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【1984年の革命】シンディ・ローパーの “女の子賛歌” 80年代の空気を決定づけた歴史的1曲

Re:minder

1984年03月10日 シンディローパーのシングル「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」ビルボードHOT100 で最高位記録(2位)

1984年の革命 vol.4
シンディ・ローパーの “女の子賛歌” 80年代の空気を決定づけた歴史的1曲

もともとは男性アーティストが歌った「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」


「オレに群がる女の子たちだって、要は楽しく “やりたい” ワケじゃん」

「女の子たちはただ、楽しくやりたいのよ 人生を楽しみたいだけなの」

これ、どっちも「Girls Just Wanna Have Fun」の訳である。前者は遊びまくってるモテ男の視点。後者は女の子自身の視点だ。ニュアンスの違いを出すためにあえて思いっきり意訳してみたけれど、男女どちらが歌っているかによって、このフレーズはまったく意味合いが異なってくる。

ご存じのように「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」はシンディ・ローパー初のメジャーシングルにして代表作だ。日本ではちょうど40年前の1984年2月に発売されヒットした。シンディが書いた曲だと思っている人が多いが、もともとは男性アーティストが自分で歌うために書いた曲だ。ロバート・ハザードというロック系のシンガーソングライターが作者である。

ロバート・ハザードは、いかにも遊び人風の風貌だ。最初に彼が書いたとき、「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」はモテ男視点の歌だった。女の子を応援する歌とは180度違うマッチョな歌だったのである。

シンディが歌い、自由に生きたい女の子たちのアンセムに


「この曲、歌ってみたらどうかな?」とシンディに提案したのが、プロデューサーのリック・チャートフだ。原曲はそういう歌だけれど、シンディが歌えば歌詞の意味は180度変わり “女性讃歌” になるはずだと睨んだチャートフは慧眼だった。

チャートフは、ロバート・ハザードのライブにシンディを連れて行き、「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」を生で聴かせた。シンディは歌の途中でチャートフの耳を引っ張り「こんな曲、絶対に歌いたくない!」と言ったそうだ(そりゃそうだ)。だがチャートフは「キミが女性視点で歌えば、この曲は生まれ変わる」とシンディを説得。作者ロバートの了解を取った上で、2人で原曲に細かく手を入れていった。

原曲は、朝まで遊び歩いているモテ男が、両親に「ちょっとは将来のことを考えろ!」「いつからマトモな人生を歩み始めるの?」と諭される内容だ。でも彼は言い返す。「Girls just wanna have fun」と。「でもさぁ、女の子たちが “楽しいコトしましょ” って誘って来るんだからしゃあないじゃん!オレ、モテんだから」ってことだ(すみません、また思いっきり意訳です)。

シンディのほうも、女の子が遊んで帰ってきて、両親に「いつまでそんなことやってんの!」と説教される設定は同じだ。ただし細かい部分が違う。ロバート版のサビの歌詞は――

 girls just wanna have fun Yeah
 girls just wanna have fun

と、単なる繰り返しだが、シンディのほうは最初のGirlsの直後にわざわざ “they”(彼女たちは)を入れているところに注目してほしい。

 oh girls “they” wanna have fun
 oh girls just wanna have fun

この “they” を入れることによって、サビの歌詞は「女の子たちは “みんな” 楽しみたいのよ 人生を楽しんで何がいけないの?」というニュアンスに変化。両親への反論の言葉が、世の若い女性たちに呼びかける言葉に変わり、この曲は自由に生きたい女の子たちのアンセム(讃歌)となった。シンディはこの “they” で女の子たちの代弁者となったのだ。

コミカルなミュージックビデオは連日MTVで放送


昨年(2023年)6月、シンディのデビュー40周年を記念した長編ドキュメンタリー映画『レット・ザ・カナリア・シング』がニューヨークの映画祭で世界初公開された。プレミア上映にはシンディも出席。「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」について、こう語った。

「女性たちにインスピレーションを与え、女性たちに扉を開くようなアンセムを作ろうと、私は一生懸命だった。一つの女性のグループに対してじゃない。全ての少女たちが、自分たちも人生で楽しい体験をすることができるって実感してほしかった」

(2023年6月17日付『BARKS』記事より)

女の子の立場で歌うなら、曲調をもっと明るくしましょ、と提案したのはシンディだった。冗漫な男視点の歌詞をカットして、よりシンプルな構成に。シンディのデビューアルバム『シーズ・ソー・アンユージュアル』に収録された「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」は1983年8月、米国で先行シングルとして発売され大ヒット。コミカルなミュージックビデオ(MV)も制作され、MTVで連日流れたことも大きな要因だった。

シンディがスカートを翻し、踊りながら自宅に朝帰りするシーンから始まるこのMV、冒頭に出て来るママを演じているのは、シンディの母・カトリーヌさん自身だ。低予算ゆえだが、ほかにもシンディの知人・友人が全面協力。彼女の人柄ゆえである。今回、原稿を書くにあたって久々に観たけれど、何度観ても楽しいし、「シンディみたいに自由に生きたい!」と思った若い女性は多かっただろう。

女の子が自分らしく生きたっていいじゃない


発売当時は「ハイ・スクールはダンステリア」という邦題がついていたが(現在はシンディの意向で原題表記に変更)、彼女は1953年6月生まれ。この曲が出たときは女子高生どころか、すでに30歳だった(見えない!)。男社会の中で長く下積み生活を送りながらも、つねに前を見て明るく生きてきたシンディ。そんな彼女が歌ったからこそ「女の子たちはただ、楽しくやりたいのよ」という言葉が余計に響いたのだ。

プリンセス・プリンセス「Diamonds」(1989年)に「♪好きな服を着てるだけ 悪いことしてないよ」という一節があるけれど、言わんとすることはまさに「Girls Just Wanna Have Fun」だ。レベッカのNOKKOが書く詞もそうで、彼女たちが直接影響を受けたのかどうかはわからないが、80年代、“女の子が自分らしく生きたっていいじゃない” という空気を作ったのはマドンナともう1人、シンディ・ローパーだった。

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