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【浜松市美術館の企画展「いま、私は現代アートと出会う 草間彌生、奈良美智、村上隆、アンディ・ウォーホル、バンクシー…」】コレクターのN氏を想像する楽しさ。網羅的な作品群にちょっとだけできた凸凹がいい

アットエス

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は浜松市中央区の浜松市美術館で8月30日まで開催中の「いま、私は現代アートと出会う 草間彌生、奈良美智、村上隆、アンディ・ウォーホル、バンクシー…」展を題材に。
(文・写真=高度専門記者兼論説委員・橋爪充)

7月24~26日に新潟県で開かれたフジロックフェスティバルの配信中継を連日見ていた。最終日26日夜に会場内最大のグリーンステージに登場したのは英国の音楽ユニット「マッシヴ・アタック」。ステージ背後に次々映し出される強烈な映像と、自宅のテレビ受像機の前でも感じ取れた音の「圧」に身震いした。

マッシヴ・アタックを巡っては、メンバーの中に正体不明のアーティスト、バンクシーが含まれているのではないかといううわさがある。英ブリストル出身という共通点が、うわさの信憑性を高めている。今回も、フジロック開幕の数日前、会場内の苗場プリンスホテルの壁面にバンクシーの作品が出現していた。果たして、メンバーにバンクシーがいるのかどうか。

こんな話を持ち出すのは、浜松市美術館の「いま、私は現代アートと出会う」展の出品作を集めたコレクターの名前もまた、マスキングされているからだ。「N」とだけ明かされている。図録の冒頭挨拶も「コレクターのN様」と名前を挙げ、謝辞を述べている。

「どこかの誰か」を想像する楽しさ。バンクシー、N氏はどんな人なのか。「いま、私は現代アートと出会う」展からは、1960年代以降の現代アートの主要ムーブメントを生真面目にたどるコレクターの姿が浮かび上がる。筆者は今、N氏に強い親近感を覚えている。

「網羅性」が一つのキーワードだろう。今回展で作品を見ることのできるアーティストの名前を挙げる。

Alain Biltereyst / Andreas Gursky / Andy Warhol / Anish Kapoor / Anselm Kiefer / Banksy / Cy Twombly / Damien Hirst / David Hockney / Frank Stella / Jasper Johns / Jeff Koons / Joan Mitchell / Julian Opie / Kathleen Jacobs / Nam June Paik / Olafur Eliasson / Roy Lichtenstein / Xavier Veilhan / イケムラレイコ / 石田徹也 / 植田正治 / 大竹伸朗 / 香月美菜 / 加藤泉 / 河原温 / 草間彌生 / 小林孝亘 / 塩田千春 / 白髪一雄 / 菅木志雄 / 高松次郎 / 田中敦子 / 中西夏之 / 奈良美智 / 村上隆 / 元永定正 / 吉原治良 / 李禹煥

石田徹也『無題(2)』


現代美術の教科書にそのまま出てきそうな顔ぶれである。本県ゆかりと言えば、すでに亡くなっている焼津市出身の石田徹也。菅木志雄は今も伊東市にお住まいではないだろうか。静岡新聞は恥ずかしいけれど、菅のことをこれまできちんと扱ったことがない。県内在住の偉大な功績を残したアーティストなのに、これはいけない。近いうちに取材の機会を作りたい。

菅木志雄『周界支因』


さて、展示作品だが。網羅的ではあるがちょっとした出っ張り、偏りもある。冒頭から草間彌生が六つ連続するのは、現代アートに詳しくない人が来ても導入として分かりやすいからだろう。

個人的にうれしかったのは「具体美術協会」への肩入れだ。東西の有名作家の75作品の内、4作品が該当する。閉じ込められた宇宙をイメージさせる田中敦子、色彩の不思議な調和を感じる元永定正の作品が特にいい。吉原治良は深淵な謎を投げてよこしているし、白髪一雄の絵肌はやっぱりカッコいい。

白髪一雄『Ryusen』
元永定正『作品』


一つ一つの作品、作家について、自分の記憶をたどるのが楽しい。例えばアニッシュ・カプーアの『Eclipse』と、かつて静岡県立美術館、金沢21世紀美術館で見た「おわん」型の作品を、頭の中で並べてみる。李禹煥の作品を、国立新美術館や神奈川県立近代美術館、岐阜県のせきがはら人間村で見た作品群と重ね合わせる。石田徹也の『無題(2)』は、やっぱり静岡県立美術館の収蔵作と地続きであるような気がする。

N氏のコレクションは全体で500点以上あるようだから、75点の絞り込みは、キュレーターの意志の現れとも言える。今回展の最大の魅力は、網羅的であること、ちょっとだけ凸凹があることが、うまく並び立っている様子ではないだろうか。

<DATA>
■浜松市美術館「いま、私は現代アートと出会う 草間彌生、奈良美智、村上隆、アンディ・ウォーホル、バンクシー…」
住所:浜松市中央区松城町100-1
開館時間:午前9時半~午後5時
休館日:毎週月曜(祝日の場合はその翌日)※8月は無休
観覧料(当日):一般1600円、高校・大学生と専門学校生と70歳以上800円。小・中学生無料
会期:8月30日(日)ま

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