スイスでサステナブルな旅をしよう! 秋編④ アルプス最大の温泉リゾート・ロイカーバートでスイスの温泉デビュー
スイスにも温泉があるって知っていますか?日本人にはあまりなじみがないけれど、ヨーロッパではよく知られ、古くはローマ時代から発展してきた温泉も。それもそのはず、スイスは国土のほとんどが山脈なので、温泉や鉱泉に恵まれているのです。ヴァレー州にある名湯は、圧倒的な湯量を誇るロイカーバート。アルプス最大の温泉リゾートで、ドキドキの湯浴みとハイキングを!
ロイカーバートって?
ロイク駅からバスでつづら折りの山道を上ること約30分、ヴァレー州とベルン州を結ぶゲンミ峠の麓にある標高1411mの村。
ローマ時代に源泉が発見され、通商の道・ゲンミ峠を行き交う人々を癒やしてきた。ゲーテやコナン・ドイル、パブロ・ピカソなどの著名人も好んで訪れたとか。
毎日約390万ℓ、51度の湯がいまも湧き、小さな村の20カ所以上のスパリゾートに送られている。泉質は硫酸塩泉。リウマチや皮膚病に効果があるといい、においはほとんどない。
「Bad(バート)」はドイツ語でお風呂のこと。フランス語では「Bains(バーン)」と言う。お風呂とはいっても、スイスでは水着を着て入るのが一般的だ。源泉温度は高いものの、お風呂の湯温は36度前後とかなり低いので、「温泉」というよりも「温水プール」という印象が強いかも。
そんな温泉を楽しむには、ホテルのプライベートスパを利用するか、公共の温泉施設へ行くか。じっくり堪能するならば、スパを併設したホテルに泊まるのが◎。
ホテルでゆっくり名湯を堪能
今回泊まったのは『ホテル・ル・ブリストル』。トレントへのロープウェイ乗り場やスキー場、ハイキングエリアに近い、村の中心に立つスパホテル。
スパセンターには、地下2000mの自家源泉から湧き出る温泉を使った屋内プールと屋外プール、そしてサウナがある。
部屋で水着に着替え、バスローブを羽織ってスパセンターへ。スイスの温泉は初体験。水着で入る温泉ってどんなかんじなのか。ロッカーに荷物を入れていざ!
シャワーはあるが、日本の温泉のような洗い場はない。ドキドキしながらリクライニングチェアを確保して、さっそく屋外プールに飛び出す。
つま先立ちをしないと顔が濡れてしまうくらいの水深で、かなりぬるめ。でも、ぬるいお湯は長湯できるのでちょうどいい。端にジャグジーが3つ並んでいるので、軽く泳ぎながらそこへ向かう。
手前はあいているが、横の2つにはずっと人が入っている。ジャグジーに入ると、あれ? 水深がプールと変わらない。そしてボコボコが思いのほか激しいので、必死にバーにつかまっていないと溺れそう(笑)。そんなに悠然と入っていられる?
隣のジャグジーがあいたので移動すると、底が高くなっていて、座れるイスもある。あの余裕顔はそういうことだったのか~。
自然に囲まれ、アルプスの山々を眺めながらのひととき。あぁ、なんて幸せ。
『ホテル・ル・ブリストル』
●ロイカーバートバスターミナルから徒歩6分
https://www.myswitzerland.com/ja/accommodations/le-bristol-leukerbad/
公共の温泉施設にも行きたい
ロイカーバートには『ロイカーバート・テルメ』『ヴァリサー・アルペンテルム&スパ』といった公共温泉施設がある。湯温は低めだろうなと思っていたら、「熱いお風呂、あるよ」と地元の人。教えてもらったのが『テルメ51°』。
ここはホテルのスパだが、別棟になっていて外来入浴ができる。3つめの公共温泉施設だ。42度あるという熱いお風呂に期待が膨らむ。
更衣室で水着に着替えて屋外へ。階段の付いた円形のプールがにぎわっている。そのプールにしばらく浸かっていると、手前に木製の円形風呂が見えた。湯気が出ている。もしかしてこれが……?
いそいそと移動して、体をゆっくり沈める。はぁ~、やっぱりこれだよね。待っていました!
