集団になじめないのは「集団圧力」のプレッシャーに弱いからかも?「私的自己意識」が優位な人の心のメカニズムとは【心の不調がみるみるよくなる本】
集団になじめないとき、どうすればいい?
ときに「集団になじめない」と感じることがあるという人は多いでしょう。その理由を知ることで、自分なりの解決策が見つかるかもしれません。
集団の「同調圧力」に対する抵抗感
会社、学校、地域、趣味のサークル、パーティーなど、さまざまな集団の中にいるとき、「どうもなじめない」「浮いている気がする」「早く一人になりたい」などと感じることはないでしょうか。「私的自己意識」が優位な人には、そのような傾向があるようです。逆に集団の中でまったく違和感を覚えない「公的自己意識」が優位な人もいます。前章で紹介した「クロニンジャーの7つの因子」のうち、後天的な因子である「自己志向」が前者、「協調性」が後者にあたります。
どんな規模の集団にも、「集団規範」と呼ばれる有形無形のルールがあります。すべてのメンバーは、この規範に沿った行動を求められるので、自分の欲求を抑えたり、窮屈に感じたりすることに、「不快=なじめない」という意識を持つのです。
この集団規範に沿った行動を、「同調行動」といいます。70年ほど前に、アメリカの心理学者アッシュが、集団について行ったユニークな実験があります(書籍90ページ)。実験の結果のとおり、個人では正答率99%の問いに対して、集団の中では、「個人主義」とされる欧米人でさえ、7割以上の人が別の回答に「同調」していたのです。それほど、人は「集団圧力」のプレッシャーに弱いのです。
アッシュの同調(集団圧力)実験
アッシュは、以下のような2枚のカードを用いて、被験者が7人のサクラ(実験の協力者)に惑わされずに線の長さを答えられるかどうかを調べる実験を行いました。
この実験結果は、7人のサクラの答えが集団規範となり、集団圧力がかかったためと考えられます。
集団の持つ「人格」と付き合わない
例えば、ランダムに分けられたA組とB組があるとします。自分が所属する組を「内集団」、もう一方を「外集団」と呼びます。本来、2つの組には優劣がないのですが、多くの実験や研究の結果、多くの人は、「内集団」が「外集団」より優れていると評価することがわかっています。これは「内集団バイアス」と呼ばれ、集団への所属意識から生まれる心理です。
このとき人は、本来個人の集合である「集団」に、あたかもひとつの「人格」があるかのように感じています。同時に、自分の所属する集団の「人格」とうまく付き合いたい、悪い評価を受けたくないと考えてしまうのです。
この「人格」は、自分(個人)の正しい判断を曲げることを圧力のように要求してくる(ように感じられる)こともありますから、本当は不快に感じても当然です。しかし、社会性を発展させることで生き延びてきた私たち人間は、本能的に「集団の意思」に従おうと考えてしまうのです。
とはいえ、まったく集団に所属せずに生活することは不可能です。「なじめない」人は、メンバーの一人でもいいので、個人的に仲よくなるようにするとよいでしょう。たとえ少数でも、打ち解けて話せる仲間がいれば不安やストレスが減るうえ、個人との会話や関係の中で、自然と集団内での振る舞いや対処を学ぶことができます。
CHECK!
集団になじめないと感じたときは、その中の一人でもよいので個人的に仲のよい人をつくると、自然となじめるようになる
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修