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元維新派・平野舞が立ち上げた「孤独の練習」が『柔和なニューワールド』で本格始動。

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「孤独の練習」イメージビジュアル。

故・松本雄吉が主宰した、大阪の野外劇集団「維新派」。現実の風景を活かした、ダイナミックな舞台美術ばかりが話題になりがちだけど、様々なモノを削ぎ落とした台詞回しと振付、さらに風景と一体になるようなたたずまいなど、俳優の演出でも独自の美学を貫いていた。17年の劇団解散後、野外劇に挑戦する者はまださすがにいないが、そのメソッドを生かして、次世代の表現にチャレンジしている元劇団員たちは多い。20年以上維新派の舞台に立ち続け、最終公演『アマハラ』(2017年)では演出を担当した平野舞も、その一人だ。彼女が2019年に立ち上げたパフォーマンス・ユニット「孤独の練習」の、第1回目の公演が行われる。

孤独の練習1『柔和なニューワールド』公演チラシ。 [撮影]平野舞 [デザイン]升田学

第0回公演『Lost & Found』(2020年)では「感染症のなかった世界」を想像する俳優たちの行為を、ほとんどPC画面上で見せるなど、維新派的パフォーマンスとテクノロジーを組み合わせた世界を提示した。今回は「echo(共鳴、模倣、残響)する身体」をコンセプトに、それぞれの俳優たちの身体の記憶を掘り起こし、他の人たちがそれに呼応していく様を、リズムの可視化や巻き戻しのような動きと、「関西アンダーグラウンド界の最重要人物」とも言われる音楽家・日野浩志郎のオリジナル楽曲に乗せて描いていく。またキャスト・スタッフとも、維新派ではおなじみだったメンバーをそろえたのも、嬉しい見どころだ。

孤独の練習 0 『Lost & Found』 [撮影]平野舞

孤独の練習 0 『Lost & Found』 ダイジェスト映像


主宰の平野からは、このような言葉が届いた。

維新派の役者として活動していた頃は舞台作品を観る習慣がほとんどなかったのですが、維新派が解散してからの1年間、とにかくいろんな作品を観にあちこち出かけました。
最終公演『アマハラ』で演出を担当したことで、松本さんが1人で見ていた風景を初めて目の当たりにし、舞台作品に対する視座が大きく変化したことがきっかけでもあります。
維新派のない非日常を過ごしながら、たくさんの素晴らしい作品に触れてどんどん世界が広がりましたが、同時に、自分が一番好きだったものはもうどこにもないんだ、ということも強く実感しました。
それならば自分で作るしかない、と、新しい宿題が出されたような感覚もあり、「孤独の練習」を立ち上げて活動を始めることにしました。
世界が大きく変容したこのおよそ2年間、〝正しさ〟の根拠が曖昧になり、身近にいる他者が今までになく遠い存在に感じられるかのような出来事がたくさんあったように思います。あるいは、これまでにも日々当たり前に直面してきただろうそのことを、よりいっそうクリアに炙り出したのが、この感染症という季節だったのかもしれません。
他者へのわからなさにどのように手を伸ばせるのか。昨年の『Lost & Found』では、相手と対峙し向き合うことで、そのわからなさに接近しようと試みました。今回の『柔和なニューワールド』では、まず誰かの隣に立ち、同じ景色を見てみることから愚直に始めたいと考えています。その目が何を見ているのか、何を見ようとしているのか。他者のまなざしを身体に宿すための方法を思考していきます。

過ぎ去ったものへの思慕や郷愁にあふれた維新派の世界に対して、コロナ以降簡単に想像がつかなくなった私たちの未来図──新しい世界を描こうとする「孤独の練習」。会場となる古いビルのガレージから、どのような異色の風景を浮かび上がらせるかに期待したい。

「大大阪舞台博覧会2021」で発表された、孤独の練習の映像作品『幾何学のフォークダンス』(2021年)

また、もし維新派を観たことがないという人がいれば、現在「国際交流基金」の公式YouTubeチャンネルで、松本雄吉がフル演出した最後の劇団公演『トワイライト』(2015年)が、一年間限定で無料配信中なので、この機会にチェックしてほしい。

ISHINHA "Twilight"【SUB】

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