Yahoo! JAPAN

【東京都知事選】小池百合子氏3選、得票数を見れば圧勝だけれど…⁉ 今回の選挙の意味や東京都の課題について考えよう

アットエス

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「東京都知事選」。先生役は静岡新聞の橋本和之論説委員長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年7月9日放送)
 
(山田)今日は静岡トピックスと言いつつ、東京都知事選でございますけども。

(橋本)静岡にも影響は大きいところですからね。現職の小池百合子さんは2期、都知事を務めていて、この2期を振り返ると批判もありましたが、結局292万票を取って当選しました。川勝平太前静岡県知事が一番取ったときでも約108万票でしたから、さすがに首都の首長選というところです。しかも2位になった無所属新人の前広島県安芸高田市長の石丸伸二さんに120万票以上の差をつけていて、結果だけ見れば圧勝と言っていいと思います。午後8時に、もう当確が出ましたよね。

(山田)すごいですよね。カウントダウンまでして、8時にドーンと「小池百合子当確!」と。

(橋本)事前の調査や、投票された方への出口調査をたくさんやっているので、その結果を積み上げて小池さんに間違いないなということだったんだと思います。

(山田)出口調査の段階でも、もう圧倒的に小池さんだからということですか。

(橋本)ちょっと勝っているぐらいだと、実際に票を​開いて積み上げているのを見てからでないと判断できないということになるので、出口調査でかなり差があったのだと思います。

選挙そのものが、小池都政の継続か刷新かを問われた知事選だったということだと思いますが、終盤情勢で既に「小池リード」というようなことで見出しが出ていたので、当選自体は予想通りかなと。都民が小池都政の継続を望んだという結果だったと思います。

ただ、2位の石丸さんと3位の蓮舫さんの票を合わせると、小池さんの票をちょっと上回ります。それは小池都政の批判票と捉えるべきです。小池さんは3期目で、安定感がありますが、3期目の都政運営に当たっては、そうした批判の声にいかに耳を傾けていくかが重要になってくるんじゃないかと思います。

(山田)小池さんの街頭演説が野次で中断されたというニュースもあったから、けっこう接戦なのかなと思いきや…という感じでした。当初は、メディアの情報だと小池さんと蓮舫さんの2人の争いという感じの取り上げ方でしたよね。

(橋本)小池さんは現職で、蓮舫さんも参院議員を長くやってらっしゃいますので、知名度がありますよね。

戦略として、蓮舫さんは国政の与野党対立の構図を知事選にそのまま持ち込んだと思うんですが、それが裏目に出たのかなと。都政には都政の課題があるということを有権者が判断したのではないかと思います。直前まで立憲民主党に所属していたのでそこから応援がたくさん来て、共産党からも支援を受けたのですが、無党派層の中に共産党に批判的な層が一定程度いると思われるので、その支持が得られずに終盤失速してしまったというような見方もされていますね。

(山田)一方、石丸さんはどうですか。

(橋本)知名度でだいぶ劣っていたので、最初は小池さんと蓮舫さんによる事実上の一騎打ちの構図と言われていましたが、ネットの世界では相当名が知られていたので追い上げるだろうなと思っていました。最終的には、166万票と大きく蓮舫さん(128万票)を引き離すという結果でした。

(山田)橋本さん的には、石丸さんのこの166万票、どう思いました?

(橋本)いやもう、すごい数字だなと。蓮舫さんが失速したということが大きいと見るべきか、石丸さんが伸びたと見るべきなのかという話になると思いますが、ネットの力がなければ都内では知名度が全くなかった地方の首長ですよね。そこを、ネットで情報発信して、すごく巧みに名前を知らしめたことで2位という結果になったということです。若い人の票を集めたと見られています。

あと、先週の「3時のドリル」で市川雄一ニュースセンター専任部長が都知事選のポスターの問題を取り上げましたが、選挙のあり方についても「今まで通りのルールではまずいんじゃないの」という指摘がされています。そういうことが浮き彫りになった選挙でした。これから公職選挙法の改正などがされていくと思いますが、そういうきっかけになった選挙だったということだと思います。

(山田)あと、ちょっと終わった後も何かギクシャクしてる選挙ですよね。石丸さんのマスコミに対するコメントに批判があったり、未だにSNSでは小池さんでいいのかという書き込みもあったり。

(橋本)蓮舫さんに対しても、賛成というか応援もあると思うんですけどもね。選挙中にそうした議論を戦わせることはすごく意義があることですが、選挙で決まってしまった後にそういう争いをするのは、あまり建設的ではないなと感じます。

子育て支援策に熱心に取り組んだ

(山田)小池百合子知事の圧勝ということですが、小池さんが評価された理由もちょっと聞かせてください。

(橋本)高校授業料の実質無償化や、0歳から18歳に月5000円を支給する「018サポート」など、子育て支援策に熱心に取り組んだことが評価されたと言われています。

また、小池さんは初当選した2016年の知事選で「七つのゼロ」ということを言っていました。このうち、「ペットの殺処分ゼロ」は達成し、「待機児童ゼロ」はまだゼロではないけれど当初よりだいぶ減らしたという状況です。

一方で、介護離職については「ゼロにします」と言ったのが、逆に増えてしまっている状況で、都道の電柱を地中化してゼロにするというのも大きな成果が出ていないという話です。

そのために「七つのゼロ」という公約を掲げたものの「果たせていないじゃないか」という批判も結構ありました。しかし、都民はそこまでシビアには見ておらず、全体的に小池都政は及第点という判断をしたということになると思います。

