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傑作!カンヌ国際映画祭 脚本賞受賞濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』

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濱口竜介監督、村上春樹原作『ドライブ・マイ・カー』

濱口竜介監督、村上春樹原作、主演・西島秀俊、「ドライブ・マイ・カー」。

”この映画、傑作です”

たとえカンヌ国際映画祭でパルムドールを獲らずとも(脚本賞他、全4賞を受賞)傑作であることに違いはありません。

濱口竜介監督は、商業デビュー作『寝ても覚めても』に続き2作目にしてなんという彼方に到達したのでしょう。すでに巨匠の風格さえ感じます。

上映時間179分、精密に構成された脚本の凄さ

昨年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した黒沢清監督の『スパイの妻<劇場版>』で共同脚本を務めた濱口監督が自身の新作に選んだのは、村上春樹の短編集『女のいない男たち』の中に収録されている「ドライブ・マイ・カー」という物語。

また同じ短編集の中からもう2つの短編(「シェエラザード」「木野」)の要素を加えた3つの物語と、映画の冒頭差し込まれるサミュエル・ベケットの「ゴドーを待ちながら」、そして、映画の中で基調和音のようにとり上げられるアントン・チェーホフの戯曲「ワーニャ伯父さん」、この5つの物語を濱口監督と共同脚本の大江崇允によって、一旦、バラバラに分解されたパーツが精密に、時には大胆に組み替えられ物語が展開されていきます。

なんという細部の連なり。深淵な人間の本性、虚と実、無数に湧き上がる感情の襞が複雑に絡まった糸を解きほどくようにあらゆる解釈をすり抜けながら映画の終着点を目指します。

妻との記憶が刻まれた車。聴けなかった秘密。孤独な二人が辿りつく場所──


舞台俳優であり演出家の家福(かふく)は、愛する妻の音(おと)と満ち足りた日々を送っていた。しかし、音は秘密を残して突然この世からいなくなってしまう――。

2年後、広島での演劇祭に愛車で向かった家福は、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーのみさきと出会う。さらに、かつて音から紹介された俳優・高槻の姿をオーディションで見つけるが…。

人を愛する痛みと尊さ、最愛の妻を失った男が葛藤の果てに辿りつく先とは――。

実力派俳優陣と海外キャストが9つの言語で紡ぐ人間ドラマ

主演は、日本映画界に欠かせない名優、西島秀俊。

西島秀俊/家福悠介

行き場のない喪失を抱えながらも、希望へと一歩を踏み出していく心の機微を見事に体現した。ドライバーのみさきには、三浦透子。

三浦透子/渡利みさき

物語を大きく動かすキーパーソンの高槻に岡田将生。

岡田将生/高槻耕史

家福の妻・音を霧島れいかが演じます。

霧島れいか/家福音

また、韓国・台湾・フィリピン・インドネシア・ドイツ・マレーシアからオーディションで選ばれた海外キャストも出演。日本人キャストとの見事なアンサンブルを見せ、劇中の多言語劇を中心に9つの言語を交えて展開します。

圧巻のラストシーン、ショットの撮れる監督

映画批評家・蓮實重彦の最近の新書「見るレッスン 映画史特別講義」(光文社新書)の中で「ショットの撮れる監督」として現役日本人映画監督の筆頭格に挙げられていた濱口竜介監督。

『ドライブ・マイ・カー』では、撮影監督・四宮秀俊による緊張感を携えた画面が立ちあがります。
特に韓国での移動撮影シーンは、息を飲む美しい画面です。
映画最後のプロット、圧巻のラスト20分は観る者の魂を震わせます。
内省の果てにたどり着いたものだけが訪れる惑星のような静かな場所。みずみずしくすんだ世界の美しさ。

『ドライブ・マイ・カー』は、映画とは、ここまでの高みにたどり着くことができるのかと、高原の彼方に一人立つ濱口竜介監督の圧倒的勝利を確信する上映時間179分におよぶ傑作です。

©2021 『ドライブ・マイ・カー』製作委員会

監督・脚本 濱口竜介 プロフィール

※1978年12月16日、神奈川県生まれ。08年、東京藝術大学大学院映像研究科の修了制作『PASSION』がサン・セバスチャン国際映画祭や東京フィルメックスに出品され高い評価を得る。その後も日韓共同制作『THE DEPTHS』(10)が東京フィルメックスに出品、東日本大震災の被害者へのインタヴューから成る『なみのおと』、『なみのこえ』、東北地方の民話の記録『うたうひと』(11~13/共同監督:酒井耕)、4時間を超える長編『親密さ』(12)、染谷将太を主演に迎えた『不気味なものの肌に触れる』(13)を監督。15年、映像ワークショップに参加した演技未経験の女性4人を主演に起用した5時間17分の長編『ハッピーアワー』が、ロカルノ、ナント、シンガポールほか国際映画祭で主要賞を受賞。さらには、商業映画デビュー作にしてカンヌ国際映画祭コンペティション部門に選出された『寝ても覚めても』(18)、ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員大賞)受賞という快挙を成し遂げた短編集『偶然と想像』(21)、脚本を手掛けた黒沢清監督作『スパイの妻〈劇場版〉』(20)がヴェネチア国際映画祭銀獅子賞に輝くなど、これまで国際的な舞台でその名を轟かせてきた。商業長編映画2作目となる『ドライブ・マイ・カー』(21)は、原作に惚れ込み自ら映画化を熱望、脚本も手掛ける意欲作。

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