Yahoo! JAPAN

今まさに充実の時! 『ファルスタッフ』『泥棒かささぎ』を連続して指揮する園田隆一郎に聞く

SPICE

指揮者 園田隆一郎と、大阪交響楽団コンサートマスター林七奈。

昨年(2021年)、オペラファンの間で、注目すべきオペラの一つに挙げられていたロッシーニの『泥棒かささぎ』関西初の全曲上演は、コロナによる緊急事態宣言の延長などにより、本番の1週間前のオーケストラ合わせ前日に延期が決まった。

延期決定から1年以上を経過した、来る2022年8月9日に開催される延期公演には、幸いにも殆どの出演者やスタッフが当初の予定通り出演が叶うという。もちろん演奏も当初の予定通り、大阪交響楽団。この日、大阪交響楽団の名曲コンサート「園田の田園」で、ベートーヴェンの交響曲第6番『田園』を指揮していた園田隆一郎は、両方のオペラでコンサートマスターを務める林七奈と、笑顔の再会を果たした。

上演機会の少ないオペラ『泥棒かささぎ』だけに、『ラ・ボエーム』や『トスカ』のように、ストーリーを知っている人は少ないと思われるので、指揮者 園田隆一郎に話を聞く前に、まずオペラのあらすじをご覧いただこう。

【あらすじ】
お屋敷で働く少女ニネッタは、その家の息子ジャンネットと恋人同士でした。或る日、兵隊に行っていたジャンネットが帰ってくるということで、村はお祝いムードに包まれます。喜びいっぱいのニネッタに対し、二人の関係を快く思わないのは、お屋敷の奥方にしてジャンネットの母親ルチーア。ジャンネットの父親ファブリツィオは、二人の関係を祝福しながらも奥さんに気を遣い、遠くから見守っています。ジャンネットの帰還祝いパーティを終え、一人になったニネッタの元へ、出征しているはずの父親フェルナンドが現れます。軍隊でトラブルを起こして逃げて来たのです。ニネッタは、逃走資金が必要な父親から、銀のスプーンを預かり、小間物商イザッコに売りますが、ちょうど同じタイミングでお屋敷から銀のスプーンが1本なくなったため、盗みの疑いをかけられてしまいます。代官のゴッタルドは、ニネッタに言い寄っても袖にされた腹いせに、彼女を犯人に仕立て上げ、牢屋に入れてしまいます。そして死刑宣告を受けたニネッタを助けようとしたフェルナンドも捕らえられてしまいます。ニネッタは刑場に引き立てられ、あわや死刑が行使される寸前、お屋敷で働く少年ピッポが、かささぎの巣から銀のスプーンを見つけ出し、ニネッタの無罪が確定。最後はどん底から一転、大団円へと向かうのです。

当公演の指揮者 園田隆一郎に話を訊いた。

―― オペラ『泥棒かささぎ』の演奏会形式による関西初演が、1年遅れで開催されます。

本番1週間前の延期決定には、出演者、スタッフともに悲しい思いをしましたが、幸いにも主催者サイドの迅速な動きによって、延期決定と同時に1年後の日程が発表出来ました。しかも、関係者がほぼ全員が参加可能な奇跡のようなスケジュール!まさに制作チームのファインプレーです。結果として、1度仕上げた作品を、1年寝かせて再び取り上げるという、贅沢なスケジュールで『泥棒かささぎ』を皆さまにご覧頂けます。

結果として贅沢なスケジュールで『泥棒かささぎ』をお聴きいただきます。  (C)H.isojima

―― 出演者は1年かけて、この作品と向き合うことが出来たと云う訳ですね。

そうですね、1年前に皆様にはヒントをお渡ししています。どのような形で出演者の皆さまが稽古初日においでになり、私と対峙する事になるのか、今からとても緊張しています(笑)。もっとも、コロナの影響で歌える喜び、音楽できる事への感謝の思いに目覚めたプロの音楽家は強いですよ。オーケストラは歌心溢れる演奏に定評のある大阪交響楽団。こちらもお待たせの末の本番です。ご期待ください。

大阪交響楽団  (C)飯島隆

―― 初の試みとなる、オペラ「泥棒かささぎ」を予習するための “レクチャーコンサート” 6月22日14時 あいおいニッセイ同和損保ザ・フェニックスホール)のチケットは、既に売り切れてしまいましたが(当日券の発売は無し)、楽しそうな内容ですね。

このオペラの中心となる主人公ニネッタ役の老田裕子さん、そのお父さんフェルナンド役の青山貴さん、悪代官ゴッタルド役の伊藤貴之さんに加え、ロッシーニオペラに造詣の深い朝岡聡さんに司会とお話でご出演いただきます。このオペラの見どころや代表的なアリアなどをお聴きいただき、本番に向けたワクワク感を盛り上げて行ければと、趣向を凝らしています。