逆に石丸さん​や​蓮舫さんは、小池さんの実績を覆すほどには有権者に訴求できなかったということでしょう。裏金事件で逆風にさらされている自民と、同じ与党の公明が小池さんを支持したほか、以前から出ていた学歴詐称疑惑が今回選挙前に再燃しましたが、それによって「小池さんを変えろ」という大きな流れにはならなかったということですね。

(山田)特にこの4年間は、コロナやオリンピックがあって小池さんの評価が分かれるはずなのに、そこの評価はどうなのかな。

(橋本)小池さんが取った票より、小池さん以外の候補者に入れた人の票が多かったわけですから、そういう人たちの批判があることは間違いありませんよね。強く「やっぱり小池さんじゃ駄目だ」と言って他の候補を応援している人たちも多かったわけですから。

ただ、全体として見ると、子育て支援に力を入れて実績を上げていて、「実際家計が助かっている」「子供を学校に行かせられてよかった」などと思っている子育て世代の人たちがたくさんいたので、その票が小池さんに集まったということではないでしょうか。

東京一極集中という重い課題に、3期目の小池氏はどう向き合う⁉

(山田)問題点については、どうですかね。

(橋本)東京都の財政は、ヨーロッパのスウェーデンに匹敵すると言われるほど大きな規模のため、あまり問題になっていませんが、東京五輪に合わせて競技場などいろいろと整備し、その後の運営が赤字になって財政的な重荷になっています。

また、明治神宮外苑の再開発事業を巡り、樹木の伐採や高層ビル建設などの計画に「絶対反対」と住民が声を上げていたりということもあるので、すべて順風満帆とは言えない状況です。次の任期に、そうした難しい課題に挑んでいかなくてはいけないと思います。

(山田)うーむ。

(橋本)それから都知事選が告示された直後の6月21日付けの静岡新聞「社説」で取り上げましたが、国全体で見て、東京への「一極集中」という重い課題もあります。

地方からすると東京都に対して、「小池さんは東京一極集中ってどう考えるんですか」という思いがあると思うんですよね。

全国の都道府県知事でつくる全国知事会で、「国に東京一極集中を是正するように働きかけましょう」「こういう提言をしましょう」などと話し合うんですけど、東京対地方のような構図になって、なかなか話がまとまらなかったりするんですよ。

税収についても、「東京に地方税の税収が集中しすぎているから何とか是正してほしい」と、国に制度の改善を申し入れようとしても、東京の方も税収が減っては困るので、小池さんとは「パイを奪い合う話をするよりも、もっとパイを広げるような議論しましょうよ」というような話で終わってしまったというようなこともありました。

社説の中でも書きましたが、東京は一極集中の影響もあって住宅価格が高騰し、普通のサラリーマンではとても家を買えないような状況になってきています。また、選挙前に発表された2023年度の合計特殊出生率は、全国47都道府県の中で東京が最下位で0.99になったということも話題になりました。

子供を産み育てにくいところになっていて、それはやはり東京一極集中の帰結だと思うんです。このまま東京一極集中が進むと、地方はどんどん人が減って疲弊し、東京だけに人が集まっていく。でもその東京もますます過密で、住みにくい都市になっていく。それって東京にとっても幸せじゃないと思うんですよ。

(山田)そうですね。

(橋本)だから、国と全国の都道府県が一緒になって、利害がいろいろあっても、もっと大きな目で「東京一極集中をどう是正していったらいいか」ということを考えるべきではないかと、社説では書きました。そういうことも、小池さんに言いたいなと思いますね。

(山田)どうしていくんでしょうかね。でもこの選挙に勝ったからには、橋本さんがおっしゃったことも進めてもらいたいですし、今までの8年間じゃない小池さんを見せてもらいたいなと。

(橋本)せっかく3期目をやるわけだから、新しい事に取り組む姿勢をぜひ見せてほしいなと思います。

(山田)「密です」とか、いろんなキーワードとかを残す人ですから、また何か出てくるでしょうね。今日の勉強はこれでおしまい!

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 両津勘吉のアクションドールをお世話する2歳女児 「両さん愛が止まらない」

    おたくま経済新聞
  2. 舞浜シェラトンで仏クリスマス伝統料理を味わう「ファミリークリスマスブッフェ」

    あとなびマガジン
  3. お姫様抱っこからの小舟デートも! ドラマチックすぎるニューヒロイン・浮舟~『源氏物語』宇治十帖の楽しみ方 後編~

    さんたつ by 散歩の達人
  4. 今年は巾着袋入り♪毎年人気の紀ノ国屋の「自家製シュトーレン」オンラインストア限定カラーも登場!

    ウレぴあ総研
  5. 1枚でおしゃれに!初冬に人気の「華やかワンピース」5選

    4yuuu
  6. 大人女子はマネして!マイナス5歳見えショートヘア〜2024年初冬〜

    4MEEE
  7. 「人生初」3時間並んだTDLで起きた悲劇「キャストの方から衝撃の一言」

    Ameba News
  8. <おばあちゃんの本音>孫の世話ばかりしたくない!娘が私に孫を預けて遊びに行く……

    ママスタセレクト
  9. 赤ちゃん猫が鳴いたら、すかさず犬が…まさかの『献身的なお世話』が243万表示「母性が呼び覚まされた瞬間」「なんて優しい世界」と悶絶の声

    わんちゃんホンポ
  10. ジュビロ磐田ユース、プレミアPO進出に大きく近づく勝利。藤枝明誠戦後の監督・選手のコメント<U-18プリンスリーグ東海 >

    アットエス