【リンゴ病】妊娠中の感染はリスクあり! 「リンゴのほっぺ」にならない大人と子どもの症状差とは【医師監修】
2024年から感染拡大が続く「リンゴ病」について産婦人科医・柴田綾子先生が解説/第1回。子どもと大人の症状の違い、妊婦が感染した場合の胎児貧血や胎児水腫のリスク、妊娠週数による違いについて。全2回。
【▶画像】妊娠中の「おっぱいケア」を助産師がわかりやすく解説「リンゴ病(伝染性紅斑)」が、2024年から流行拡大しています。リンゴ病は妊娠中に感染すると、おなかの赤ちゃんにも影響が及ぶ可能性があるため、注意が必要です。妊娠中に起こりうる影響や感染後の経過、さらに子どもとは異なる大人のリンゴ病の症状について、産婦人科医の柴田綾子先生にお話を伺いました。
リンゴ病は4~5年周期で流行する
──2024年からリンゴ病の感染が急増しているのはなぜでしょうか。
柴田綾子先生(以下、柴田先生):リンゴ病は、「ヒトパルボウイルスB19」への感染が原因で、4~5年おきなど周期的に流行します。2024年ごろからふたたび流行期に入っています。
私は約10年にわたり産婦人科医として診療に携わってきましたが、2025年は「リンゴ病に感染したかもしれない」と不安を感じて受診される妊婦さんが、これまで以上に多かったです。
──4~5年おきと周期的に流行するのには、なにか理由があるのでしょうか。
柴田先生:一度感染すると抗体ができ、その後はふたたびかかりにくくなる「終生免疫」(しゅうせいめんえき)を獲得するとされている病気だからです。
流行の過程で多くの人が感染し、抗体を持つ人が増えると、ウイルスは広がりにくくなり、一度流行は収束します。
しかし、時間の経過とともに抗体を持たない人が増えてくると、感染がまた広がりやすくなるのです。その結果、4~5年ごとに流行を繰り返すサイクルが生まれると考えられています。
──リンゴ病は2019年に大流行しその後は落ち着いていたのに、2024年から急増しています。コロナ対策との関連もあるのでしょうか。
柴田先生:影響はあると考えています。コロナ禍(2020~2023年春)では、マスクの着用や手洗いの徹底、外出機会の減少などにより、リンゴ病にかぎらず多くの感染症の発生が抑えられていました。
その結果、本来であれば幼少期にリンゴ病に感染して抗体を獲得していたはずの子どもたちが、かからないまま成長し、2024年から感染が広がったと考えられます。今年(2026年)の感染がどうなるかはまだ何とも言えませんね。
春から初夏にリンゴ病感染者が増えるワケ
──リンゴ病の流行に季節性はあるのでしょうか。
柴田先生:春(3月)から初夏(6~7月上旬)にかけて、リンゴ病の患者数が増えやすい傾向があります。昨年(2025年)も、この時期に各地で警報や注意喚起が相次ぎました。
流行の背景には、春ならではの生活の変化があります。進級や入園・入学によって新たな人との接触が増えるこの時期は、リンゴ病のような子どもに多い感染症が広がりやすくなるのです。
さらに、幼稚園や保育園、学校で広がった感染が家庭内に持ち込まれ、大人へうつるケースも少なくありません。とくに妊婦さんの場合、上の子どもを通じた感染を心配されることが多いですね。
大人と子どもで違う リンゴ病の症状とは
──リンゴ病はどのような症状があらわれるのでしょうか。
柴田先生:子どもの場合は、まず風邪のような症状から始まります。発熱や咳、鼻水などが現れ、その1週間から10日後、頰に赤い発疹があらわれ、いわゆる“リンゴのほっぺ”になるケースが一般的です。
一方で、大人は症状が子どもと異なるため、注意が必要です。大人は症状があらわれるのがおよそ50%とされており、残りの半数ほどは自覚症状が出ないのです。
もし症状が出ても微熱や強い倦怠感、関節痛、手足のむくみなどが中心となります。子どもに見られるような、“リンゴのほっぺ”にはならないケースも多いですね。
──リンゴ病に感染しても風邪に似た症状や無症状の場合、気づくのが難しそうですね。
柴田先生:そうですね。たしかに症状だけではリンゴ病かどうかを見分けにくいケースも多いです。だからこそ、【周囲でリンゴ病が流行していないか】に目を向けつつ、流行期にはご自身の体調の変化に、いつも以上に気を配っていくことが大切です。
妊婦が感染した場合の胎児への影響
──妊娠中にリンゴ病に感染した場合、胎児にはどのような影響が起こるのでしょうか。
柴田先生:リンゴ病の原因「ヒトパルボウイルスB19」に妊婦さんが感染すると、胎盤を通して胎児にうつることがあります。ただし、母体が感染したからといって、すべての胎児に影響が出るわけではありません。
妊婦さんが感染した場合、胎児へ感染する確率は約20%。そのうち、胎児にも症状が発生するのは約20%。つまり、リンゴ病に感染した妊婦さんのうち、おなかの赤ちゃんに実際に症状が出るのは、約4%と考えられています。
──もし胎児が感染した場合、どのようなことが起こるのでしょうか。
柴田先生:まず起こり得るのは「胎児貧血」です。ヒトパルボウイルスB19は、赤血球の“もと”になる赤芽球(せきがきゅう)という細胞にくっついて、血液を作る働きを妨げます。そのため、胎児の中で十分な血液が作られなくなり、貧血状態となるのです。
貧血が進むと胎児の心臓に負担がかかり、胎児の全身にむくみが出る「胎児水腫(たいじすいしゅ)」へとつながる場合もあります。
胎児水腫になった場合も約3割は自然に軽快するとされていますが、重症になると心不全が進んで子宮内で亡くなるなど、流産や死産につながる可能性もあります。
妊娠初期はとくに注意が必要
──妊娠の時期によっても、リスクは変わるのでしょうか。
柴田先生:妊娠週数によって、リンゴ病のリスクには差があります。
妊娠初期(妊娠13週まで)では、流産や胎児死亡となる割合が約14%とされていますが、妊娠中期(妊娠14~27週)では約5.6%に下がります。また、妊娠後期(妊娠28週以降)になると、胎児水腫や死産のリスクはほとんどなくなります。
妊娠初期ほど、造血(血液を作ること)の妨げが胎児に大きな影響を与えるのです。
胎児感染した場合の治療とは
──胎児への感染が疑われた場合、病院ではどんな治療をするのでしょうか。
柴田先生:超音波検査で赤ちゃんの状態をていねいに見守っていくことが基本となります。1~2週間ごとに胎児の貧血やむくみといったサインがないかを確認し、経過を慎重に観察していきます。
胎児が重症で心不全が進んだ場合には、“胎児輸血”という治療を検討することがあります。これはお母さんのおなかの上から針を刺し、赤ちゃんのおへそ(臍帯)に届くようにして輸血をおこなうものです。
ただし、胎児輸血が必要になるのはごく一部の重いケースにかぎられ、多くの場合は、経過観察を続けるなかで自然に改善していきます。
胎児に感染したからといって、すぐに命に関わる状態になるわけではありませんが、万が一のときは医療機関と相談しながら、落ち着いて経過をみていってください。
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具体的なリンゴ病の症状や、妊娠中の感染リスクがみえてきました。しかし、もし家族にリンゴ病と疑われる人が出た場合、家庭内ではどうすればいいのでしょうか。
次回は、家庭でできる感染対策や、具体的な過ごし方について、引き続きくわしく伺います。
取材・文/牧野 未衣菜