【逗子 イベントレポ】後藤邸openhouse – 葉山芸術祭で体感した空間アート
葉山・逗子エリア一帯で、初夏の新緑に彩を添えるように開催される葉山芸術祭。今回は、2026年5月の連休中に開催された「後藤邸openhouse」に参加にした様子を紹介します。
普段は公開されていない、建築家の自邸兼事務所に足を踏み入れることができる無料体験イベントです。
「後藤邸openhouse」とは?
イベント当日の集合場所ともなった、後藤邸エントランス付近
会場は逗子の山側、谷戸の奥にひっそりと佇む「後藤武建築設計事務所」の拠点。鳥のさえずりが心地いい緑に囲まれた建物は、住宅地でありながら、まるで森の中にあるような空間になっています。
「後藤邸openhouse」は、葉山芸術祭イベントのひとつ。逗子を拠点に活動される後藤武さん・千恵さんの住居ルームツアーに参加できるイベントなのです。
イベント当日、後藤邸のエントランスに飾られた葉山芸術祭のフラッグ
株式会社後藤武建築設計事務所の代表である後藤武さんは、隈研吾建築都市設計事務所を経て独立した方。住宅設計やリフォーム、空間設計を手掛けるほか、建築史の視点から研究・執筆活動も行う、実務とアカデミアの両面で活躍する建築家です。
ルームツアーは1時間。後藤邸は傾斜地にあることもあり、建物自体はものすごく広いというわけではありません。四角形の建物の外側にはいくつも扉があるものの、中は巨大なワンルーム。遠近法が巧みに使われていて、歩いていくうちに距離感が次第に揺らいでいきます。
ルームツアーでめぐる空間アート
ダイニングから屋外テラスを望む様子。壁を設けず、あえて天井を低く抑えた設計によって、空間は内と外の境界をゆるやかに溶かしています。1階で淹れたコーヒーを2階から手渡しで受け取る――そんな、何気ないやりとりの中に豊かさと楽しさが生まれる住まいです。
「後藤邸openhouse」が“単なる自宅兼事務所のルームツアーではない”というのは言わずもがな。さすが建築家のご自宅、谷戸の地形を内部で追体験できるよう設計された空間づくりがお見事。
こちらは新緑が心地いい屋外テラス。空を敢えて見えないようにすることで、屋外にいながら室内にいるような空間を生み出しています。立っていると空を感じませんが、座ると空が見えるようになっているところも秀逸。
段差や視線の抜け、光の入り方が巧みに計算された空間は、住まいというよりアートという印象。静けさの中に、風や時間の流れのような自然の気配が常に感じられます。
こちらは、カリフォルニアの図書館で使われていたというステップ。書斎の本棚は、このステップが活かせるように設えられています。
座る場所によって景色が変わり、季節ごとに移ろう光の表情も感じられる空間です。
また、オープンハウスならではの魅力として、設計者自身の生活の痕跡が感じられる点も興味深いところ。書棚や家具の配置、細部の素材選びに至るまで、思想と暮らしが密接に結びついていることが伝わってきます。
こうしたリアルな空間体験は、写真や図面だけでは決して得られないもの。
外部には水盤が設けられ、太陽の動きに応じて揺らぐ水面の模様が室内へと映り込むよう設計されています。
壁で仕切られないワンルームの構成により、コーヒーを淹れるとその香りは家全体へとゆるやかに広がっていました。1階を歩くだけでは2階の気配は掴めず、その曖昧さが空間に開放感と奥行きをもたらしているように思えます。
2階にある和室へは室内から直接行くことができません。いったん屋上に出て向かいます。木々がほとんど切られておらず、柵もない屋上は開放感にあふれ、まるでツリーハウスに上ったような視点で景色を楽しめます。
「いつかお茶会を」と考えられているという和室は壁で仕切らず、障子にして開けることもできるようになっていました。遠近法の錯覚で、すぐ近くにある書斎が少し遠く奥まった空間に見せる仕掛けが施されています。
こちらは、森の空気を感じられるバスルーム。近くに植えられたイロハモミジは、秋には鮮やかに色づくのだとか。網戸も利用できるため、夏の夜は虫の音を聞きながら入浴できそうです。
ダイニングには後藤邸の模型があり、屋根を外すと、室内の構造が見えるつくりになっていました。
猫を2匹飼っているという後藤さん。「巨大なキャットタワー」と冗談で言われるほど、猫たちは楽しそうに家の中を動き回っているとのことです。
見るだけでなく、感じる建築体験
こちらは、今回お話を伺った後藤武さん。葉山芸術祭では、ご自邸兼事務所を公開いただき、貴重な機会をありがとうございました。
自然と地形の中に生活とアートが交差する場所である後藤武建築設計事務所。葉山芸術祭の催しのなかでも、この後藤邸openhouseは建築そのものがアートとして展示されている、非常に興味深いイベントです。
実は2025年も開催していて、その時は自由に内覧できるよう公開したら人であふれてしまい、2026年は時間を決めたツアー方式となりました。それでもあまりに人気で、4月中には予約でいっぱいになってしまったほど。
お話を伺うと、こちらのイベントは大人だけでなく、子どもも目を輝かせて楽しむそう。参加した子どもも、「泊まって友達とかくれんぼしてみたい」「いつかこんな家に住みたい」といった想像が広がっていました。
なかなか足を踏み入れることができない建築の中を、歩いて体験する後藤邸openhouse。いつかまた開催される機会があったら、ぜひこの稀有な空間アートを体感してみては。
イベント開催などの情報は、後藤武建築設計事務所の公式サイトでも案内されます。
後藤邸openhouse(葉山芸術祭2026イベント)
開催期間
2026年5月4日〜5月5日
10:00〜 11:30〜 14:30〜 16:00〜
(予約制で各回10名まで、約1時間のルームツアー形式での参加)
開催場所
会場名:株式会社後藤武建築設計事務所
住所:神奈川県逗子市山の根3-20-21
駐車場:なし
参加費
無料
主催
株式会社 後藤武建築設計事務所