観光と防災と~八丈島の取り組み
政治も、経済も、スポーツも、生活情報も。新聞を読まなくても今日のニュースがわかる、首都圏で一番聴かれている朝の情報番組。
今日は、東京の島しょ部、八丈町が観光客を増やすべく進めている取り組みについてのお話。
円安で海外に行きにくい昨今、八丈島は注目されている、と聞きますが・・・。
できる限り空振りにならない、ホエールウォッチング!
そんな中、何を始めようとしているのか。東京都八丈町、企画財政課企画情報係の佐藤泰弘さんのお話です。
八丈町企画財政課企画情報係 佐藤泰弘さん
「八丈島の特徴として、陸からもクジラの潮を吹く風景ですとか、ジャンプをするっていう行動も見れますので、ほかの地域に比べて大きなポイントかなと思っていまして、特に八丈島って火山の島ですので、各地に温泉があるんですね。で、温泉に入りながらも、『あ、クジラが今、潮吹いたよ』ということが分かると。こういうようなところが非常に特徴的かなと思っています。
今、八丈島に六ケ所定点カメラが、島の四方を回るように設置をしておりますので、できる限り空振りっていう風にならないように、この定点カメラにクジラが映ったと、いう情報を元に『今、この海岸で見れました』という情報を発信していくということを考えてます。
八丈島って夏が観光のハイシーズンということで、冬が少し観光客の数が少ないという状況になっています。こういった中において、ホエールウォッチングが新しい観光の目玉になるんじゃないかということを期待をしているというところになります。」
ホエールウォッチングを冬の観光の目玉に!ということなのです。
八丈島では、10年ほど前からザトウクジラが目撃されるようになり、話題に。
(写真提供:八丈町・八丈島観光協会・東京海洋大学鯨類学研究室)
しかし、クジラが見られます!とお客さんを呼んでも、空振りの人が多かったら良くないですよね・・・。そこで、クジラを見られる精度を上げるためのシステムの開発を始めました。
先月、7月11日から、八丈町は公式の観光アプリを始めたのですが、島内のお店のイベント情報やクーポン券の配布とともに、ここにクジラが来てるよ!という情報を流そうと。
(写真提供:八丈町・八丈島観光協会・東京海洋大学鯨類学研究室)
現在、精度を確認しているところで、一定精度、確実に分かりそうだとなれば、クジラが見られるシーズンの、この冬から運用を始める予定です。(クジラが見られるのは大体11月下旬から4月くらいまで。メインは12月~2月と言われています。)
他の観光地と同じく、コロナ禍の影響は大きく、そこからの巻き返しもあって、夏だけじゃない新しい観光の目玉で、経済を安定させたいということでした。
津波監視目的の定点カメラを使っています!
しかし、今回の取材のタイミングで出されたのが、南海トラフ地震臨時情報。海が魅力の観光地、八丈島としては大きな懸念材料ですね、と聞くと、このクジラ発見システムの仕組みとともに、こんなお話をしてくださいました。再び佐藤さんのお話です。
八丈町企画財政課企画情報係 佐藤泰弘さん
「これですね、元々が津波監視目的ということで、常時定点カメラから映像データを取得してるんですけれども、これの二次利用という観点で、その定点カメラからの映像を元に、人の目ではなくてAIを使って、クジラが来遊してるかどうかっていうことを判別するシステムというのを、今、構築しようとして動いているというところになります。
(南海トラフ地震臨時情報)本当にその通りで、逆にあの、だからこそでもあるんですけれど、今回定点カメラっていう話をしましたけれども、これは津波監視目的で導入しているので、防災の観点からも、きちんと整備をしているところが、まず八丈島の特徴かなと思っていまして、これの二次利用的に、今回のクジラのAIというのをやってるという形になりますので、観光客の方が、もし来島されているタイミングで津波という話になったとしてもですね、監視カメラを通じて逃げ遅れがないかとか、こういったものをきちんと確認できるような態勢にはなってるかなと思います。」
しっかり監視できるカメラがあるからこそ、なんですね。
島に六ケ所あるカメラから、常時、津波監視のための映像データが取られています。
(画像提供:八丈島観光協会ホームページ)
今回は、そのカメラ映像をホエールウォッチングの精度アップのために、二次利用しますが、本来は防災目的。その充実ぶりも併せて知らせることで安心して遊びに来てほしいと。
インバウンド客も惹かれる魅力あり!もっと発信したい!!
そして冬の観光客とともに、もっと来てほしいと期待するのが海外からの観光客。
海外からの観光客は、夏休みやお盆休みといった決まった時期だけじゃない来島が期待できますから、大きいですよね。
その海外からの観光客について。3年前にリトアニアから国際交流員として八丈島に移り住み、去年の8月までは初の外国籍のミス八丈島として、海外に向けて八丈島の魅力を発信してきた、ジュカウスカイテ・アスタさんにお話を聞きました。
八丈島在住 ジュカウスカイテ・アスタさん
「 島に暮らし始めてたら二つのこと、すごく目立ちました。一つ目は自然が豊かなところでした。どこに行っても緑が多くて、山や海もあってすごく楽しかったです。そして二つ目は、人たちですね。みんなが温かくて仲良くしていただいたので、すぐ馴染めました。
今はインバウンド旅行会社で働いてます。やっぱりインバウンドの皆さまは、何回か日本に来たことあって、じゃあもう少し行ったことないところへ行ってみたいという方々もいます。そちらの皆さまに、八丈島は私は毎回勧めてますよ!すごく魅力的なところだと思って。しかし、まだまだ。これは、これから変わっていくかもしれません。
ま、確かに、今、防災無線では『地震が起きる可能性が高まってます』という放送が流れてますけれども、全部は日本語で、ですね。自分が現在、八丈島の消防団に入ってます。消防団、はい。そういった面では、こういうときこそ、活動は出来たらいいな、と思います。」
八丈島からの発信は、現在のところ日本語だけのものが多く、インバウンドの方々には、まだ知られていないことが多い、とアスタさん。しかし、アスタさんが教えると行きたい!となるそうで、ホエールウォッチングも、非常に魅力的なコンテンツだと実感していました。だからこそ、防災無線と共に、ぜひ英語でも発信してほしいと話していました。
八丈町としても、これからを見据えて、今後は先ほどの観光アプリも多言語対応できるようにしていきたい、と話していましたから、アスタさんが言うように、これから、です。
しばらくは、観光の意味でも、防災の意味でも、アスタさんは活躍しそうですね!
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:近堂かおり)