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小1の壁は「学力」で越えられない? 教育のプロが断言「助けて」と言える子が折れない理由 

コクリコ

小1の壁は「学力」で越えられない? 教育のプロが断言「助けて」と言える子が折れない理由 

入学準備の総仕上げは「学力」より「親子関係」!教育コンサルタント松嶋有香さんが説く、小学校という新しい環境に飛び込む子どもの心を守る「安全基地」の作り方。SOSを逃さない聞き方のコツや、自立を支えるスキンシップの大切さを解説します。

【▶画像】本上まなみ「『助けて』『できない』が言えない子どもだった」

我が子が「学校でうまくやっていける?」と不安になっている方にこそ読んでほしい、「ほんとうの入学準備」。これまでの連載では、外遊びや読書、生活習慣についてお伝えしてきましたが、教育コンサルタント・松嶋有香さんは、すべての土台となるのは「親子の信頼関係」だと強調します。全7回の締めくくりは、入学準備の最重要項目、子どもの心を守り自立を支える「安全基地」の作り方。新しい環境へ一歩踏み出すわが子のために、親ができる本当の準備を考えます。

子どもの信頼を得るたった一つの心がけとは?

──入学準備でもっとも大切なことは何ですか?

松嶋:入学準備でもっとも大切なのは、家庭を安全基地にすることです。

子どもにとって「困ったらまず家。家は戻ってこられる場所」であること。親が「話せばどうにかなる」と思える信頼の存在であること。これが何より大事です。

なぜなら、人は一人では生きていけないからです。外の世界でうまくいかない日もあります。思い通りにいかないこともある。そのときに戻れる場所がある子は、また立ち上がれます。私はそれを、入学準備の中心に置いています。

──具体的に、どんなことをすればよいのでしょうか?

松嶋:忙しくても短くてもいいので、子どもの目を見て返事をすることです。「へえ、そうだったんだ」「大変だったね」でもOK。ちゃんと聞いて、向き合いましょう。

大人から見たら小さな出来事かと思うかもしれませんが、友だちに冷たくされたり、先生に怒られたりすることは、子どもにとって大事件です。それを「なんだ、そんなことか」と流されると、次から相談しずらくなります。だから、相談の内容が小さく感じても、親が受け止める価値があると思ってください。

「親は、自分が話せば助けてくれる」と思える経験の積み重ねが、信頼関係を太くします。

大人は、子どもから話しかけられたときは作業を止めて、スマホを置いて、ちゃんと目を見て答えましょう。子ども視点で考えると、大好きなママ・パパに話しかけたのに、目も合わせてもらえない。手も止めてもらえない。そうされたら、嫌ですよね。

安全基地であるためには、子どもにとって家庭が「なんでも相談できる場」にすることが大切です。

松嶋有香さん近影 撮影:講談社写真映像部

「今日どうだった?」はNG? 子どもの本音を引き出す会話のコツ

松嶋:子どもの話を聞こうとすると、親はつい「今日は学校どうだった?」と聞きたくなります。でも、就学前の子にとって「どうだった?」は難しすぎることがあります。何をどう答えたらいいか分からない。答えられない自分を恥ずかしく感じることもあります。

質問は、答えやすいように聞くのがコツです。「何して遊んだの?」「誰と一緒に行ったの?」「今日はどんなことがいちばん楽しかった?」など、具体的に質問しましょう。

選択肢を出すのも答えやすくなるポイントです。「滑り台とブランコ、どっちがおもしろかった?」。そんなふうに、子どもが言葉にしやすい形に整えてあげると、会話が続きます。

大事なのは、情報を聞き出すことではなく、子どもが「話してもいいんだ」「聞いてもらえるんだ」と感じることです。

失敗して帰ってきた日は子どもを抱きしめて

──子どもが友達とトラブルを起こして帰ってきたとき、つい「あなたも悪かったんじゃないの?」と正論をぶつけてしまい、子どもをさらに落ちこませてしまった経験があります。どう声かけをすればよいでしょうか?

松嶋:まずは、「おかえり!」と言って、ぎゅっと抱きしめてあげてほしいです。外での緊張を解きほぐすのは、理屈ではなく「肌のぬくもり」です。「なにかあった?」と聞く前に、まずはスキンシップでストレスを緩和してあげてください。

そのうえで、子どもの言葉に寄り添いましょう。子どもが「僕はこうしたかったんだけど、こうなったんだ」と話したら、「そうしたかったんだよね、でも我慢して偉かったね」と伝えましょう。

反対にやってはいけないのが、「こうした方がよかったんじゃないの?」と上から目線で諭すことです。

例えば大人の友だちに対して、失敗した話を聞いたときに、いきなり正論で切り返さないですよね。まずは、その人の気持ちを受け止める。子どもにも同じようにしてほしいと思います。相手が子どもであっても、一人の人間として対応する。これが信頼を深めます。

──日常の中での子どもとの向き合い方が、大切だということですね。子どもとの信頼関係を深めるために、ほかに親ができることはありますか?

松嶋:とにかく「スキンシップ」を増やすことです。

入学準備というと、「もう1年生だから親から離れるのよ」と自立を促したくなるかもしれません。でも私は逆だと思っています。違う環境で疲れて帰ってくるからこそ、もっとスキンシップを多くしてあげないといけません。

卒園から入学までの間は不安定です。大人だって環境が変わったら不安定になりますよね。そういうときに温かい家や、ママ・パパの笑顔があると、安心できます。子どもが外から家に帰ったら緊張をほどくように、迎えて、抱きしめる。寝る前は安心させるような言葉かけをして、一緒に隣で寝てしまいましょう。

「ありがとう」「ごめんなさい」よりも重要なサインは?

──「学校」という新しい社会で生きていくために必要な「力」とはなんでしょうか?

松嶋:あいさつはもちろん大切ですが、私がもっとも重視しているのは、「ありがとう」「ごめんなさい」、そして「たすけて」と言える力です。特に「たすけて」は重要です。

小学校では思い通りにいかないこと、一人では解決できないことがたくさん起きます。そんな時に「先生、助けて」「ママ・パパ助けて」と言える子は折れることなく成長していけます。

そのために大切なのが、家庭の中で「ありがとう」「ごめんなさい」が自然に行き交うこと。

そして、子どもが困ったときには「助けて」と言えるし、親も困ったら「助けて」と言える環境を家庭でつくりましょう。家族の中で頼ることが当たり前になると、外の世界で困ったときも、子どもは抱え込みにくくなります。

「困ってもママ・パパに話せばどうにかなる」と思ってもらうことが重要です。

入学準備の正解は子どもを信じること

──最後に、入学前のお子さんを育てている親御さんたちへ、メッセージをお願いします。

松嶋:結局のところ、家庭を安全基地にするためには、お母さん・お父さん自身に「ゆとり」があることが一番大切です。親の笑顔は、子どもにとって最高の安心材料。だからこそ、親も自分に余裕を。趣味や推し活でもいい。自分を大切にする姿を子どもに見せる。人は一人ひとり尊重されるべきだと、言葉ではなく背中で伝える。これも安全基地づくりの一部です。

入学準備として取り組みたいことは、先取り学習をさせることではありません。「この子はだいじょうぶ」と信じること。そして、何かあったら笑顔で迎え入れる場所を作ること。 それさえできていれば、小学校生活は最高に楽しい冒険になります。

どうか、この愛おしい「入学前」の時間を、お子さんと一緒にたっぷり楽しんでくださいね。

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