クラシックかつ斬新!リヨン帰りのシェフによるフランス菓子《福岡市・警固》
今年5月、けやき通りから一本入った静かな住宅街に「パティスリー・シェ・シシ」がオープンしました。店は、ネイビーを基調としたノーブルな雰囲気。店名の「シェ」は家、「シシ」はオーナーシェフ・西嶋一力さんのフランス時代の愛称。つまり西嶋さんの家という意味なんだそう。
大理石風のおしゃれなショーケースをのぞくと、ガレットやタルト、ケーキが並び、まるでフランスを訪れたかのような気分に! フィナンシェやマカロン、コンフィチュールなどもあります。
西嶋さんはフランス菓子の名店、東京「オーボンヴュータン」の流れをくむ「ノリエット」で修行した後、フランスのリヨンに渡り、帰国後は神戸で腕を磨きました。2018年には、日本におけるフランス伝統菓子の文化と魅力を発信する団体「クラブ・ドゥ・ラ・ガレット・デ・ロワ」が主催する大会で準優勝した若き実力派です。
「生地の表情や窯の様子を見極めながら作り上げるのが楽しい」と焼き菓子に魅了された西嶋さん。例えばサブレは、あえて焼ききらない部分を少し残すことでバターの芳醇な香りを残すなど、火入れに秒単位までこだわり、それぞれの菓子に合わせた最高の焼き具合を追求しています。西嶋さんのお菓子はクラシック&シンプルで、飽きのこないものばかりです。
まずは「シェ・シシ」のスペシャリテ、西嶋さんが美食の街・リヨンで出合った「ガレット・プラリーヌ」(1カット300円、ホール1200円)をいただきました。鮮やかな赤に色づけしたアーモンドの砂糖菓子・プラリーヌをバターと卵を贅沢に使ったリッチな味わいのブリオッシュにのせて焼いたもので、砕いたアーモンドのザクザク感がクセになります。
左上の「ガレット・シュクール」(1カット250円、ホール1000円)は、砂糖とバターをたっぷり使って仕上げたシンプルなブリオッシュ。どちらも福岡ではなかなかお目にかかれないリヨンの郷土菓子です。
おみやげにしたくなる、小さな焼き菓子も充実しています。マカロンは「ピスターシュ」「ショコラ」「シトロン」など5種類ラインナップ(1個250円)。上質なシチリア産のビターアーモンドを使用し、甘いだけでなくキレのある味わいが特徴です。濃厚なバターの香りが広がる「サンノン」(1箱800円)は、ホロホロッとした口どけで手が止まらなくなります。
生菓子は手前の「サヴァラン」(550円)が一番人気だそう。オレンジのフレッシュな香りを残したシロップをジュワジュワに浸した生地がなんとも美味。お酒が好きな人は、スポイトでオレンジリキュール・グランマルニエを生地に注入すると、一瞬で大人のケーキに変身します。「サヴァラン」は、通常オレンジだけ使用する店が多いのですが、こちらでは中にフランボワーズのジュレを加えてあり、甘みと酸味のバランスが絶妙でした。
右奥の「ガトー・マカロン」(600円)は、ホワイトチョコとバニラのクリームの下に、マンゴーとパッションフルーツのクリーム、そしてフランボワーズのジュレがたっぷり。あえて前日に完成させておくことで、固いマカロンがクリームの水分を吸ってほどよくやわらかくなり、フォークがスッと入る食べやすさも感動ものでした。
奥様と仲睦まじく店を切り盛りする西嶋さん。「本来“パティシエ”とは菓子だけでなく“生地を扱う人”という意味なんです。フランスのパティスリーは、1軒でパーティが開けると言われるくらい、菓子だけでなくパンや惣菜など小麦粉を使った料理まで並ぶのが古き良きスタイル。今は菓子づくりで精一杯ですが、そんな伝統的なスタイルに憧れています」と西嶋さん。週末は不定期でクロワッサンやキッシュが並ぶこともあるのだそう。見かけたら超ラッキー! 迷わずゲットするのがおすすめです。
《Pâtisserie chez chichi パティスリー・シェ・シシ》
福岡市中央区警固2-16-20 朝日プラザ赤坂1F
092-791-3617
※掲載しているメニューや価格は取材時のものです。訪問する際にはお店のSNSや電話等でご確認ください。