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【インタビュー】第2回日本城郭協会大賞受賞:46年にわたる地道な活動「久野城址保存会」(静岡県袋井市)

城びと

【インタビュー】第2回日本城郭協会大賞受賞:46年にわたる地道な活動「久野城址保存会」(静岡県袋井市)

城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する「日本城郭協会大賞」。第2回日本城郭協会大賞に選定された「久野城址保存会」の活動と、受賞に際して城びと編集部で取材したインタビューをご紹介します!お話くださったのは、同保存会の高橋正則さん、山田宗男さん、白澤崇さんです。

<久野城址保存会の活動とは?>

昭和52年、宅地造成計画が持ち上がった城址を残すべく、約200人の地元有志で結成。久野城は、昭和54年に袋井市指定史跡認定。以降は、城址を地域のシンボルとして、地域活動や地域づくりの核と位置づけ活動している。地元の北小学校 6 年生を対象にした久野城教室を毎年開催したり、年に数度の広大な城址の草刈りを行ったりなど、長きにわたる地道な取り組みが評価され、第2回日本城郭協会大賞受賞。

ー今回は、長年にわたる活動が評価されての「日本城郭協会大賞」の受賞となりました。「久野城址保存会」の活動のきっかけや、活動の経緯について教えてください。

南西から見た久野城

 昭和52年に久野城址において宅地造成計画が持ち上がりました。でもここは地元住民の土地で、堀を田んぼにしてお茶づくりをしていたんですよ。すでに活用していて、住民にとって「やぶ」と呼べば通じるくらい愛着があった。生活の一つの場だったんです。そんな土地を壊してしまっていいのか!?と住民が立ち上がりました。

 その中には歴史や教育の先生がいらっしゃって、先生方が久野城址の伝説などを教えてくださったのです。学んでいくうちに、久野城址の歴史的価値に気づいていき、地元の住民を中心に久野城址保存会を発足させ、「地域の宝を地域の力で守る」を合言葉に、袋井市指定史跡化を目指して取り組み始めました。昭和54年に袋井市指定史跡に認められてから、40年以上にわたって文化財の保存と活用に取り組んでいます。

学習会の様子

ー活動当初から200人という多くの賛同者が得られた理由は何だとお考えでしょうか?

 地域全体のまとまりが強かったことは大きいですね。久野城址を「地域の宝」と定め、「自分たちがやらなければ」という気持ちを多くの人と共有しました。

ー活動期間はなんと50年近く。四半世紀ですね。長く活動を続けられたポイントはどこにありますか?

 「文化財の保存と活用」と言いながらも、活動が長く続いていると毎年同じような繰り返しとなり、マンネリ化してきます。また、会員自体も高齢化してくるため、保存会発足当時の自分たちがやらなければという気持ちは保存会全体として薄れてきてしまいました。

 それが変わるきっかけになったのが平成30年に行った保存会創立40周年の催しです。大きなイベントというものは打ち上げ花火みたいなもので、その時だけ盛り上がり、後は以前と同じような活動に戻ってしまいがちですよね。でも、40周年記念イベントで行われた専門家の先生方による講演会のお話で久野城址の魅力を再確認し、さらに保存と活用の取り組み方、多くの山城ファンを引き付ける方策などを教えていただきました。「せっかくだから実践しよう!」と取り組んだのです。

ー保存会の高齢化やマンネリ化が課題ということは、ほかの多くの保存会でも耳にします。具体的にはどのような方策をとられましたか?

 「城址の草刈りを多くして訪れる人が歩きやすいようにする」「御城印で県内外のファンを掘り起こす」「のぼり旗で山城の雰囲気を表す」「地元の事業所にもPRをして協力関係を作る」などをしました。

草刈りの様子

のぼり旗の設置

ー「山城の雰囲気」があると、お城に詳しくない人が来ても楽しめますね! さまざまな方策の手応えはありましたか?

 県内外から多くの人が久野城址を訪れるようになりました。人が来ると自分たちも動かなければと、会員の気持ちも以前のような「地域の宝を地域で守る」という雰囲気が高まり、前向きに取り組むようになっています。会員同士、住民同士、来城者と住民、人のつながりが重要です。

イベントの様子

ー「久野城のここがおすすめ!ここを見てほしい!」というポイントを教えてください。

 4つあります。

①ソメイヨシノや袋井桜など、城址一帯が桜で満開となる春は一番のおすすめです。

大手から見た久野城。さくらがきれい!

②本丸から眺める南側の景色は、堀(調整池)とともに東海道全体を一望でき、戦国時代の要衝だったことを感じ取ることができます。

③竪堀や曲輪など、今もその形を残しています。

④平山城のため、周囲から眺めると山城としての形を見ることができます。

南西から見た久野城址

ー今後の目標を教えてください。

 保存会としての活動を今後、50年、60年と続けられるように、世代交代を少しずつ進めることですね。そのためには、多くの人に久野城址を知ってもらえるように、良さをアピールすること。そして、小学6年生への「久野城教室」だけでなく、中学生にも興味を持ってもらえるような活動を計画することをまずはしていきたいと思っています。「私のふるさとには、こういうものがあるんだな」と知って誇りに思ってほしい。

小学生向け「久野城教室」

コスモスの種まきの様子

ー城びと読者へのメッセージをお願いします。

 久野城址は小さな山城で有名でもありませんが、戦国時代から江戸時代初期の平山城の姿をよくとどめていますので、初心者のお城ファンにとって散策するにはちょうど良いお城です。ぜひ、足を運んでいただき、その際は、城址を「地域の宝」として活動している創立46年経過している保存会会員の努力も、知っていただけると嬉しいです。

ーありがとうございました!

(お話を伺って)

「生活の場を守る」という一念から立ち上がった住民の方々が、その土地の歴史を知っていき、改めて地元のお城に価値を見出し、誇りをもって次代につなげていくという流れが素晴らしいと思いました。人のつながりや縁を大切に、「知って」「動く」ことをいとわない地元のみなさまに支えられて、久野城址はこれからも「地域の宝」として受け継がれていくのだなと感じました。

日本城郭協会大賞とは

公益財団法人移行10周年を記念し、日本城郭協会が2022年に開始した城郭文化の振興に貢献した団体及び個人を顕彰する事業です。小和田哲男理事長を審査員長とする審査会にて「日本城郭協会大賞」を選定します。ほかにも、城郭城址の維持・整備を自主的に行うボランティア団体等を賞する「日本城郭文化振興賞」、城郭文化の普及に寄与した個人・団体を賞する「日本城郭文化特別賞」、さらに2023年から城郭管理者として特筆すべき成果を挙げた自治体等を「調査・整備・活用賞」として別枠で顕彰します。

執筆/城びと編集部 取材協力・画像提供/久野城址保存会

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