

久松さんは、ある会社のCTOが自身の優秀な部下数名を連れて、会社を辞めたケースを挙げた。こうした悲劇を未然に防ぐため、企業側は二次災害、三次災害を防ぐための手立てを講じておく必要がある。

メンバーの引き止めを考える上でも、退職理由の把握は重要だ。久松さんは「引き止め対策マップ」と称して、X軸に「調整易」「調整難」、Y軸に「ポジティブ」「ネガティブ」を配した図表を見せながら説明する。

「自社で経験した、もしくは予想される退職理由をマッピングし、スピード感を持って引き止めることが重要です。その上でですが『調整難』かつ『ポジティブ』な退職理由は引き止めしにくい傾向にあります。例えば、退職理由が"人間関係"ならば『調整易』かつ『ネガティブ』に当たりますが、実際に人事異動で何とかなるケースが多いです。しかし、退職理由が"起業したい""新規事業に取り組みたい"ならば『調整難』かつ『ポジティブ』で、ほとんどの企業は対応できないでしょう」

このような場合は引き止めにこだわらず、会社のOB・OGとして関わり続けてもらう方針に振り切るのも重要だとする。

「退職対応が下手な会社は『情報漏洩するなよ』と釘を差して終わりです。でも、上手な会社ならば、アルムナイとして退職後もメンバーとの関係を継続します。そこから出戻りにつなげたり、担当業務を委託してアウトソースしたり。また、転職先の企業から発注を受けるケースなどもあります」

このように、退職者との新しい関係値の模索も引き止め同様に大切になるとのことだ。

フリーランスや副業の普及も転職を後押し

昨今、エンジニアの離職が増えている背景には、新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワーク、オンライン面接が増えているだけでなく、フリーランスや副業で働くメンバーが増えてきたという事情も根底にあるという。

久松さんは、現在の35歳以下は「出世欲が低い」とする調査結果を引き、「『リーダーに任命されたから退職したい』『ずっとプレイヤーでいたい』と言う人も増えました」と話す。本業で管理職を続けながら、副業でスタートアップに参加してプレイヤーを務めるエンジニアもいるようだ。

これらの背景から「息を吸うように他社の情報が耳に入る」「自社ではない環境に身を置くことを手軽に試しやすい」ことで、エンジニアが転職やフリーランスを考えやすいのが現状だという。久松さんは、

「メンバーの不満を察知することが重要です。1on1やSNSで異変を察知しつつ、不満があればしっかりと説明する必要があります」

例えば、不満の内容が「賞与が低い」ならば、ひざを突き合わせて「なぜ低かったのか」「どうすれば増えるのか」を丁寧に説明することが重要になる。特に、こうした説明がなく、賞与額の変動幅が大きい会社は人材流出のリスクが高いので注意が必要、とした。

「また、20代前半くらいまでのZ世代特有なのですが、横のつながりで賞与額をフランクに公開してしまう人もいます。そこで『賞与は人によって違うから言わないように』と伝えることも大切です。やはり横で比較してしまうと、不満も出やすくなってしまいます」

賞与が増えた場合も、会社側は「事業の調子、個人の貢献度合いから多めに出ている」などと個別に説明することが必要だとした。

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