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TikTokでもリバイバル!奥田民生「さすらい」風の時代の到来を四半世紀前に察知した曲?

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1998年02月05日 奥田民生のシングル「さすらい」発売日

TikTokでバズった奥田民生の「さすらい」


『Buzz Tracker』とは、Buzz(バズ・流行り)+ Track(楽曲・追跡する)を掛け合わせた造語だ。TikTokとSpotifyはそれぞれのプラットフォームの特性を活かし、共同でアーティストを応援することを主旨として、この『Buzz Tracker』プログラムが2022年4月にスタート。その第21弾マンスリーアーティストとして昨年12月に奥田民生が選出された。

その奥田が98年にリリースした「さすらい」がTikTokでバズってる!というSNS上の話題は、この『Buzz Tracker』が仕掛けたもの。TikTokを覗いてみると、老若男女、世代、国籍を問わず、このチルアウトした魅力が満載の楽曲で自由に気ままに楽しそうに踊る動画が数多く投稿されている。

様々な事象が喧々囂々と議論され、時には自己満足の正義で誰かが槍玉に挙げられるようなSNSツールから考えてみるとTikTokは現代のオアシスだ。何よりもフォロワーを楽しませようとするサービス精神で溢れている投稿者が多い。その中でも、良い意味 “ゆるーい” 楽曲で、”ゆるい” ダンスを見せる動画は、時を忘れ、頭を空っぽにしてくれる慌ただしい日常のエアポケットだ。そう考えてみるとTikTokは今の時代に一番相応しいプラットフォームなのかもしれない。

占星術の世界では “風の時代” へ


占星術の世界では2020年12月、200年ぶりに “風の時代” に入ったという。”土の時代” から “風の時代” へ。それまで金銭や地位、結婚など目に見える形が豊かさの象徴とされる封建的な時代から自由、平等、知性、精神性など、目に見えないものの価値が高まり、これまでの価値観、従来の常識に捉われない身軽な生き方が求められる時代に突入したという。

時代は緩やかに変わっていく。昨今のジェンダー問題や、昨年のジャニーズ帝国の崩壊、大物芸人の性加害問題など、それまでの権威が崩壊していく様子を目の当たりにして、この “風の時代” の到来というのはかなり現実味のある話に思えてならない。時代は変わっていくのだ。この変化の中を生き抜くヒントが奥田民生の「さすらい」にはたくさん隠されていた。

「さすらい」に隠された今の時代を生き抜くヒント


98年にリリースされた「さすらい」だが、この “風の時代” の到来を四半世紀前に察知した楽曲だと言っても過言ではないだろう。いや、奥田民生が92年にソロになってから、「愛のために」にしても「イージュー☆ライダー」にしても、この「さすらい」にしても、身軽で、自由で、何にも捉われずに、「肩肘を張ることなく、サラリと風のように生きてみないか」と語りかけているようだ。

 まわりはさすらわぬ人ばっか 少し気になった
 風の先を終わりを見ていたらこうなった
 雲の形を まにうけてしまった

“さすらわぬ人” とはつまり、凝り固まった常識の中で窮屈に生きている人のことではないか。もっと自由に身軽に、何にも捉われずに、自分の気持ちのままで生きよう、というメッセージが僕には感じ取れた。

リースから四半世紀経った今も時代に風化されない理由


後期ビートルズ、60年代後半からのフォークロックを踏襲しながら練り上げたサウンドメイキングも最高だ。ミュージシャン、プロデューサーとしての奥田民生の特性は、自らのルーツを惜しげもなくさらけ出すところにある。好きで好きで仕方がない… そんなオマージュが楽曲に溢れている。プロデューサーとして辣腕を振るったPUFFYの「サーキットの娘」で感じるビートルズの「アイ・ソー・ハー・スタンディング・ゼア」や、「これが私の生きる道」で感じる「プリーズ・プリーズ・ミー」や「デイ・トリッパー」など言い出せばキリがないのだが、そこに溢れる愛は、模倣という領域を超えて新たな価値観として時代に浸透していった。

98年という「さすらい」がリリースされた時代性を考えてみても、この音作りは決して時代の波に乗ったものではなかった。自分の気持ちのまま、信じるものをサラリとアウトプットした結果が、リリースから四半世紀経った今も時代に風化されず、いや、時代を象徴するような音として、世代を問わず受け入れられた結果がTikTokでの “バズり” だったと思う。

「さすらい」に各々の振り付けで自由に踊るTikTokerたちの中には、この曲がいつの時代のものなのか、どんな人が歌っているか知らない人が大勢いると思う。だけど、「なんかいいじゃん」という気持ちで、楽しそうに踊り、それを見た大勢の人がほっこりした幸せな気持ちになれる。幸せは伝播する。これでいいのだ。これこそが音楽の持つ力ではないだろうか。風のように軽やかに「さすらい」を口ずさむ人がたくさんいたのならそれは奥田にとって音楽家としての冥利だ。それがたとえ “よみ人しらず” だったとしても奥田民生の音楽は、その本懐を貫いたことになる。

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