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「芝居づくりって面白い!」 釜石の劇団もしょこむ 市民ら対象にワークショップ

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 釜石市の「劇団もしょこむ」(小笠原景子代表、10人)は5日、大町の釜石PITで、一般市民を対象にした演劇ワークショップ(WS)を開いた。芝居づくりの楽しさを味わってもらおうと初めて企画。高校生と社会人7人が、構想から台本作り、舞台上での演技まで一連のプロセスに挑戦。一から創り上げる演劇の魅力を体感した。

 小笠原代表(38)、同劇団立ち上げメンバーで、現在はプロの俳優として東京を拠点に活動する菅野結花さん(31)が講師を務めた。始めに、自分の気持ちに向き合う、仲間とコミュニケーションを取りながら体を動かすといった表現WSで心身をリラックス。2人1組で自己紹介し合った後、会話を文字に起こし、書き起こしたものを再現するという体験をした。

互いの自己紹介を文字に起こし再現する台本WS


 「芝居というと舞台上で仰々しく演じるイメージがあるかもしれないが、今のような普通の会話のキャッチボールでも脚本(台本)ができ、1分半の芝居が完成する。難しく考えずにやってみて」と小笠原代表。この後、高校生(3人)と社会人(4人)に分かれチームを結成。劇団メンバー(3人)も1チームを作り、10分の芝居作りに取り組んだ。

 台本には、くじ引きで1人1枚ずつ引いた単語を何らかの形で盛り込むことが条件。高校生チームは「タンゴ、船、まほう」、社会人チームは「芸人、みかん、部活、○○太郎」、劇団チームは「病気、マイケル、平」という“お題”を劇中に入れ込むことに。アイデアを出し合い、試行錯誤しながらストーリーを作り上げた。

小笠原代表(中央)から台本作りの基礎を学ぶ


 台本完成後は演技の稽古。セリフや掛け合いの練習、衣装や小道具の準備、ステージの使い方のシミュレーションなど、発表に向けて各チームが奮闘した。最後は出来上がった芝居を披露。オリジナリティーあふれるストーリー展開、笑いの要素、堂々の演技など、4時間余りで作ったとは思えないほどの完成度を見せた。

 これまで釜石市民劇場に7回出演している高校生、矢浦望羽さん(16)は「お題に沿って話の構成を考えるのが難しかった。3人の意見をまとめるのも大変で…」と脚本作りに苦労した様子。それでも経験豊富な演技のほうはアドリブも飛び出す余裕。「自分なりに想像して演じるのが楽しくて大好き。今後はエキストラにも挑戦したい」と目を輝かせた。

息もぴったり!堂々とした演技で大人たちを感心させた高校生チーム


話のオチも盛り込み、完成度の高い芝居を見せた大人チーム


 市職員の八木橋朋広さん(27)は「何げない会話が舞台の題材になりうるというのが面白い経験だった」と新鮮な驚き。演技自体も初めて体験。「人前で演じるのはまだハードルが高いが、こういう(WSの)機会があればまた参加してみたい」と興味をそそられていた。

 小笠原代表は釜石市民劇場や講師を務める宮古市のこども劇団で、子どもたちの生き生きとした姿を目の当たりにし、演劇を続けられる環境の必要性を実感。演じるだけでなく舞台を支えるさまざまな役割がある演劇には「いろいろな職業の種が散らばっている」とし、「個々の才能を生かせる場づくりのきっかけにもなれば」と今回のWSを企画した。今後も継続していきたい考え。

演劇の魅力を共有したWS参加者と劇団メンバー

「もしょこむ」創設メンバーの菅野結花さん 釜石の演劇活動継続に喜び


劇団もしょこむの立ち上げメンバーで、現在は東京を拠点に俳優として活動する菅野結花さん


 演劇WSで講師を務めた菅野結花さん(陸前高田市出身)は、2015年に誕生した「劇団もしょこむ」の初代メンバー。当時は岩手日報社の記者として釜石支局に勤務。市民劇場出演で知り合った小笠原景子さんと意気投合し、新劇団を立ち上げた。旗揚げ公演では、震災で両親を亡くし仮設住宅で暮らす姉妹の心の葛藤を描いた作品を演じ、被災者らの共感を得た。

15年3月の劇団旗揚げ公演「平行螺旋」。小笠原さん(右)と姉妹役を演じる菅野さん


 釜石を離れて1年後、俳優の道を志し上京。劇団青年座研究所を経て、現在は映像作品への出演を中心に活動する。今回は“古巣”での久しぶりの活動。自身のこれまでの経験を生かし、WS参加者に演劇の魅力を伝えた。

表現WSでは演劇で鍛えた体のしなやかさも披露。参加者を驚かせた


 「自分たちがやりたいことを実現するために、みんなで知恵やアイデアを出し合う。互いに学び合い、教えられる対等な関係でできるのが演劇」と菅野さん。「やりたいと思った時にすぐに参加できる場が身近にあることも大事」とし、今回のWSのような地方での学びの機会の意義を強調する。

 この日は懐かしい仲間とも再会を果たした。「勢いで立ち上がった劇団が7年も続いている。感慨深い」と喜びを口にし、興味を持つ若い世代への経験やノウハウの継承で釜石の演劇文化がさらに盛り上がっていくことを期待した。

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