“レクチャーコンサート” に出演するのはこの3人

ゴッタルド伊藤貴之、ジャンネット小堀勇介、園田隆一郎マエストロ、ニネッタ老田裕子、フェルナンド青山貴(昨年の稽古時に撮影)  (C)H.isojima

―― 早々のチケット完売は、お客様の期待の表れでしょうね。お客さまも待ちに待った『泥棒かささぎ』、楽しみです。

“レクチャーコンサート” は完売しましたが、本番のチケットはまだまだございますので、よろしくお願いします(笑)。

―― 園田さんと云えばイタリアオペラ、とりわけロッシーニのスペシャリストです。一口にイタリアオペラと言ってもロッシーニ(1792~1868)とプッチーニ(1858~1924)では随分違うように思います。ロッシーニ音楽の魅力を教えてください。

ロッシーニとプッチーニでは、歌舞伎と映画くらい違います。例えばプッチーニの代表作『トスカ』で、絶叫し怒り狂い、相手を突き放すようなストレートな感情表現をぶつける場面があったとすると、ロッシーニは何を怒っているのかを5分くらいかけて表現します。美しい旋律と軽やかなリズムに乗せて、同じフレーズを繰り返しながらコロラトゥーラという技術を駆使して表現する。その間、音楽は弱音から始まり、同じ旋律を繰り返すロッシーニクレッシェンドに乗って時間をかけてフォルテへ、そしてテンポも増していきます。このように誰もが持ち合わせている、気持ちが大きく育っていく感覚を、歌舞伎の型のような約束された表現方法で見せる事により、リアルな映画にはない、美しさと満足感が得られる。現代人からするとまどろっこしく感じる人もいるでしょうが、それこそがロッシーニ音楽の魅力なのです。

言葉を選びながらロッシーニ音楽の魅力を語る指揮者 園田隆一郎  (C)H.isojima

―― なるほど。ロッシーニの時代特有の音楽表現という事ですね。

そうです。主人公が危機的状況に陥ったとしたら、その心境をどう表現するのか、とくと聴いてやろう!というのが当時のお客さんの姿勢です。それがプッチーニのように一瞬で終わると、あり得ない!とお客さんは思ったはず。1792年生まれのロッシーニと1858年生まれのプッチーニでは、これだけ音楽表現が変わっているのです。

指揮者 園田隆一郎  写真提供:AMATI

―― ありがとうございます。では『泥棒かささぎ』の公演について、メッセージをお願いします。

念願の『泥棒かささぎ』関西初演を、期せずしてベストな形で開催します。先に、あらすじをご覧になって頂いたかと思いますが、悲劇の先にある喜劇的決着まで、あまりにもドラマチックで壮大なスケールのオペラです。ロッシーニは『セヴィリアの理髪師』を観たことあるのでよく知っているよ!と言われる方も、騙されたと思ってぜひ観て頂きたい。きっと驚かれるはずです。それほどスケールの大きなオペラに、1年前よりもパワーアップした豪華な出演者で挑みます。ぜひ、フェスティバルホールにお越しください。皆様のご来場をお待ちしています。

出演者全員でパシャリ!(昨年の稽古時に撮影)  (C)H.isojima

―― そして、お忙しい園田さんは『泥棒かささぎ』の前に、びわ湖ホールでヴェルディ(1813~1901)の『ファルスタッフ』(2022年7月15日~18日 滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 中ホール)を指揮されます。こちらは、びわ湖ホールの専属歌手集団、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーが中心の、若さ溢れるプロダクションです。

昨年上演した、プッチーニ『つばめ』もそうですが、びわ湖ホールの「オペラへの招待」シリーズは、びわ湖ホール声楽アンサンブルの皆さんが中心となった、若い人たちによる刺激的なオペラ作りが楽しくて仕方ありません。毎回、現役生とOBに加え、難しい役に一人か二人、びわ湖ホールに所縁がある第一線級の歌手の方にゲストで入って頂いています。今回は『泥棒かささぎ』でもご一緒する青山貴さんにタイトルロールを、びわ湖ホール制作の『リゴレット』や『ラインの黄金』でお馴染みの中島郁子さんには、クイックリー夫人役をおねがいしました。『ファルスタッフ』は悲劇王ヴェルディが残したとても珍しい喜劇で、「この世はすべて冗談だ!」と人生を笑い飛ばす最晩年の傑作オペラです。こちらのオペラも自信を持ってお勧めいたします。こちらも演奏するのは、コンマス林七奈さん率いる大阪交響楽団。皆さま、びわ湖ホールでお待ちしています。

『泥棒かささぎ』『ファルスタッフ』 どちらもコンサートホールでご来場をお待ちしています!  (C)H.isojima

取材・文=磯島浩彰

【関連記事】

おすすめの記事