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祝・放送十襲年! 今石洋之と中島かずきが振り返るTVアニメ『キルラキル』②

Febri

TOPICS2024.05.16 │ 18:00

祝・放送十襲年! 今石洋之と中島かずきが振り返る


TVアニメ『キルラキル』②

アニメスタジオ・TRIGGERの記念すべきTVアニメシリーズ第1作でもある『キルラキル』。放送開始から十襲(周)年を記念してお届けする対談記事の2回目では、今石監督が選んだベストエピソードをご紹介。ドラマ作りに対するこだわりなど、存分に語ってもらった。

取材・文/宮 昌太朗

キルラキル中島かずき今石洋之

第十九話には「これまでの価値観が逆転する」快感がある(今石)

――今回はおふたりに、それぞれベストエピソードを3つずつ挙げてもらいました。まずは、今石監督からお願いします。
今石 真面目なことを言ってしまうと、第一話と最終話(第二十四話)が好きなんです(笑)。この2本は、自分が手を入れているというのもあるんですけど、やりたいことを詰め込んだのは間違いなくて。あとはシーンでいうと第二十話(「とおく群衆を離れて」)のラスト、鮮血を着た皐月が空母の甲板に上がってくるところが好きなんですよね。第十五話を越えたあたりから「週刊中島かずき」がさらに加熱しているというか(笑)、どんな引きで今週は終わるんだ!?みたいな感じがあって。その流れの中で、第十九話(「たどりついたらいつも雨ふり」)が流子の闇落ちで終わったあと、どうなるのかと思ったら、今度は流子を救うために皐月が流子の服を着て出てくる、という。

――驚きの展開ですよね。
今石 キャラクターの立場が入れ替わるとか、これまでの価値観が逆転するようなカタルシス。僕が物語を作っているときの快感は、まさにそういうところにあるんです。その瞬間のために、いろいろと積み重ねてきたというか。しかも、そういう価値観の逆転を「鮮血を着た皐月」という画で、すべて説明しきっている。キャラクターがセリフを言う前に見ている人が状態を理解して、そのあとでセリフが入ってくることで「よしッ!」となる。そういう快感があるんです。

――先ほど、お気に入りのエピソードとして第一話が挙がりましたが、第一話に関して、おふたりで「こういうふうにしよう」みたいな打ち合わせはしたのでしょうか?
中島 しましたね。ただ、蟇郡(がまごおり)がデカくなるのは意外でした。「このアニメのリアリティラインはどこにあるんだ?」と(笑)。あそこはビックリしました。

――脚本には書かれていないんですね。
今石 デカくなるとは書かれていないですね。
中島 デカくなるなんて、ひと言も書いていないです。しかも第八話(「俺の涙は俺がふく」)の回想シーンでは、蟇郡が1カットごとにどんどん大きくなっていくじゃないですか。最後に皐月と会っているカットなんて、キングコングと女の子みたいになっていて。
今石 ああいうのがやりたくてしょうがないんですよ。
中島 そうそう。今石さんにしてみれば「気迫に満ちた蟇郡は、傍から見るとそういうふうに見える」ということなんだろうけど、でも普通はそんなふうに思わないよね(笑)。

今石 そこはわざとズラしているというか、ツッコミ待ちというか(笑)。「これはボケなんですよ」というところではあるんですけど、要するに昭和のスタイル――それこそ『北斗の拳』とかの再現みたいなところにこだわっていたんです。
中島 あるいは、ちばてつやさんの『ハリスの旋風』。モブシーンに番長が出てくるんですけど、本当にひとりだけ頭身が違うんですよ。それがとてもおかしくて、今石さんにも見せたと思う。
今石 ありましたね。要するに「威圧感を表現するために大きく描く」の延長線上にある表現なんですけど、「こういう表現がアリな作品なんだ」というところをシリーズの最初にカマしたかったんです。やっぱりアニメーターも演出家も、リアルに描くほうが楽なんですよ。普通にやると、どんどんリアルになっていく。ただ、それをあとから壊すのはとても大変なんです。逆に、最初に「これは、ヘンなものなんですよ」と提示してから、たまにシリアスなことをやると、スーッと自然に見てもらえる。
中島 不良生徒が朝、学校に行って掃除していると、「あいつ、いいヤツじゃん」となる(笑)。
今石 そうそう。で、いつも真面目に掃除しているヤツが、たまにサボると「何やってるんだよ!」となる(笑)。

