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「山奥ニート本」著者が語る、うらやましすぎる山奥での「自粛」生活

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新型コロナウイルス感染症対策のため、社会的距離「ソーシャル・ディスタンス」の重要さが叫ばれるようになって日が経つ。人と人との距離を開けて日々を暮らすことを考えてみると、思った以上に難易度が高いことに気づく。特に大都市では想像以上に困難なことだろう。通勤、職場、趣味や娯楽、生活のあらゆる側面で「人が密集」していることに気づく。人と人が密集していることで生まれる文化資本の強大が都市に住む利点のひとつだが、それが裏目に出ている状態だ。

都市に住むことの脆弱性が明らかになった今、注目したい一冊の本がある。山奥で集住する「ニート」たちの暮らしを書いたエッセイ「『山奥ニート』やってます。」だ。

5月20日に出版されたこの本は、すでに重刷がかかっている。山奥ニートたちの、厭世的でありながら日々を楽しむ生活に、熱いまなざしが向けられているのだ。

「『山奥ニート』やってます。」 石井あらた著・光文社刊 

著者の石井あらたさんは、2014年から現在まで和歌山の山奥に暮らしている「山奥ニート」のひとり。住まいまでは駅から車で100分、道中はヒヤヒヤするほどの難所ばかりの山道だという。「ニート」のみなさん以外でこの地域に住んでいる住人は高齢の方々5名のみという、まさに「限界集落」だ。

彼らの住まいは小学校だった施設を人が住めるようにリフォームした建物。元小学校だけあってひとつひとつの部屋面積は広く、個人ごとのスペースもあるという。当然、一人当たりの占有スペースで考えると都市でのそれとは段違いだろう。

山奥というだけあって町からはかなり離れているが、その分周りは自然がいっぱい。庭に出るような感覚で川遊びだってできる。

 

石井あらたさんに、このコロナ災禍中の山奥生活について伺った。

 

——ご出版おめでとうございます。出版にあたって、周囲の反応に変化はありましたか。

 

「うーん、出版されたからと言って、山奥は何にも変わらないですね。ようやく背負ってた義務がなくなったなーという気持ちはあります。集落の人や、NPOの亡くなった理事長(※石井さんを山奥へ招いた方)の奥さんが『よかった』と言ってくれて、ホッとしました。」

 

——山奥では、今回の新型コロナウイルス感染症での影響が少なそうに感じるんですが、実際のところいかがでしょうか。

 

「防疫のため、現在は新たな滞在者・見学者の受付を停止しています。この集落に万が一ウイルスがやってきたら、年寄りばっかなので全滅するかもしれないですからね。それくらいでしょうか。」

 

——なるほど、外部からのお客さんは停止しているのですね。コロナウイルス感染予防で自粛生活をしている地域が多い中で、山奥ニートの皆さんの生活はいかがでしょうか。

 

「実家に一時的に帰ってから、気を使ってこっちに戻るのを自粛している人は何人かいます。こんなに共生舎に人が少ないのは、5年ぶりくらいかも。それ以外は特に変わった点はないですね。」

 

——建物も広いですし、密集も起こりにくそうですね。

 

「はい。わざわざ近づいて話すこともあまりないので、『社会的距離』は最初から取れていますね。リビングの隅と真ん中で別々のことをやりながら、気が向いたら話す、という光景をよく目にします。食事も、みんな一斉に集まってとるわけではないですし。」

 

——大変羨ましいです……普段通り、のんびり楽しんでいらっしゃるんですね。

「そのですね、このご時世ですがバーベキューしたり、Switchでカラオケしたりして、いつも通りやってます。山奥なので、大声で歌っても騒音で苦情が来ることはないですからね。あと、この季節は川も緑も綺麗で、その美しさを楽しみました。」

(石井あらたさんのTwitterより) 

外出やレジャーをしにくくなった身からすると、なんとも羨ましい生活のオンパレードであった。「都市で失った生き物としての感覚を……」という表現では陳腐だが、人と人が密集して「いない」生活のメリットに目を向け始めても良い頃なのかもしれない

text by Shuko Takeda

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