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神奈川県民しか知らない!? 川崎の町中華『狸小路飯店』で神奈川のローカルフード・サンマーメンを堪能

さんたつ

ラーメンにシャキシャキ野菜のあんかけをのせた神奈川県のご当地グルメ・サンマーメン。味つけや具材は店によってさまざまで、食べ比べるのも楽しい。JR川崎駅西口から徒歩4分ほどのところにある1971年創業の老舗『狸小路飯店』のサンマーメンも、店主のこだわりやアイデアがつまった一品。とろみをまとった麺はいつまでも熱々で、野菜と肉の旨味が溶けこんだスープをズズズと飲み干せば、体が芯からポカポカになる。

狸小路飯店(たぬきこうじはんてん)

「安い、早い、旨い」三拍子揃ったサンマーメン

JR川崎駅西口のバスロータリーを抜け、西口通りを歩く。約2000席の客席を備える音楽ホールを擁する『ミューザ川崎』を通り過ぎ、「シンフォニーホール前」の信号を渡って少し進んだところにある『狸小路飯店』。創業1971年、町中華の老舗だ。

JR川崎駅の改札を出てから4分ほどの西口通り沿い。

この辺りはかつて東芝の大きな工場に挟まれていたことから“東芝の城下町”と呼ばれていた。工場閉鎖後は跡地に『ラゾーナ川崎プラザ』がオープンし、街の雰囲気も人の流れもがらりと変化。そんななか、以前と変わらぬ佇まいで出迎えてくれる。

店頭の看板には定食やセットメニューがたくさん。ランチタイムだけでなく、終日注文できる。

店頭の看板に出ているメニューだけでも、1カ月ぐらいは毎日違うメニューが食べられそう。そんな充実の定食メニューを横目で見ながら入り口に向かう。今日のお目当ては、神奈川県のローカルフード・サンマーメンだ。

元々は横浜中華街のまかないだったというサンマーメン。ざっくり言うと、とろみのついたもやしそばだ。筆者は生まれも育ちも横浜なのだが、地元では町の中華屋さんに当たり前にあるメニューだった。出前を取るときは「何にする?チャーハン?ラーメン?サンマーメン?」と聞かれるのだ。サンマーメンが神奈川県にしかないことを知ったのは大学生になってからだ。

ドア横には“かながわサンマー麺の会”のポスターが。

横浜中華街「聘珍楼」さんのまかないが発祥なんですよ、とサンマーメンのはじまりを教えてくれたのは店主の金澤松夫さん。「当時は相当忙しかったから、そこにある材料を簡単にぱぱぱっとあおって、立ったまま食べて、お腹いっぱいにしたって聞いてます」。戦後、ある中華屋さんがそれを商品化。「安い、早い、旨い」「野菜たっぷりで健康にいい」と評判になり、横浜市内に広まったんだそう。

店主の金澤松夫さん。神奈川県中華料理組合理事長、かながわサンマー麺の会の会長も務める。

さっそくサンマーメンを注文すると、「セットメニューもありますよ」とメニュー表を見せてくれた。ではお得なセットメニュー、ギョーザ+サンマーメン990円をお願いします!

店頭の看板に書かれていないセットメニューがまだこんなにあるとは。単品も含め、店のメニューは約100種類!

最後まで熱々。あんかけの保温力がすごい

松夫さんと並んで厨房に立つのは、息子さんで店長の憲曉さん。憲曉さんが手際よく麺をゆで、スープを準備し、餃子を焼く。その間に松夫さんが中華鍋をあおって野菜あんかけをつくる。

スープを用意する店長の憲曉さん。『狸小路飯店』のサンマーメンは醤油味だ。
松夫さんは中華鍋をあおりアタマを用意。松夫さんと憲曉さんのあうんの呼吸で調理が進む。

『狸小路飯店』のサンマーメンは醤油味だが、塩味のお店もある。「サンマーメンはお店ごとにこだわりがあってね。うちはうちのサンマーメンだから」と松夫さん。「挽き肉を入れるのはうちだけ」と、仕込んだ肉だねを見せてくれた。

材料は豚挽き肉、ニンニク、ショウガ、豆板醤、さくら味噌(甘みのある味噌)。サンマーメンだけでなく、味噌ラーメンや麻婆豆腐もこの肉だねをベースにしているそう。

毎日2㎏の挽き肉を中華鍋であおって『狸小路飯店』の味のベースを仕込む。

同じタイミングで焼きあがった餃子とともに、サンマーメンがテーブルに運ばれてくる。立ち昇る湯気とたっぷりの野菜に覆われ、麺の姿はほとんど見えない。

サンマーメン単品770円。ゆで玉子をのせるのも『狸小路飯店』のオリジナルだ。ギョーザ(3個)+サンマーメンのセットは990円。

ではシャキシャキもやしからいただきまーす! わわ、熱っ! 湯気はおさまっているのに、あんかけの保温力たるや!

