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カヤック&SUPフィッシングの機動力を徹底比較 良いとこどりの最新艇も紹介

TSURINEWS

カヤック・SUPの機動力を比較(提供:TSURINEWSライター福永正博)

昨今、カヤックやSUPに乗って釣りをするスタイルが人気急上昇中。おかっぱりでの混雑とは無縁で、釣果も期待できるという理由が大きいでしょう。しかし、始めてはみたいものの、自分にはどちらが向いているのか悩む方も多いようです。そこで今回は、カヤック・SUPのなかでも釣りによく使用される、シットオンタイプのカヤックとインフレータブルのSUPを比較。様々な要素のなかでも、とくに質問されることが多い「機動力」にフォーカスして解説します。

カヤックとSUPの違い

まずは、カヤックやSUP、シットオンとインフレータブルとはなにかについてご紹介しておきます。

カヤックとは?

カヤックの定義を簡単に言えば、両側にブレード(水かき)がついたパドルで漕ぐ小舟のこと。とはいえ、フィッシングカヤックにおいては、両手がフリーになって快適な足漕ぎタイプもメジャーな存在になっています。

シットオンとスタンドアップ(提供:TSURINEWSライター福永正博)

シットオンとは?

内部に浮力を確保した船体の「上に乗る」タイプをシットオンと呼び、海のカヤックフィッシングでは主流です。フタをした空のペットボトルの上に乗っているようなもので、万が一ひっくり返っても沈まない点が大きな特徴。それに対して、船体の中に乗りこむタイプをシットインと呼びます。一般の方がカヤックときいて思い浮かべるのは、こちらの方かもしれませんね。

SUPとは?

SUPとは、スタンドアップパドルボード(Stand Up Paddleboard)の略。本来は文字通りボードの上に立ちあがり、シングルブレードのパドルで漕ぐ乗り物ですが、釣りをする際は座っておこなうことが大半です。空気を入れて膨らませるインフレータブルタイプと、サーフボードのように硬い素材でできたハードボードタイプの2種類があります。ハードボードにも釣りにおけるメリットはありますが、一般的にSUPフィッシングでは、価格が安めで手軽なインフレータブルタイプが多数派といえますね。それでは、機動力について、様々な面から見ていきましょう。

運搬する時の機動力

カヤック・SUPの「機動力」というと、海上でどれだけ機敏に動けるかをすぐに連想しますが、運搬や出艇するまでの陸上における機動力も忘れてはいけません。

カヤック・SUPの運搬(提供:TSURINEWSライター福永正博)

カヤックとSUP、どちらも車に積んでしまいさえすれば機動力抜群です。高速道路やフェリーを利用すれば、日本全国どこへでも遠征できます。たとえクルーザーを所有していても、東京湾から日本海側へ行ったり、沖縄まで行ったりすることは難しいですからね。手軽に運搬できるメリットを生かして遠征できることは、カヤックとSUP共通の大きなメリットといえるでしょう。さらに、インフレータブルタイプのSUPは、空気を抜けばコンパクトに収納できるため、やる気になればバイクや電車、飛行機での釣行さえ可能です。

出艇するまでの機動力

よほど海の近くに住んでいない限り、駐車スペースから出艇場所までカヤックやSUPを運ばなければなりません。陸上でカヤック・SUPを運ぶ際の快適さ(=機動力)に大きく影響するのが「重さ」です。

運搬には「重さ」が重要なファクター(提供:TSURINEWSライター福永正博)

カヤックの出艇は大変?

材質やモデルによってちがいはありますが、軽めのカヤックでも20kg前後、重量級のカヤックでは40kg以上のモデルもあります。

アスファルトで舗装されている平坦な道での移動はそれほどキツくは感じませんが、坂道やスロープ、フカフカの砂浜などでカヤックを引いて歩くときには負担を感じることもあるでしょう。

とはいえ、過度な心配は不要です。小柄で体力も平均レベルの筆者でも、大きなクーラーボックスなどの荷物を積むと合計50kg以上になるカヤックを砂浜で引っぱれています。適切なドーリーを使用し、なるべく平坦なルートを選べばヘトヘトに疲れてしまうほどではありませんよ。

SUPは出艇がラク!

