切り開け!昇格への道【#2】FW高木大輔 “FC琉球得点王の覚悟”
サッカーJ3リーグ2025シーズンは後半戦に突入している。J2返り咲きを掲げスタートしたFC琉球の新シーズンだったが、前半戦終了時点で5勝4分10敗・20チーム中17位と苦しい戦いを強いられた。ただ昇格の可能性が完全に潰えた訳ではない。可能性がある限り勝利と昇格という目標だけを追い求めると選手、監督は力を込める。 「切り開け!昇格への道」と題し後半戦にかける想いをシリーズでお伝えする。
点を獲る感覚が戻ってきている
今シーズン美しいゴールを連発している男がいる。 FC琉球の背番号89・高木大輔(29)だ。元プロ野球選手 高木豊さんを父に持つ。プロデビューは東京ヴェルディ。レノファ山口FCやガンバ大阪と渡り歩き、去年FC琉球に加入したフォワードだ。 昨シーズンは24試合1得点という成績だったが、今シーズンはすでに6得点。(22節終了時点) チームトップを走っていて、中でもワンタッチのボレーシュートなど美しいゴールが目立っている。 「今シーズンはワンタッチのゴールが圧倒的に多いですね。今はセンターフォワードをやりながら点を獲る感覚、点を獲れる場所に入っていけてる感覚が戻ってきているので、今が楽しいですね」 去年は絶対エース白井陽斗(現・コンサドーレ札幌)や庵原篤人と組み、周りを活かすプレーが求められていたが、チームもガラッと変わり役割が変化したことも得点量産体制構築の要因の一つだ。 「去年はどうやってみんなに背後をとらせようかなという考えが中心でした。今は自分が一番ゴールに近いところにいる。自分を活かしてもらえる立ち位置にいられるというのが去年との違いですね」
両ワイドで躍動する若手選手の成長も頼もしいと語る。 「左サイドの永井颯太は自分で仕掛けて、1枚2枚剥がしたりとにかくドリブルができる選手なので、どうやっていい形の1対1を作れるか。右サイドは荒木遼太の運動量とスピードですね。得点はとっているけどアシストが少ないことを彼自身悩んでいた部分があったんですが、19節栃木シティ戦ですごくいいクロスをあげてアシストしてくれて。21節福島戦でも3点中2点は彼のアシストです。彼の成長はとても大きいと思います。点を獲ってアシストもして、ただ決して守備をサボっているわけでもないので」
浅川隼人の加入に“火がついた”
インタビュー取材を行ったのが7月23日。松本山雅FCから浅川隼人の加入が発表された翌日だ。
「チームと監督が欲したポジションがフォワードで、その中で隼人がマッチしたんだと思います。ただ僕自身はポジションがかぶるので、正直その話を聞いたときは逆に火がついたというか 。負けてられないなと思いましたね。現状では自分が多くの試合で使ってもらっていて、そこに隼人が来たということは、監督も期待している部分は大きいと思います。仲間なので 一緒に点を取って成長していきたいという想いもありながら、ポジションを譲りたくないという気持ちのほうが強いので。この移籍が、隼人も点を獲るし自分もさらに点を獲るというようなプラスの方向に向くような競争をしていけたらと思いますね」 ライバルの加入に闘志を燃やしながらもやはり同級生の加入は嬉しいと笑顔も見せる。 「最初は隼人と同級生ということすら知らなかったですよ(笑)。昨日来て、色々喋って、髪切るところも紹介しましたね(笑)。」
高木も浅川も、そしてキャプテンの佐藤祐太も同級生。今年節目の30歳を迎える。 「正直30歳という年齢は難しい年でもあるんです。僕も去年経験しましたが、チームを去ると、なかなか需要がない選手が多くて。ベテランでもないし若くもないし、なかなか難しい年代なんですよね。同級生が 3人いるというのは頼もしいし嬉しいですね。ロッカーも隣になったので(笑)。隼人は一緒にシュート練習していてもうまいなと思うので、負けないように頑張りながらも早く隼人の良さをチームで活かせるようにしていきたいですね」
「勝つと上を向ける」得点王の覚悟
取材から3日後。中断前最後の試合となるAC長野パルセイロとのホーム戦。 試合前は長野が15位・琉球が16位、勝ち点差はわずかに1点。勝てば順位を上げ、敗れると再び降格順位を意識せざるをえないという重要な一戦。 ミスター琉球・富所が先制点を奪った13分後。富所のパスを高木がまたもワンタッチで流し込んだ。高木はこの試合で2試合連続ゴールをマークしチームを勝利に導いた。
「ホームでのゴールが少なかったので、自分のゴールでホーム戦の勝利に貢献できたことが何より嬉しいです。どんな事があっても僕は試合に出続けたいと思っているので、良い競争をして、誰が出ても同じサッカーができて負けないチームが理想だと思うので。その中心に自分が居られるように頑張っていきたいと思います」
「前半戦終了時よりも昇格プレーオフの位置が見えてきたと思います。勝つと上を向ける、負ければ下を見なくてはいけない順位です。今チームの強さが少しずつ出てきている中でこれをさらに上積みしていくことが大事です。昇格は絶対に諦めたく無いですし、諦めていません」
昇格を諦めない
3季プレーした山口を去年離れ、次のチームがなかなか決まらなかった中で、急遽、練習参加の声をかけたのがFC琉球だった。昨季琉球移籍後初ゴールをマークした試合では、試合後想いが溢れ涙を流す姿があった。
試合後のインタビューでこう語った。 「開幕前なかなかチームが決まらない状況でサッカーを辞めようと決断をしていた時にFC琉球から練習参加のオファーを貰って、死に物狂いで飛び込みました。やっとチームが苦しいときに自分がチームの力になれたと思います」
1年半前、サッカーを辞めようと思っていた男は、今はチームの得点王、副キャプテンとしてFC琉球を牽引する存在となっている。沖縄の地で切り開くプロサッカー選手としての人生の続き。 「キャリアハイが8得点なので。10点獲れると全然変わってくると思うんです。10点獲れば自分がセンターフォワードの選手ということを証明できると思います」 キャリアハイを更新するとともに、沖縄の地で昇格を成し遂げける事で Jリーガー高木大輔の存在を証明する。
インタビュー・記事執筆:植草凜(沖縄テレビアナウンサー)