「常に心身の準備ができている」B3から移籍の平良彰吾、琉球ゴールデンキングスが契約延長した“意味” 成長へ岸本隆一から助言も
プロバスケットボールBリーグ1部(B1)西地区の琉球ゴールデンキングスが12日、B3の横浜エクセレンスから期限付き移籍で加入していたPG平良彰吾について、移籍期間の延長を発表した。 開幕戦で全治2〜3カ月の怪我を負ったPG伊藤達哉の穴を埋めるため、当初は11月13日までの移籍だった平良。今回の発表で、新たな期間は2025年6月30日までとなった。 上位8チームによるトーナメントでシーズン王者を決める今季の「チャンピオンシップ(CS)」は2025年5月8日に開幕し、2戦先勝方式のファイナルは5月24〜27日に横浜アリーナで行われる予定だ。つまり、キングスが最長のシーズンを送ったとしても、今季が終了するまで契約が続く。 Bリーグで最も下のカテゴリーであるB3でプレーしていた選手が、いきなりB1の舞台にジャンプアップし、シーズンを通した契約を勝ち取るというのは、なんとも夢のある話である。しかも、移籍先は昨シーズンまで3年連続でファイナルに進出している強豪だ。 米NBAで活躍する八村塁や元キングスの牧隼利(大阪エヴェッサ)らと同級生で、世代別日本代表に選ばれた経歴はあるが、プロではほぼ無名に近く、キングスでのプレーがB1初挑戦だった平良。“シンデレラボーイ”となった要因は何だったのか。
️桶谷HC、島根戦念頭に「まわりに影響を与えられる選手」
移籍後に平良がコートに立った試合は10試合。平均で9分11秒出場し、2.8得点、0.7アシスト、0.4リバウンドのスタッツを残している。オフェンスでボール運びを担うほか、成功率35.7%のスリーポイントシュート(3P)もいい場面で決め切っている印象だ。 10月30日にマカオであった東アジアスーパーリーグ(EASL)のアウェー戦にも出場し、5分17秒で3得点、2アシストを記録した。 一方、平良の最も大きな貢献は数字に表れない部分にある。ボールをコントロールする相手のハンドラーを中心に、1対1で激しいプレッシャーを掛けられることだ。エナジーに満ち溢れ、ボールへの執着心が強い。そのパフォーマンスは、チーム全体への波及効果も生んでいる。 それが顕著に表れた試合が、10月23日にアウェーで行われ、61ー98で大敗した西地区首位の島根スサノオマジックとの一戦だ。 平良はこの試合、既に30点差以上を付けられた第4Qの頭から出場し、すぐに前線から激しいプレッシャーを仕掛けて相手のミスを誘った。第3Qまでの停滞した雰囲気をこのワンプレーで打破し、他の選手も呼応するようにプレー強度を高めた。平良はその後も島根のエースであるPG安藤誓哉に密着マークを続け、声を張って味方を鼓舞する場面もあった。 1月6日にホームであった京都ハンナリーズ戦後の記者会見で、桶谷大HCはこう振り返った。 「島根戦で最後に戦ってくれたのは彰吾でした。自分たちが開幕前から『アンダードッグ(格下、不利な状況などの意味)な戦いをしよう』と言ってる中で、それが全然できていませんでした。B3から来た彰吾がああいう姿を見せてくれて、やっとチーム全体が『自分たちはこういうバスケをしないと駄目なんだ』と理解し、良くなっていった。彼が入ってきてくれた意味はとてもありました」 賞賛のコメントはさらに続いた。 「自分のことだけをできる人は多くいたとしても、まわりにまで影響を与えられる人は少ない。彼はそういう選手ですよね。そういった意味で、彼はキングスに多大なる影響を与えてくれました」 キングスはこの試合以降、EASLを含めて負け無しの8連勝中である。
️B1レベルの「ディフェンスと身体能力」