カヤック乗りから見ると、SUPの軽さはとても魅力的です。率直に言って、出艇場所まで移動する際の機動力は、カヤックよりSUPの方が優れているといえます。

たいていのインフレータブルSUPは10kg前後。片手で持てるほど軽いので、出艇場所まで移動するときに、あまり体力を使わずに済みます。また、段差などがあっても担いで乗り越えることができるため、出艇場所の選択肢が増える点は大きなメリット。カヤックであればあきらめてしまう、階段を越えてのエントリーも可能です。ただし、ドーリーを使用せずSUPを担いで運ぶ場合、荷物の量によっては駐車場と出艇場所を往復しなければならないことがあります。空気を入れる時間がかかる点も考慮すると、準備してから出艇するまでの時間に関してはSUPがカヤックより早いとは限りません。

海上での機動力

海上での機動力に関しては、カヤックの優位性が際立ちます。

海上での機動力は?(提供:TSURINEWSライター福永正博)

カヤックとSUPどちらが速い?

カヤックとSUPを乗りくらべたとき、もっともちがいを感じるのがスピードの差です。

SUPもトレーニングした人がボードの上に立ちあがり、全身の筋肉をうまく使って全力で漕げば、カヤックに負けないくらいのスピードを出すことは可能です。しかし、実際に釣りをするときは膝立ちか座ったままで漕ぐことがほとんど。カヤックが早歩きか小走りとすれば、SUPは普通に歩くスピードくらいのイメージです。

SUPフィッシングでもっとスピードを求めたいのであれば、シングルパドルでは推進力に限界があるため、カヤックで使用するダブルブレードに変更するのも有効な手段です。

カヤックとSUP どちらが流されやすい?

風に流されてはもとのポイントに戻り、また流されて……を繰り返していると、体力的にもメンタル的にも疲れてしまい、結果的に機動力の低下につながります。

カヤックやSUPは、広大な海の上では小さな木の葉のような存在。強い風が吹けば、あっという間に何十メートルも流されてしまいます。それをふまえて、あえて比較すればカヤックの方が風が吹いても流されにくいといえます。

SUPは、船体が軽く板状であるため、風の影響を非常に受けやすく、クルクルと向きが変わったり流されたりしやすい傾向。まさに木の葉のイメージです。

それに対して、カヤックはSUPよりも重く、水中に浸かっている部分が多いため、多少は風に対して耐性があります。

どちらにしても、強風下では非常に釣りがしづらく、なにより危険なので避けるようにしましょう。

カヤックとSUP どちらが走波性がある?

風が強かったり、波が高かったりという悪条件下では、波を乗り越えていく能力、すなわち「走波性」が機動力に大きく影響します。

カヤックとSUPの形状をくらべると、あきらかにカヤックの方が船首がとがっていて、波を切り裂いて進みそうな形をしています。

船首の形状(提供:TSURINEWSライター福永正博)

それに対して、SUPの底面はフラットで、波を切り裂くのではなく、波を1つずつ乗り越えて進むイメージ。SUPは、海上での機動力においてカヤックに劣り、荒天時には苦労すると認識しておきましょう。やはり、海が荒れている状況では、走波性に優れているカヤックの方が安心感がありますね。

ちなみに、同じカヤックのなかでも手漕ぎと足漕ぎをくらべると、構造的に足漕ぎカヤックの方が一定して水をつかむことができるので、荒れた海での走波性が高いと考える人が多いようです。たしかに間違いではありませんが、乗り手がパドリングに熟練した人であれば、手漕ぎタイプの方が応用がきく場面もある一方、足漕ぎは後進ができて小回りがきくタイプもあるなど、どちらが優れているか一概には言えません。

くれぐれも足漕ぎカヤックだから安心だとか、自分はパドリングが上手いから大丈夫などと過信して、無理な釣行をすることがないように気をつけてください。

心理的な機動力(安心感)

前項で、「安心感」という言葉を使いましたが、心理的要素によってもどこまで沖に出られるかが変わってきます。

沖に漕ぎ出すには安心感が必要(提供:HOBIE JAPAN)