『天元突破グレンラガン』から一歩進んだものにしたかった(今石)

――あとは最終話(第二十四話)ですね。
今石 第二十四話は、歌を3曲かけられたのがよかったです。劇中でオープニング曲をかけるというのは、定番中の定番の演出ではあるんですけど、でも同時にTVシリーズの醍醐味のひとつだとも思うんです。で、第二十四話では前期のオープニング曲と後期のオープニング曲、さらには前期のエンディング曲まで全部かける。30分の枠でそこまでやるバカは、きっと他にいないだろうっていう(笑)。そういう意味でも『天元突破グレンラガン』から、さらに一歩進んだものにしたかった、というのはあります。

――どこで曲をかけるかは、コンテ作業のときに考えるのでしょうか?
今石 そうですね。第二十四話だと、前半と後半にそれぞれ逆転する場面があるんですけど、そこは主題歌をかけるのにちょうどいいタイミングじゃないですか。いつもなら戦闘シーンの曲をかけるところで、主題歌をかけるとフィナーレ感が出る、という。

――たしかに大団円な感じがありますね。
今石 あと最終回は、ずっと戦闘しているのが好きなんですよ。
中島 あはは。
今石 最終回って、だいたいエピローグになるじゃないですか(笑)。戦いが終わったあと、半パートくらいはエピローグ、みたいなパターンが定番だと思うんですけど、僕としてはなるべくギリギリまで戦っていてくれないかなという願望があって。ドラマで見せる作品ならそういう必要はないんですけど、アクションアニメだったら――とくにロボットアニメの場合は、戦闘シーンが作品のいちばんの売りなはずで。だったら戦闘シーンの中でドラマを回収したうえで、完結するのがいちばん美しいよねと思っているんです。
中島 そんなこと言っていましたっけ? 俺の作風なのかと思ってた(笑)。「立ち止まって話をするのはやめてください」というのは、『天元突破グレンラガン』の初期の頃に言われたんです。だから、そこはずっと気にしていたんですけど「最終話のギリギリまで戦闘をさせたい」というのは今、初めて聞いた気がする。
今石 わざわざ言うまでもなかった、ということなのかもしれない(笑)。

中島 僕の脚本は、だいたいいつもそうなんですよ。劇団☆新感線のときもそうで、生身の役者さんたちに怒られるんです。戦いの最中、一旦離れたタイミングでセリフをばーっとしゃべらせるんですけど「中島さん、人間は息をするんですからね」と(笑)。一旦離れたときは息をする時間であって、しゃべる時間じゃないんだっていう。
今石 あはは。
中島 それを聞いて「はい」ってね。でも、アニメならいくらでも書ける。
今石 まあ、そうすると今度はアニメーターが息切れをするんですけど(笑)。

今石洋之いまいしひろゆき 1971年生まれ、東京都出身。大学卒業後、ガイナックスに入社し、アニメーターとして活躍。2004年に公開された劇場作品『DEAD LEAVES』で初監督を務め、その後も『天元突破グレンラガン』『プロメア』『サイバーパンク: エッジランナーズ』など、数多くの話題作を手がける。中島かずきなかしまかずき 1959年生まれ、福岡県出身。2010年まで編集者として働くかたわら、劇団☆新感線の座付作家としても活躍。2004年に『Re:キューティーハニー』で初めてアニメの脚本を手がける。最近の主な参加作に『BNA ビー・エヌ・エー』『バック・アロウ』など。後編(③)へ続く作品概要

『天元突破グレンラガン 対 キルラキル 展』
2024年夏に開催決定!!

©TRIGGER・中島かずき/キルラキル製作委員会

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