もやしは太めの“成田もやし”を使用。火を通してからしばらく置いてもシャッキシャキだ。

もやしのほかに、ニンジン、ニラ、キクラゲなどの具材がたっぷり。なかなか麺までたどりつけない。しばし野菜を食べ進めてからどんぶりの下のほうを箸で探って麺を持ち上げると、またぶわっと湯気が立ち昇る。あんかけの保温効果、本当にすごいな。

中細縮れ麺にあんかけがよく絡む。とろみをまとった麺はいつまでも熱々だ。

スープが絡みまくった麺はずっしりと重く、すするとズゾゾゾゾーっと音をたてる。麺と野菜ととろみが一体となって、一箸でもけっこうな量。ほっぺをふくらませてハフハフもぐもぐ。二口、三口食べてもぜんぜん減らない……。これはもしや、どんぶりの底から無限に麺が湧き出すイリュージョンか!?

ベースの醤油スープの心地よいしょっぱさに野菜の甘みと挽き肉だねの旨味が溶けこんでマイルドな味わい。

野菜だけでもボリューミーなうえ麺もたっぷりで満腹なのだが、挽き肉が浮かんだスープがこれまたおいしくて、スープの中の挽き肉を拾いながらせっせとレンゲを口に運んでいるうちに、スープを飲み干してしまった。最後まで温かくて体も芯からポカポカに。

川崎で餃子といえば“かわさき餃子みそ”。餃子みそ7:酢2:ラー油1がおいしく食べる黄金比だ。

そして、セットの餃子。創業以来変わらないレシピで毎日手作りしている。肉汁じゅわっ、野菜多めでさっぱりな味わい。そして、ここで登場するのが“かわさき餃子みそ”。神奈川県産の味噌2種類と川崎市内でつくられた醤油がブレンドされた味噌だれだ。

口あたりは見た目よりマイルド。卓上の酢とラー油で酸味と辛味を加え、さらに餃子からしみ出る肉汁と野菜の旨味が加わると、おいしさが2倍3倍に! お腹いっぱいなはずなのにガンガン食べられてしまう。

ボリューミーであったかいランチをいただき、元気モリモリになった! 午後からの仕事も頑張れそうだ!

街の風景が変わっても愛され続けるアットホームな町中華

1階にはテーブル席とバーカウンター席、奥にはお座敷席がある。

川崎で生まれ、川崎で育った松夫さん。「戦後、父親がここで繊維関係の会社をしていたんですよ。お針子さんもたくさんいてね。私は文化服装学院でデザインの勉強をして後を継いだんだけど、オイルショックで会社がダメになって。この仕事では将来性がないってことで、180度転換したんです」。

駅前という立地から、飲食店へと大きく舵を切った。松夫さんは「何をやっても器用だから、できちゃうんですよ」と笑う。1971年、ラーメンチェーンの会社に入り、小さなカウンターだけのラーメン屋「狸小路」を始めた。

真っ赤なテーブルが並ぶ1階奥のお座敷席。

チェーン店として営業したのは10年ほど。「ラーメンってのは流行り廃りが激しいじゃないですか。ラーメン屋だけではやっていけないなと、中華屋に切り替えていったんです」。1990年に木造の店舗を3階建てのビルに建て替え、店名を『狸小路飯店』に改めた。

「川崎駅の西口には東芝の堀川町工場と柳町工場があって。お店をはじめた頃は工場の職人さんが夜中でも食べに来てくれたんだよね」と懐かしそうに話す松夫さん。現在、堀川町工場は『ラゾーナ川崎プラザ』に、柳町工場はキヤノンの工場になっている。「東芝を退職された方が今でも顔を見せてくれるんですよ」と笑顔を見せた。

中国料理の宴会といえば回転テーブル! 最大80人収容できる2階席。

「お客さんに提供するって意味では、繊維会社も飲食店も一緒」と話す松夫さん。「ただ、繊維会社の頃は品物を作って会社に納品するだけで、評価っていうのはなかなか自分に伝わってこなかった。飲食を始めてからは、お客さんから『おいしい』『まずい』って直で聞けるじゃないですか。こっちからも『また来てね』とか。そんな会話ができるほうが、私には合ってる。そういったお客さんとの関係で今も頑張れています」。

「息子がビール会社と一緒にポスターを作ったこのセットメニューが夜のお客さんにばかうけでね」と松夫さんがうれしそうに話してくれた。

店の味のベースとなるレシピはすべて松夫さんがつくったもの。それを今、息子の憲曉さんに伝えている。「ほかのお店にない私のアイデアがウケてお客さんが来てくれてるんで。その味付けをね、誰がつくっても同じ味になるように」。

『狸小路飯店』のサンマーメンは、こだわりの具材だけでなく、松夫さんのお客さんへの思いも隠し味になって心も体もぽっかぽかになるんだな。次に来た時には松夫さん手作りの味噌と肉だねがたっぷり入った自慢の味噌ラーメンも食べてみたい!

狸小路飯店(たぬきこうじはんてん)
住所:神奈川県川崎市幸区大宮町5-5/営業時間:11:30~14:00LO・17:00~22:00LO(土は11:30~14:00LO・17:00~21:30LO)/定休日:日/アクセス:JR川崎駅から徒歩4分

取材・文・撮影=丸山美紀(アート・サプライ)

アート・サプライ
編集プロダクション
1971年創業の編プロ。「旅&食&散策」ジャンルに強く、情報誌では子供向けから鉄道やドライブでの大人旅まで。さらにグルメ系ではラーメンや唐揚げ専門情報誌をはじめ、日本全国うまいもの紹介なども手掛けている。

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