「プログラフ」の関塚さんが生み出す、クライアントを後押しするデザイン。
ものづくりのまち、三条市に本社を構える「プログラフ株式会社」。印刷会社としてはじまり、形状作成やウェブデザインなど、徐々に業務の幅を広げてきました。現在ではデザインによるアプローチを得意としていて、在籍するデザイナーたちは国内外のコンテストで数々の受賞歴を持つ実力派。今回は、クリエイティブグループに所属する佐藤さんに会社のことを、デザイナーの関塚さんにこれまで手掛けてきたデザインのことを、それぞれ聞いてきました。
プログラフ株式会社
関塚 真歩 Maho Sekizuka
1981年加茂市生まれ。桑沢デザイン研究所ビジュアルデザイン専攻を卒業後、東京のデザイン事務所に就職。「前川正樹デザイン事務所」にて主にエディトリアルデザインに携わる。結婚を機に新潟へ戻り、約10年前に「プログラフ株式会社」へ入社。
印刷からはじまり、視覚表現に力を入れるように。
——まず「プログラフ」さんがどういう会社か、佐藤さんから簡単にご紹介いただきたいです。
佐藤さん:元は「岩橋印刷」という帳票、商業印刷を中心とする活版印刷業としてはじまりまして、2018年に社名を変更しました。今も印刷業としては変わらないのですが、その中でも視覚表現に重きをおいています。デザインを通じてお客様のイメージを形にしたり課題を解決したりすることで社会に貢献していく、という行動指針のもとで動いています。
——今はどういうお仕事が多いんですか?
佐藤さん:カタログやパンフレット、会社案内、シール。デザインだけのお仕事もかなり多くやらせていただいていますね。他にもウェブサイトデザイン、看板、展示会のブース装飾……。土地柄かもしれませんが、お酒のラベルを頼まれることも多いです。
——「プログラフ」さんといえば「プロたん」っていうPRキャラクターがいますよね。SNSでもかなり人気のようで。
佐藤さん: SNS担当がいるんですが、担当が入社した際に「プロたん」を企画しまして。今年で誕生から4周年を迎えます。かなりフォロワーさんも増えてきていて「プログラフって、プロたんの会社だよね」という反応をいただくこともあります。
「ただかっこいいデザイン」ではなく「コミュニケーションが生まれるデザイン」。
——では、デザイナー関塚さんのお話も聞かせてください。こちらへ入社される前はどんなところで経験を積まれたんですか?
関塚さん:高校卒業してから、東京のデザイン専門学校に進学しました。夜間の学校で、昼間はデザイン事務所でバイトをしながら夜遅くまで勉強していましたね。
——昔からデザイナーのお仕事に憧れがあったんでしょうか。
関塚さん:高校生の頃、成績があまりよくなかったんですけど、美術の成績は良かったんです(笑)。自分の特性を生かし、社会に貢献できる仕事って何かないかなと考えたときに、デザイナーがいいかなって思い、志しました。
——専門学校卒業後はどちらへ?
関塚さん:東京のデザイン事務所で働きました。主に雑誌のエディトリアルデザインをしていて、ティーンズ向けのファッション誌の仕事が多かったですね。そこで勤めた後は結婚を機にしばらくしてから新潟へ戻ってきました。
——「プログラフ」さんへ入社されたのはどうしてですか?
関塚さん:私が入ったのが10年ちょっと前なんですけれども、その頃から「印刷会社」っていう印象じゃなくて。培ってきた印刷の技術に加え、デザインで「新しい価値」を生み出す会社としてアプローチをしていたんです。そんなヴィジョンに惹きつけられて応募しました。
——今ではいろいろな商品パッケージを手掛けているようですけど、入社された頃からそういうお仕事が多かったんですか?
関塚さん:いえ、私が入った当初はパッケージの仕事ってそんなに多くなくて、ペラ物の仕事が多かった印象です。部署のマネージャーの茂山さんが自己研鑽のため「パッケージデザインのコンテストに出そう」と、そこでたまたま賞をいただくようになってから徐々に増えていきましたね。
——受賞をきっかけにパッケージのお仕事が増えていったんですね。関塚さんが、デザインを考えるときに意識していることはありますか?
