『MIA MIA』は東長崎を代表する「街の交流場」。垣根なく絆が生まれ続ける
祭りか? イベントか? 東長崎駅北口を出てすぐ、多くの人で大にぎわいしている場所に行ってみたら一軒の店だった。その名は『MIA MIA(マイアマイア)』。どうやらカフェらしいが……。
店主・ヴォーンさんにお話を聞きました!
気軽に過ごせる、絆でつながる場所
「住んでいる街にあいさつできる顔見知りがいるのはとっても大切なこと。災害が起きた時もそうだけど、とりとめのない話をしたい日もあるじゃない。何かあったら、もちろん何もなくても自然とみんなが集まる場所が街には必要で、それがカフェなのよ」
『MIA MIA』店主のヴォーンさんが、妻の理恵さんと一緒に東長崎でカフェを始めたのは2020年春のこと。そう、新型コロナウイルス感染症で新しい生活様式が提唱された時期。非常事態で、さらには縁もゆかりもない街でのスタートだった。不安はありながらも、いざ開店すると「街の交流場」になっていたという。
店作りにおいて、ふたりが重要視しているのはずっと変わらず会話が生まれる居場所であること。いつでも誰とでも肩肘張らずに話せる、ふらっと来て帰れるカフェであるために、店内外問わずボーダレスでオープンに。気づけばスタッフさんとも隣り合わせになった初対面の人とも心地良い距離感で自然とつながり、いつのまにか顔見知り。訪れるたびに友人が、信頼できるかけがえのない人が増えていく。時代の流れとともに埋もれてしまった、大切にすべき“交流”に光が当たり、誰もがささやかなひと時をいつくしんでいる。
「この場所にひと目惚(ぼ)れをして物件を決めたけど、自分たちの店だけでなく街全体をもっとよくしたい。ずっと思っていることよ」
東長崎は老舗、新店を問わず小商いが元気な街だ。人と人だけでなく、人と街、人と店とのつながりも深い。
「ほかの街よりも、各々の店先で立ち話している人たちが多い。街全体に活気がある感じがしてすごくいいよね」
『MIA MIA』は、毎週水曜日の朝6時55分から店の前でラジオ体操を行っている。営業中だけでなく、営業前から愛おしい日常の風景として街ともつながっていた。
散歩中の人に「ハーイ!」と声をかけては世間話に花を咲かせたり、近所の人を見かけては左右に大きく手を振ったり、『MIA MIA』で談笑していた近所の店の店主を宅急便のドライバーさんが「荷物の受け取りを……」と呼び戻しにきたり。
撮影時の「ウェルカ〜ム」の歓迎ムードにも痺(しび)れ上がった。久方ぶりの地元で家族や友人に会うときのような、あの得も言われぬあったかい空気感。地域住民に限らず遠方からの来客だったとしても、都内随一の最高においしいコーヒーとスイーツに添えられるのはいつだってとびきりの愛だ。そして、人も街も店も垣根なく絆が生まれ続けている。
MIA MIA(マイア マイア)
住所:東京都豊島区長崎4-10-1 1F/営業時間:8:00~22:00(水は6:55~ラジオ体操)/定休日:月・火/アクセス:西武鉄道池袋線東長崎駅から徒歩1分
取材・文=新居鮎美 撮影=逢坂 聡
『散歩の達人』2025年11月号より