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村上の大工が手作りしている「ゑびす屋」の木工製品。

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村上の大工が手作りしている「ゑびす屋」の木工製品。

城下町の村上市には「町屋(まちや)」と呼ばれる古民家が軒を並べています。そんな古民家の修復を手掛けている大工のひとりが「ゑびす屋」の店主・石栗さんです。今回は数々の木工製品が並ぶ「ゑびす屋」にお邪魔して、石栗さんからお店のことや大工仕事ついてのお話を聞いてきました。

ゑびす屋

石栗 幸一 Koichi Ishiguri

1986年村上市生まれ。地元の工務店で修業しながら、東京の職業訓練校に通って技術を学ぶ。2018年に体調を崩した父に代わり大工業と「ゑびす屋」を継ぐ。ものづくりが好きで、ガンプラもよく作っている。

木目の美しさや手触りの良さが魅力の木工製品。

——ずいぶん色々な木工製品や竹細工が並んでいますね。これは全部、石栗さんが作っているんですか?

石栗さん:木工製品は俺が作っているね。竹細工は地元のおじいちゃんに作ってもらっていたんだけど、その人が最近亡くなっちゃったんだよ。

——そうなんですね……。こういう工芸品って、作れる人がどんどん減っているから貴重ですよね。「ゑびす屋」さんは、いつ頃から営業しているんですか?

石栗さん:じいちゃんの代から、ずっと続けてきたんだよね。今は俺が製造を担当していて、接客はほとんど母親がやってくれてるんだよ。平日なんてほとんどお客さんが来ないんだけど、開けておかないと近所の人が心配するから仕方なく開けてるんだよね(笑)

——「仕方なく」って(笑)。ちなみにどんな製品がよく売れているんでしょうか?

石栗さん:いちばん売れているのは竹とんぼだね。

——プロペラみたいになっていて、空に飛ばして遊ぶ玩具ですね。

石栗さん:うちの竹とんぼはそういう玩具じゃなくって、とんぼの形をしたやじろべえみたいなインテリア小物なんだよね。昨年他界した父親が考案したものなんだけど、お土産として観光のお客さんによく売れてるね。あと木製のちりとりもよく売れてるよ。父親がずっと作ってきたものを、俺なりに曲線の多いフォルムにアレンジしたんだよ。

——そんなふうに、石栗さんがアレンジした製品は多いんですか?

石栗さん:ただ実用的なだけじゃなく、見た目も装飾的でお洒落じゃないと売れないと思うんだよね。だから木材から切り出して作る靴べらも、持ち手の先をくるっと巻いた形にして、漆を塗って仕上げているんだよ。あれは作るのが大変で苦労したね。

——色々なものを作っていますけど、木工製品にはどんな魅力があると思いますか?

石栗さん:手作りだから値段が高くなっちゃうんだけど、同じものはふたつとないんだよね。木目の美しさや手触りの良さがいちばんの魅力だと思うよ。あと壊れても直せば何代にもわたって使い続けることができる丈夫さも魅力だね。

元の良さを生かしながら古民家を直す。

——石栗さんの本業は大工さんなんですよね。

石栗さん:そう。うちの家は代々大工をやっていて、親戚にも大工が多いの(笑)。だから他の選択肢を考えることもなく、大工の道に進んだんだよね。高校も建築科だったし、働きながら東京の職業訓練校にも3年通ったね。

——それは大変でしたね。

石栗さん:通学は月に数回だけどね。村上市内にある工務店で大工修業をしていたんだけど、弟子扱いだったから給料も小遣い程度だったんさ。東京に通学する交通費で消えちゃったね。

——大工修業では、どんなことを教わったんでしょうか?

石栗さん:大工仕事はもちろん、大工道具の直し方まですべて教わったよ。最初はできないことでも、やっているうちにどんどんできるようになって、できることが増えていくと仕事も面白くなっていったね。

——いつ頃まで工務店での修業をしていたんでしょうか?

石栗さん:2018年に父が体調を崩したので、工務店を退職して家業を継いだんだよ。それまでは住宅の新築工事が多かったんだけど、まるっきり正反対の古民家や土蔵の修復工事が多くなったね(笑)

——なんだか難しそうですね。

石栗さん:できる大工が少ない仕事だし、父親がなんでもかんでも引き受けていたからね(笑)。古いものを扱うわけだから、壊さないように気をつけて作業しているね。じっくり考えながら進める仕事だから、面白いっちゃ面白いけどね。

——ちなみに、どんなことを考えながら修復するんですか?

石栗さん:古い建物の雰囲気に合わせて、わざと古い感じを出すように修復してるね。柱に塗る塗料にも、木の灰を混ぜて趣を出したりして。そういう仕事が好きだから、ハウスメーカーの仕事は向かないんだよね(笑)

——自分で工夫して作ることが好きなんですね。他にも印象に残っている仕事はありますか?

石栗さん:最近の仕事だけど、村上大祭で使う「おしゃぎり」って呼ばれる山車(だし)の修繕もやったね。土台や車輪を新しく作ったんだけど、使える部分はできるだけ生かしながら、昔の材料を使ったり元の製法に合わせて直すのは大変だったな。大工用語で「癖を拾う」っていうんだけどさ。

——文化財だから、できるだけ元のままの状態を残さなければならないんですね。

石栗さん:「おしゃぎり」って50年に1度くらいしか修繕しないものだから、関われたのは貴重な体験だったと思うよ。次に修理するときは生きてるかどうかわかんないし(笑)

——城下町だった村上だからこそ、古い建造物が数多く残っているんでしょうね。そうした地域で石栗さんの技術はとっても貴重だと思います。最後にこれからやってみたいことがあったら教えてください。

石栗さん:「ゑびす堂」の木工製品はほとんどが父の考えたものだから、それを自分なりに進化させていこうかなと思ってるんだよね。例えば4本脚の椅子を3本脚にアレンジしたりね。

ゑびす屋

村上市肴町1-8

0254-53-3385

8:00-18:00

無休

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