関塚さん:お客さんの要望に沿うのはもちろん大事なのですが、それだけじゃなく、客観的な視点で「この商品は世の中に対してどうあるべきか」ってよく考えます。いろいろリサーチして、本質的なメッセージが伝わるよう意識しながらデザインしています。
——デザインの役割をよく考えてから取り組まれているんですね。
関塚さん:それから「ただかっこいいデザイン」というより「見る人、手に取る人に何かしらコミュニケーションが生まれるデザイン」。あとはもちろん「世の中にいい影響を与え、お客さんを後押しするデザイン」っていうことを念頭に置いています。
——今年は世界規模のデザインアワードでグランプリを受賞されたと聞きました。その受賞作品はどんなものなんですか?
関塚さん:「Utsuroi」という、2004年、2012年、2019年に造られた3種類の大吟醸古酒の飲み比べセットなんですけど、スリーブをスライドすると箱に書かれている数字が変わるんです。
——本当だ! ロゴが2004年から2012年、2019年と変化していく……面白い仕掛けですね。
関塚さん:箱を開けるプロセスを利用して、商品を手に取った人に直感的にメッセージが届くよう意識して作りました。縞アニメみたいな仕組みですね。
——そういうアイディアって、どんなときに浮かんでくるんですか?
関塚さん:ずっと考えていますね。「もう一歩先行くアプローチができないかな」って、寝るとき以外は頭の片隅で考えています(笑)。お客さんからの要望だけじゃなくて、プラスアルファの付加価値を付けたいんです。
——デザイン以外の部分でお客さんのお手伝いをすることもあるんですか?
関塚さん:デザインと合わせて、商品のネーミングを頼まれることもあります。女性をターゲットにした飲みやすい、甘口かつ軽めなアルコールの日本酒で、ラベルのデザインと一緒に商品名も考えてほしいって依頼されて。そのお酒を飲んだときに、どういうシチュエーションで飲みたくなるかを究極に考えました。それで、金曜日の夜9時45分だと思ったんです。
——どうしてそんなピンポイントな時間を……?
関塚さん:今、女の人ってすごく大変で、仕事も子育ても家のこともしなきゃでクタクタだから、そういう人たちにとって自分へのご褒美になるお酒にできないかなと考えて。週末、仕事や家事が終わった後、子どもが寝静まった後……。自分だけの特別な時間にこっそり飲んでほしいなと思い、「金曜日、夜9時45分のお酒。」とコピーを打って「はなじかん」と付けました。
——ネーミングとデザインを一緒に任されるって、他のデザイナーさんもよくあることなんでしょうか。
関塚さん:どうでしょう……私は東京で働いていたときにライターさんや編集者の方と一緒に仕事をすることが多かったので、感情に訴えかけるキャッチコピーの大切さが無意識レベルにあるんだと思います(笑)。キャッチコピーを考えるのは好きなんです。自分のデザインにより世界観を持たせることができるので、やらせてもらえるとありがたいですね。
——じゃあデザインよりも、キャッチコピーから決めることが多いんですか?
関塚さん:今気づいたけどそうみたいです。コピーがコンセプトとかデザインのテーマにつながるから、それに付随してデザインを作っていきます。分かりやすい言葉で表現するようには心がけていますね。
デザイナーとして、最高の仕事をひとつひとつやっていく。
——「プログラフ」さんには活躍されているデザイナーさんがたくさんいらっしゃいますよね。そういう他の方の活躍は刺激になりますか?
関塚さん:そうですね。競い合っているわけじゃないですけど、発想や切り口、巧みな表現にはっとさせられることが多くて、いつも圧倒させられます(笑)。弊社はデザイナーだけでなく、「全員がクリエイター、社員全員が視覚表現のプロフェッショナル」という行動指針に基づいて仕事に取り組んでおります。印刷会社の域を超えた幅広い活動に注目してもらえたら嬉しいですね。
——関塚さん自身の、デザイナーとしての今後の目標ってありますか?
関塚さん:そうですね(笑)。ひとつひとつの仕事がお客さんの人生を後押しすることにつながると思っていますし、デザインで世の中が変わることもあると思うので、そういうことを常に頭に入れて仕事をしているんですね。そうやって続けていけば取り巻く状況が自ずとポジティブに変わっていくので、「自分はこうなりたい」っていうのは先にあまり考えない。私はデザイナーとして、最高の仕事をひとつひとつやっていきたいのです。
プログラフ株式会社
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