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歴史と将来を考え、水球界を変えていく。“水球のまち”新潟県柏崎市で続く「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎」の未来へのチャレンジ

田舎暮らしの本

歴史と将来を考え、水球界を変えていく。“水球のまち”新潟県柏崎市で続く「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎」の未来へのチャレンジ

42キロに及ぶ海岸線と米山をはじめとした西山連峰に抱かれた新潟県柏崎市は、1964年の「国民体育大会(新潟国体)」夏季大会で水球競技会場となったことをきっかけに“水球のまち”として全国に知られています。その中心となるのが、2010年の創設から日本選手権2度の優勝を誇る強豪「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎」の活動です。

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競技と仕事が両立できる環境を整備し支援

大学卒業後の競技環境が乏しい

 日本代表から海外でもプレーした青栁勧(かん)氏が、新潟県柏崎市の新潟産業大学の教員となった2009年、当時の日本では社会人水球チームが少なかったことから、「日本のどこかで社会人チームを作りたい」と構想していたところ、当時同大学の学長だった廣川俊男氏が柏崎を候補にするメリットを助言。同市に本社を置く製菓業のブルボンが命名権契約を結び、2010年、“水球のまち”に「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎」が誕生しました。

 廣川氏が理事長に、青栁氏は選手兼監督として始動すると、日本代表経験者や日本選手権出場者が集結し、結成1年目で日本選手権の本戦出場(3位)を果たします。3年目の2012年に同選手権で初優勝、2018年には2度目の優勝を飾るなど強豪チームとして台頭。その間、2015年には市内における各年代のチームを統合し、現在は所属選手が100名を超える、日本最大級の水球クラブチームに成長しました。

 初代理事長であり、新潟産業大学の学長だった廣川氏から強い誘いを受け、2024年に「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎」の強化部長に就任した佐々木洋輔さんにお話を伺いました。

廣川氏の複数回の長期交渉に感銘を受けて就任した佐々木さんは、廣川氏の人脈作りや、青栁氏のバイタリティを受け継いでいる

 島根県で水球を始めた佐々木さんは、茨城県の筑波大学に進学し、スポーツ科学を学びながら大学院、そして研究員をしていた時に、同大学のOBである廣川氏が体調を崩し同大学の大学病院に入院された時に熱心に誘いを受けて新潟産業大学へ。2017年から水球部の監督に就任し、同時に「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎」の下部組織「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎U22(大学生男子)」の監督を経て、2024年に強化部長に就任。大学で教鞭を執りながら両立させています。

「当クラブは、アマチュアの社会人の団体としてスタートしました。他にもチームがないわけではないので、語弊があるかもしれないですが、ジュニアから社会人までの規模では日本水球界初としてやっています。スタートするに至っては、サッカーや野球のような完全なプロチームというと、競技人口が多く、観客のチケット代とかでも成り立つぐらいの規模になってくるのですが、水球だと一足飛びにはそこまでは行けない。まずは、選手やスタッフは仕事をしながらのアマチュアとして2010年からスタートしています」(佐々木さん)

日本代表を目指す守護神

 ゴールキーパーとして世代別日本代表でも活躍している小椋裕介選手にも話を伺いました。小椋選手は岐阜県大垣市出身で3人兄弟の末っ子。物心がつく前から地元のスイミングスクールに通っていましたが、2人の兄の影響でバスケに傾きかけていました。しかし、東海予選や全国大会のメンバーに入れてもらえるようになり水球一本に。高校生では世代別の日本代表に選ばれました。

「水球は運動量の多いスポーツ。体が動く若い期間にチャレンジしてほしい」と小椋選手

「もともと勝ちたいとか、全国で優勝したいという気持ちがあって水球を続けていたんですけど、日本代表の夢も見るようになって……。筑波大学のスポーツ推薦をいただいて進学し、大学生の世代別代表に選んでいただき本気度が増しました。1年生か2年生ごろから、トップの日本代表の合宿に呼んでいただけるようになりました」(小椋選手)

 在学中はハンガリーやスペインでもプレーした小椋選手。卒業後は新潟県内の公立高校で保健体育の非常勤講師をやりながら「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎」で水球を続け、2年目は岐阜県の優秀選手活用事業に就職し、新潟県に住みながら、高校生がインターハイや国スポがある夏の1カ月ぐらいの間、地元の大垣に戻って高校生の指導を行っていました。現在は、新潟県スポーツ協会育成指導者配置事業指導者として同クラブに派遣されています。

選手に伝えたい3つのこと

厳しい状況でも集まる選手

 小椋選手をはじめ、メンバーはメインスポンサーのブルボンや地元企業などで日中はフルタイムで仕事をして、夜の8時から10時まで練習。土日には試合や、地域のイベントなどに参加しています。

「午前中だけ働いて午後は練習という社会人チームはよくあると思います。だけど、フルタイムで働きながらやっているスポーツ選手はなかなかいない。そんな厳しい状況のなかでも、これだけ優秀な選手が、いろんな地方から集まって活動している。それだけの魅力がここにはあります」(小椋選手)