ヨーロッパの人たちは熱いお風呂は好まないらしい。38度の屋外プールにはひっきりなしに人がやってくるのに、42度のほうは独り占め。湯口のそばにある危険マークの張り紙が、なんだかほほえましかった。
36度の屋内プールのほか、ヨーロッパハイマツ材を使ったサウナ、アルプスのハーブや干し草が香るサウナなどもあり、たっぷり満喫してホテルに戻る。
『テルメ51°』
●ロイカーバート バスターミナルから徒歩2分
https://www.myswitzerland.com/ja/accommodations/therme-51/
絶景のゲンミ峠と麓のハイキング
ロイカーバートに来たなら、ゲンミ峠には行っておきたい。ホテルから20分ほど歩いてロープウェイ乗り場へ。そこから約6分の空中散歩に出発。
ゲンミ峠駅にあるレストランで少し休憩を。温かいものがいいなとメニューを見ていたら、「ゲンミスープ」なるものが!
パンを器代わりにして中をくりぬき、スープを入れたものだった。クリアなスープには野菜がどっさりで、下にはチーズも入っている。食べているうちに内側のパンがふやけてきて、お麩状態に。パンは焼いてあるので、外はカリッと中はもっちり。ふぅ、あったまる~。
周りを少し散策していると、雲がぐんぐん晴れてきて絶景が目の前に! 下にはロイカーバートの村、上にはアルプスがバーンと!! スイスにいることを実感させてくれる。天気がよければ、もちろんマッターホルンも見える。
時間があれば、ダウベンゼーに下りて湖畔を散策するのもおすすめ。
ロープウェイで山麓駅に戻り、マジングゼーまでハイキングの予定だったが、時間の関係でショートコースにルートを変更。
状況によってルートを変られるのも、スイスのいいところ。ハイキングコースが充実しているからこそ、できること。
ルートを変えたことで、途中、ステキな景色と出会えた。アルプスと西陽の当たったレルヒ(西洋カラマツ)のコントラストが美しすぎる! サフランが群生しているところもあり、シカが3頭駆け抜けていった。
●テルマルクヴェレン・ステーク(源泉への道):https://www.myswitzerland.com/ja/experiences/dalaschlucht/
かわいい村に寄り道
ロイカーバートの前後に立ち寄りたい、小さな村がある。山の中にひょっこり現れるアルビーネンだ。
この村にはヴァレー州伝統の山小屋や納屋が立ち並び、「スイスの最も美しい村」に選ばれている。スイスにはこんな村がいっぱいあるので、小さなかわいい村を訪ねる旅もしてみたい。
●アルビーネンのテーマルート:https://www.myswitzerland.com/ja/experiences/egguweg-albinen/
お昼ご飯は、B&Bもやっているレストラン『Wirtshaus Godswärgjistubu(ヴィルトハウス・ゴッズヴェルクジシュトゥーブ)』で。マダムお任せのコースがスタート。
自家菜園で育てたニンジンやタマネギを使った、しっかり素材の味がする野菜スープ、そしてコールラビが効いたサラダが出てきた。メインはグーラッシュに手打ちのパスタ。デザートは、ツヴェチゲ(西洋スモモ)のケーキをコーヒーと一緒に。
すべて旬のもので、このあたりで採れたものを使った料理。そんな地産地消の料理を味わうこともサステナブルなのだ。
宿泊できる部屋が気になり、見せてもらう。建物は古いが、きれいにリノベーションされていて、むかしからのものと最新のものが絶妙にマッチ。ここに泊まっていきたいなあ。
『Wirtshaus Godswärgjistubu』
●ロイク駅からバス26分のAlbinen Dorf下車、徒歩3分
https://www.myswitzerland.com/ja/experiences/food-wine/restaurant/wirtshaus-godswaergjistubu/
【Information】日本からスイスへは
成田~チューリヒ間を約14時間で結ぶ、スイス インターナショナル エアラインズの直行便が週5便運航している。
[気候]春・秋は8~15度、夏は18~28度、冬は-2~7度。山岳地帯と麓の村では温度差があり、日中と朝晩の気温差も激しいので、レイヤード(重ね着)が基本。着脱しやすい服装を準備したい
[時差]日本の-8時間(夏は-7時間)
[言語]ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語(地域により異なる)。ホテルやお店では英語が通じる
[スイスの情報]https://www.myswitzerland.com/ja/
取材・文・撮影=『旅の手帖』編集部 協力=スイス政府観光局、スイス インターナショナル エアラインズ、スイストラベルシステム