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アジア太平洋の空をクリーンに 世界経済フォーラムがSAFの普及を後押し

ELEMINIST

世界経済フォーラムは、シンガポール政府系ファンドが所有する「GenZero」と共同で、アジア太平洋地域における持続可能な航空燃料(SAF)の需要拡大に向けてイニシアチブを始動。航空分野から世界の脱炭素化を目指す。

ターゲットはアジア太平洋地域

シンガポールで5月5日〜8日に開催された「GenZero Climate Summit 2025」で、世界の気候変動アクションを推進するグローバルリーダーが集結するなか、「グリーン・フューエル・フォワード(Green Fuel Forward)」の立ち上げが発表された。

国際民間航空機関(ICAO)では、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにする目標を掲げている。今回の新たなイニシアチブは、その世界的な航空脱炭素化の取り組みを支援する。

具体的には、持続可能な航空燃料「SAF(サフ)」の需要喚起と認知度を向上させることによって、最終的にアジア太平洋地域(APAC)での製造技術の革新と生産拡大を目指す。

イニシアチブ発表の場で、ボーイング社のアジア太平洋地域サステナビリティ・リーダーであるロバート・ボイド氏は「今世紀半ばまでにネット・ゼロ、あるいはそれに近い状態へ実現する唯一の方法は、大量のSAFを導入することだ」と述べた。

ボーイング社は、2030年までにすべての民間航空機についてSAFで運航できるよう認証取得を目指している。そのことからもSAFの生産拡大の重大性がうかがえる。

世界最大の航空市場で不足するSAFの生産

世界の旅行業界向けデータ・プラットフォームを提供するシンガポールのOAGの最新の分析によると、APACは、2025年に世界でもっとも競争力のある航空市場としての地位を確立すると予想されている。

とくに各地域での国内市場についてコロナ禍からの回復が著しく、パンデミック前を上回る水準(2019年比で4.7%増)だ。国際市場も数値こそ2019年の水準を下回っているものの、5億9,480万席を達成。世界の国際線座席数の4分の1を占める、世界第2位の国際航空市場だという。

APACはそんな強大な航空市場でありながら、ヨーロッパに比べSAFの普及が遅れており、生産量も十分ではない。「グリーン・フューエル・フォワード」は、今後数年間のSAF生産計画に需要が追いついないという現状に警鐘を鳴らしている。

すでに参加に同意する航空会社、製油会社、物流会社、銀行など合計16の企業・団体には、APACでの国際線の座席供給量を牽引するシンガポール航空も名を連ねている。

航空市場は成熟し、シンガポールを含む各国の政府が航空機の燃料に含まれるSAFの割合を着実に増やすよう義務づける動きも進みはじめた。このイニシアチブを通じて主要な業界関係者が結集し、いかにSAFの需要を増やして価格を引き下げられるかが、今後の鍵となりそうだ。

「SAF証書」で「環境価値」を可視化

化石由来のジェット燃料に代わる持続可能な燃料として登場したSAF。従来のジェット燃料に比べてCO2排出量を最大80%削減できるといわれても、漠然としてイメージがわきにくいかもしれない。

そこで知っておきたいのが「環境価値」の考え方。再生可能エネルギーには「エネルギーとしての価値」のほかに、CO2を排出しない「環境価値」がある。この2つの価値は切り離して取引されていて、SAFでは「SAF証書」として「環境価値」のCO2削減効果が可視化されている。

近年、企業活動による温室効果ガス排出量の評価のほかに、間接排出量削減への貢献が求められているが、自社の排出量や従業員の出張等による排出量を「SAF証書」で相殺できるとして、活用する企業が増えている。

航空会社側にも、SAF証書を導入する動きが世界的に広がっており、「グリーン・フューエル・フォワード」でもSAF証書の理解を促進する企業向けのガイダンスツールなどを提供するという。

今回の取り組みをひとつのきっかけに、航空業界の脱炭素化と産業の活性化が両立できる未来に向けて、SAFの利用や生産が増えていくことを期待したい。

※参考
WEF-GenZero aviation initiative aims to boost green fuel uptake in Asia|The Straits Times
Green Fuel Forward|World Economic Forum
Asia Pacific Aviation Market Soars:|Global Newswire

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