京都戦後の会見で、平良にも島根戦の自己評価を聞いてみた。 「いろんな方に『流れが変わった』と言ってもらえました。自分がやれることは、どんな点差でも、どんな時間帯でも、やるべきことにフォーカスしてプレーをすることです。キャリアを通してそういう風にやってきたので、そこを評価してもらえたのは、自分の軸をぶらさずにやってきた成果だと思います」 今回の契約延長に伴い、横浜エクセレンスが発したクラブコメントで印象的な文言があった。「平良選手自身が、常に心身ともに準備が出来ており、横浜エクセレンスでも、琉球ゴールデンキングスでも、献身的にクラブのために動くことが出来る人間性を備えているからこそ、成し得たこの一ヶ月の活躍だったと思います」との部分だ。 確かに、平良はいつも「準備」ができているという印象だ。どんな状況でコートに立ってもハッスルの度合いが変わらない。審判の判定に不満を示すジェスチャーもほとんどなく、ワンポゼッションごとに高い集中力を維持しているように見える。バスケットボールに真摯に取り組む姿勢が「まわりに影響を与えられる」力を生んでいるのだろう。 プレー面においても「自分の身体能力やディフェンス、フットワークはB1でも通用すると思います」と語り、一定の手応えを感じているよう。相手ハンドラーの進行方向を読む力、間合いを詰めるスピード、簡単に押し負けない体幹の強さは特に際立っている。
️今後の課題と“ミスターキングス”から吸収すべきコト
国内の最高峰リーグでプレーするに当たり、もちろん課題もある。京都戦後、平良は「スマートにプレーすること」を挙げ、こう続けた。 「今日は試合の途中から出て、チームファウルが溜まっているのに、すぐに簡単なファウルをしてしまいました。一発目のドライブも逆を突かれて抜かれたので、もったいなかったです。後半に出た時は、個人ファウルの数はあまり関係がない中で、チームファウルが溜まっていなかったら、逆にファウルをうまく使って速攻を止めたりすることも、もう少しできたと思います」 オフェンス面では、ボール運びはある程度安定しており、ターンオーバーは10試合で6つ。決して悪い数字ではない。ただ、ゲームコントロールについては「自分が変わったタイミングで良い流れを続けられるために、もっとチームとしてうまく回せるようにプレーしたいなと思っています」(12日の佐賀戦後の記者会見)と課題を感じている。 それもあってか、百戦錬磨の“ミスターキングス”岸本隆一から助言を受けている場面もよく見られる。具体的にどんなアドバイスをもらっているのか。 「隆一さんはプレッシャーを掛けられても、ずっとボールキープしたり、コールを続けられたりするので、どうしたらできるようになるか自分から聞きに行ったりしています。それで『自分でアタックを狙いながらやれたら、相手も守りづらくなるから』といったアドバイスをもらっています。隆一さんは僕も小さい頃から見てきた選手で、日本のトップのガードだと思うので、盗めるものは盗んで自分の成長の糧にしたいと思っています」 キングスは現在、11勝3敗で西地区2位につける。EASLの試合もある厳しいスケジュールの中でも、好調な滑り出しで序盤戦を終えた。バイウィーク(リーグの中断期間)を挟み、次節は11月30日、12月1日にアウェーで東地区首位の千葉ジェッツと対戦する。 12月も4週連続で水曜ゲームがあり、毎週末の2連戦と合わせ、中2日でひたすら試合を繰り返していく。仮に負傷離脱中の伊藤が近く復帰したとしても、タフな日程をこなしながら各選手が良好なコンディションを維持するためには、できる限りのプレータイムのシェアは必須だ。 チームが契約延長の発表に際して「バイウィーク明けにはさらに多くの試合が控え、どれも重要な試合が続くことから、今後も平良選手の力が必要だと判断し…」とコメントしている通り、平良がコンスタントに活躍し、さらに成長することができれば、キングスのチーム力をさらに押し上げることは間違いないだろう。
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