例えば、いつエンジンが止まるかわからないクルマでは、長距離のドライブに行く気にはなれませんよね。それと同様に、カヤック・SUPにも沖に漕ぎ出すためには安心感が必要です。

SUPフィッシングはトラブルを想定したエリア内で

インフレータブルのSUPにどうしてもつきまとう不安が、パンクやバースト。パンクは、とがった岩にぶつかったり、フックや魚のヒレなどが刺さったりしてSUPに穴があくことで発生します。バーストとは、夏場の温度上昇などによって、SUP内の空気が膨張することで気室が破裂してしまうことです。

サメが掛かることも(提供:TSURINEWSライター福永正博)

SUPフィッシングに慣れていて、空気圧も毎回バッチリ調整しているとしても、魚をバラした瞬間にルアーが飛んできたり、不意にかかったダツやサメが暴れまわったり……それらの可能性をゼロにすることは不可能に近いでしょう。

複数の気室をそなえているSUPであれば、1つ穴が空いたとしても、すぐに沈んでしまうようなことはありませんが、当然ながら機動力は低下します。その状態で沖から漕いで帰ってくる事態を想像すると……あまり遠くまで行かない方が無難だと言えますよね。

SUPで沖まで出たいのであれば、単独釣行は避けて複数で行くか、近くに他のカヤックやSUP、船舶などの助けが呼べるエリアから離れないことが必要です。

カヤックでも油断は禁物

海上での機動力や、パンク・バーストの不安がないことを考慮すると、カヤックの方が多少はSUPより沖に出られるといえます。しかし、人力であることに変わりはないので、自分の体力を過信しないようにしましょう。

また、カヤックが帰着困難になる代表的トラブルは、パドルの流出やドレンプラグ(水抜き穴の栓)の閉め忘れによる浸水、強風によって前進できなくなるケースなどです。

「予備パドルを装備する」、「出艇前には必ずドレンプラグを確認する」、「出艇後もこまめに気象情報をチェックする」などを怠らなければ、回避できることがほとんどです。沖に出るときは、とくに油断しないでしっかりと対策してください。

おすすめのカヤックを紹介

このように、カヤックとSUPどちらにもメリット・デメリットがあります。簡単にまとめると、陸上での移動のしやすさではSUP、海上での航行性能ではカヤックが優れています。

できることなら、どちらも所有して状況に応じて使い分けられればベストですが、実際はそれが難しいことも多いですよね。そこで、カヤックとSUPのメリットを兼備したおすすめのモデルを1艇ご紹介します。

ホビー ミラージュ・アイトレック11

ミラージュ・アイトレック11は、インフレータブルの足漕ぎカヤック。足漕ぎカヤックの機動力と、インフレータブルSUPの手軽さをあわせ持つモデルです。

ミラージュ・アイトレック11(提供:HOBIE JAPAN)

抜群の安定性があるからこそ実現できる座面の高いシートは、おしりが濡れずとても快適。SUPのように立ちあがるときも、ヒザの曲がりが少ないため非常にラクです。

また、パイプフレーム製のシートはロッドホルダーや、ドリンクホルダーを取り付けるベースとしても活躍します。

前後のバンジーコードは、ボルトどめや穴あけができず、後から艤装しづらいインフレータブル艇にはありがたい装備。クーラーボックスやタックル類の固定に役立ちます。

ミラージュ・アイトレック11(提供:HOBIE JAPAN)

重量は、船体のみで12.7kg、シートやミラージュ・ドライブを装備しても20kg弱。重くなりがちな足漕ぎカヤックにおいて、この軽さは特筆ものです。

インフレータブルタイプでコンパクトに収納できるため、住宅事情でカヤックの置き場所確保が難しい方や、車にルーフキャリアが取り付けられない方などには、これ以上ないうってつけのモデルといえるでしょう。

カヤックもSUPも楽しい!

今回はカヤックとSUPの機動力について解説しました。安全性に注意すれば、どちらも非常に開放的で楽しく釣りができて、魚と出会える可能性も上がります。

ミラージュ・アイトレック11での釣り風景
(提供:HOBIE JAPAN)

みなさんも、機動力のちがいをふまえて存分にカヤックフィッシング、SUPフィッシングを楽しんでみてください!

<福永正博/TSURINEWSライター>

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