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よかれと思った「厚着」が裏目に…秋冬に多発する赤ちゃんの「肌トラブル」と意外な原因

コクリコ

よかれと思った「厚着」が裏目に…秋冬に多発する赤ちゃんの「肌トラブル」と意外な原因

猛暑後の秋冬にかけて増加する、乳児の肌トラブルについて皮膚科医・野崎誠先生が解説。夏の猛暑が影響する秋の虫刺されや、乾燥による肌トラブル、冬のあせもなどについて。

【▶画像】赤ちゃんと子どものあざ 「すぐ治療したほうがいいの?」<レーザー専門医が解説>

長く続いた今夏(2025年)の猛暑がウソだったかのように、すっかりすごしやすい気温になってきました。しかし安心することなかれ、秋から冬の乾燥シーズンに入ると、赤ちゃんの肌には思わぬトラブルが起こりやすくなります。今回は、皮膚科医の野崎誠先生に、秋から冬にかけて起こりやすい乳児の肌トラブルと、家庭での適切なケアについて伺いました。

猛暑後に増加する「虫刺され」と「手荒れ」

──今夏(2025年)は強烈な猛暑でしたが、その後の秋冬は「乳児の肌トラブル」が起きやすいと聞いたのですが?

野崎誠先生(以下、野崎先生):夏の猛暑の影響で、秋になってから、乳児の虫刺されによる受診が増えています。猛暑が長く続くと蚊の活動が少なく、気温が落ち着く秋になってから活動が盛んになり、刺される機会が増える傾向があります。

乳児の虫刺されは、大人とは反応の仕方が異なります。刺された直後には、腫れやかゆみを感じないことが多く、半日ほど経ってから症状が出る場合が多いです。また、症状が長引きやすく、1週間ほど続くこともあります。これは免疫の働きによるもので、初めて蚊に刺された赤ちゃんや、今まで刺される機会が少なかった赤ちゃんほど、遅れて強く反応するためです。

秋になり、幼児の手荒れも増加しています。夏は外遊びを控えていたぶん、涼しくなって公園や砂場で遊ぶ機会が増えたのが原因です。これには、砂遊びによる摩擦、また砂の中に含まれるダニや金属成分に対するアレルギー反応が関係している場合もあります。

いくつかの要因が複合的にかかわることがあるため、明確な原因を特定することはむずかしいです。症状が気になる場合は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

乾燥で増える乳児の肌トラブルとおうちケアの2大ポイント

──乾燥しがちな秋冬に増える乳児の肌トラブルとは? また、月齢による症状の違いはあるのでしょうか。

野崎先生:一般的に、空気が乾燥するこの時期は、乾燥性湿疹、乳児湿疹、アトピー性皮膚炎が増えます。秋から冬にかけて新たに発症したり、症状が悪化したりするケースも多いです。

また、なかでもアトピー性皮膚炎は、月齢によって、症状の出やすい部位に傾向があります。はじめに症状が出やすいのは生後3~6ヵ月の乳児ですが、生後6ヵ月を過ぎると湿疹が下半身にも広がってくるようになります。月齢に応じて赤ちゃんの肌の状態を注意深く観察し、変化に気づいたら早めにケアすることが大切です。

──皮膚の乾燥を防ぐために、家庭でできる対策はありますか?

野崎先生:大きく2つ、注意してほしいポイントがあります。

〈アドバイス1:エアコン使用時は加湿もおこなう〉

乾燥対策で重要なのは「部屋の湿度」です。理想は湿度50%以上。石油ファンヒーターは灯油が燃焼する際に二酸化炭素と水分が発生するため比較的乾燥しにくいのですが、エアコンは室内の空気を乾燥させ、肌の水分も奪いやすくなります。そのため、エアコンを使用する際は、かならず加湿器も併用してください。

〈アドバイス2:保湿剤は“天気”によって使い分ける〉

保湿剤は1種類だけでなく、湿度や天候に応じて使い分けるのがおすすめです。ローションは塗りやすく伸ばしやすい反面、保湿力は控えめ。一方、クリームはやや塗りにくいこともありますが、保湿力が高く乾燥する日には最適です。湿気の多い秋雨の日はローションで十分ですが、乾燥する日はクリームを使うなど、天候や湿度に合わせて使い分けをするとよいでしょう。

また、ワセリン(プロペト)は皮膚に油膜を作り水分を閉じ込めますが、肌本来のうるおい成分を補うことはできません。より効果を高めるには、「セラミド」や「ヘパリン類似物質」が入っているものなど、肌の保湿成分を補えるものを選ぶと安心です。

──SNSでは「おすすめの石けん」「保湿剤ランキング」なども話題ですが……。

野崎先生:どんな石けんを使うかはあまり重要ではなく、「よく洗って、その日に合わせた保湿をすること」が大切です。SNSでは広告目的の商品情報も多くあり、“売るため”の投稿や口コミも増えています。赤ちゃんの皮膚トラブルで迷ったときは、ぜひ病院や薬局で専門家に相談してみてください。

また、皮膚薬については、ステロイドに対して不安を持つ方もいらっしゃいますが、最近はステロイドが入っておらず副作用の少ない次世代型の抗炎症外用薬も増えています。「モイゼルト」や「コレクチム」などがそれです。その結果、私のクリニックでも2025年の今はステロイド薬の使用が10年前のおよそ10分の1に減っています。

冬でも多い「あせも」は重ね着と室温管理のミスが原因

──寒い季節でも赤ちゃんにあせもはできるのでしょうか?

野崎先生:意外かもしれませんが、冬のあせもは非常に多いです。原因は、洋服の重ね着や、室温管理ミスです。とくに就寝時のスリーパー、日中の重ね着によって、体温が高くなって汗がこもり、あせもの症状が出やすくなります。

──あせも予防のために、おうちでできる対策はありますか?

野崎先生:まず、洋服は「大人より1枚少なめ」を目安にしてください。また、エアコンの設定温度は25度前後が目安です。就寝時のスリーパーも基本的に必要ありません。赤ちゃんには、自分で蹴とばせるくらいのかけ布団を用意し、暑ければ調節できるようにしてあげましょう。

さらに、寒い季節でも「朝に一度シャワーを浴びる習慣」がおすすめです。夜の入浴だけでは、寝ている間にかいた汗や皮脂が残ったままになることがあります。朝にシャワーで汚れを落とし、その後しっかり保湿すれば、一日を通して赤ちゃんの肌を守ることができます。

──最後に、乳児の肌を心配する保護者たちへのメッセージをお願いします。

野崎先生:何事も「やりすぎ」は禁物です。重ね着、また保湿剤や石けんも“多ければいい”わけではありません。大切なのは、赤ちゃんの皮膚の仕組みを理解し、季節や環境に合わせて、“ちょうどいいケア”を続けることです。

また親御さんも、赤ちゃんの肌はこういうもの、という基本を知ることが重要です。赤ちゃんの肌の様子をよく見守り、適切にケアしてあげれば、季節の変化にも負けず、赤ちゃんの肌をすこやかに保つことができます。

もし気になることがあれば、迷わず専門医に相談してみてください。

───◆─────◆───


猛暑の後に増える虫刺されや、秋冬にかけての乾燥による肌トラブル、あせもなど、これからのシーズンに気を付けるべきことが数多くあることがわかりました。

つい心配で重ね着や過剰な保湿をしてしまいがちですが、赤ちゃんにとっての“ちょうどいいケア”を意識して、これからのシーズンをすこやかに乗り越えていきましょう。

取材・文/牧野 未衣菜

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