 小椋選手は中学時代、所属するチームに「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎」の選手が指導に来たことがあり、当時は半分以上が日本代表選手だったことから「こんなすごい人たちが集まるチームがあるんだ」とそれ以来、意識をしていたそうです。水球界では“ブルボン”といえば、「ウォーターポロクラブ柏崎」というのは国内では浸透しており、海外の水球クラブからも、日本の水球と言えば“ブルボン”の名前が出るほどです。

 佐々木さんは、「ブルボンウォーターポロクラブ柏崎」の魅力を知るうえで3つのポイントを選手に伝えたいと言います。

「一つ目が、水球をやるにも先人がいて、いろんな歴史の上に今がある。ここ柏崎には1962年から水球をプレーし、普及させたい人がいて、それを続けてきたから今がある。その歴史のなかで、2010年にブルボンウォータークラブ柏崎として立ち上がった時から最先端のことをやってきている。そんな挑戦的なことをし続けている地域、柏崎から日本の水球界に有益な取り組みを提案できる場所であること。

 二つ目は、クラブでは選手の練習環境を整えたり、日頃の待遇、お金、時間、労力、そういったところを少しでも水球に投資できるように改善していくことを考えている。そのためには、チームみんなで現状に満足せずに、少しずつ歩を進めていくこと。水球選手の価値を上げるには、水球の文化をより作っていくってことが大事で、今の選手たちには自分の待遇を考えながら、そういった文化の定着に第一線で貢献してほしい。

 最後の三つ目は、お金はあって損はないけれども、健康と人望をどこまで作れるかが人生をより豊かにする。ここ柏崎は四季に恵まれ、自然を堪能でき、そしてそれを囲むいろんな方々と交流をする、精神、身体、社会的にも健康であり続けられる要素が揃っている。そして、“水球のまち”として国内外いろんな人と繋がり、水球以外の一般企業の方、市民の方とも繋がれる。柏崎だからこそ、それは得られるものとして選手には伝えたい」(佐々木さん)

“水球のまち”と四季を感じる柏崎

嬉しいと感じるもう一つの瞬間

 選手にとって試合で活躍し、勝利する瞬間は最高の喜び。しかし、ここでは試合以外でも嬉しい瞬間があると小椋選手は言います。

「町で水球の話をすると『ブルボンですよね』と言ってくれたり、オリンピックにここ3大会連続で出て、テレビで取り上げていただいたり。チームの活動で、柏崎市内の小学校で体育の授業の時間をもらって水球指導を行っていますが、そこで小さな子どもたちや年配の方からも、『水球頑張ってください』とか、『かっこいいですね』とか言ってもらえるのは、すごくありがたいし嬉しいです」(小椋選手)

小学校での水球指導をはじめ、地域イベントの参加など、地域に根ざした活動も積極的に行う

 佐々木さんは柏崎に移住して、それまで知らなかった魅力を感じたそうです。

「今、家族は娘2人も含めて新潟に住んでいます。関東の子どもがいる友だちと話をしていると、例えば海で泳いだことない、雪遊びをしたことがないとか、そういった話を聞く傍らも、夏は海、冬はゲレンデと家族全員心の底から楽しんでいる。移住するまで知らなかったのは、新潟県はチューリップの切り花出荷量が日本一で、春になるとチューリップが咲き誇る。そういったところにも四季を感じました」(佐々木さん)

今しかできないこと

 大学卒業後、水球を続けたくても「お金にならないから」と諦める選手も多いようです。しかし、小椋選手は、「今しかできないことをやったほうがいい」と言います。

「水球はスポーツの中でもかなり運動量の多いスポーツ。一生をかけてできるスポーツではないと思う。大きく言えば体が動く時にやれるなら、長い人生、そのうちの5年とかなら、今しかできないことをもっとやった方がいいんじゃないかなと僕は思います。

 どのスポーツにおいても地元を大事にしていると思うのですが、これだけ市の名前をしっかり使って、市全体の人が応援してくれるところは本当に少ないと思う。そういうなかなかない環境でできるのも経験の一つとしてすごく貴重だと思うので、活動してくれる人がいればぜひ一緒にやりたい」(小椋選手)

競技と仕事を両立しながら“水球のまち”から日本の水球を変えようと挑戦を続ける選手たち

 日本の水球を変えたいと考えている人に、佐々木さんもエールを送ります。

「歴史ある土地で、まだ挑戦し続けていて、日本の水球を柏崎から変えようとしているような人たちが集まっている。それを支えるだけの歴史と土壌がここにあります」(佐々木さん)

 市民が、企業が、選手を応援する“水球のまち”柏崎で、フルタイムの仕事をしながら水球に打ち込む選手たち。 過酷な競技ゆえ、長くは続けられないと分かっていても理想の環境でチャレンジを続け、かけがえのない人脈を広げる選手たちは、今日も日本の水球界の未来のためにプレーを続けています。

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