「ありがとう」が飛び交う明るい地域に。「サンクスファーム黒鳥」。
新潟市西区の農業法人「サンクスファーム黒鳥」では、お米と枝豆をメインに、美味しくなるよう思いを込めて作った農産物を消費者へ届けています。Instagramでの発信にも力を入れていて、日々の作業の様子や「サンクスファーム」で働く人の姿を伝えることで、求人応募にも大きな変化があったんだとか。社長の大岩さんに、農業法人の社長として大切にしている思いや今後の目標について聞いてきました。
株式会社サンクスファーム黒鳥
大岩 和正 Kazumasa Oiwa
1990年新潟市西区生まれ。農家の長男として生まれ、農業高校を卒業後、巻の農業大学校で学ぶ。20歳のときに就農。今年春に取締役社長に就任。
農作物はいろんな人とつながる、ひとつのツール。
――そもそも「サンクスファーム」さんって、どういう方たちが集まってできた会社なんですか?
大岩さん:お米の生産組合としてスタートして、4軒の農家が集まってできた組織です。設立したのが今の代表で、今年で10期目です。私は今年の春から取締役になりました。
――どういった経緯で株式会社になったんでしょう?
大岩さん:後継者不足の問題から、株式にして一般雇用をしていこうということになったんです。お米の組織をまるっと会社にして、枝豆も一緒に作るようになりました。
――大岩さんはいつからこちらで勤めているんですか?
大岩さん:20歳のときにここへ入りました。なので14年目ですね。農家の長男に生まれたので、いつかは農業をやらないといけないなって思いが昔からありました。
――ご実家が農家をされていたんですね。
大岩さん:他にやりたいこともなかったので、とりあえず農業高校に入ったんです。行ってみたら「農業ってちょっと面白いかも」って思うようになって。巻にある農業大学校で2年間勉強して、それからここに入りました。家を継ぐっていうよりは、農業で生計を立てたいっていう気持ちが強かったですね。
――農業のどんなところに面白さを感じたんでしょう?
大岩さん:自分で作ったものをただ売るだけじゃなくて、いろんな人に広げられるっていうところですかね。農産物って飲食店で出される料理とか、加工品とか、贈答品とか、いろいろなものに使っていただけるので、いろんな人とつながることができるツールのひとつだなって思って。あとは黒埼茶豆っていうブランドをもっと広めていきたいなっていう思いもありました。
――今はお米と枝豆をメインで作られているんですよね。
大岩さん:そうですね。ただここ4、5年で一般雇用を増やしていて、年間を通じて仕事を作るためにも、ブロッコリーやタマネギを作ったり、今年はサツマイモに挑戦したりしています。雇用のためだけではなくて、新しいことをやっていくことで経営がより良くなるかなって。維持というよりは新しいことにどんどんチャレンジしていきたいんです。
SNSでの発信が求人の応募につながる。
――最近だとInstagramでの発信にも力を入れているみたいですね。
大岩さん:前から私が片手間でやってはいたんですけど、ぜんぜんお客さんに響いていなかったんですよね。それで去年の6月から運用代行を頼んで発信してもらっています。最近はSNSで発信する農家さんも増えてきたと思うんですけど、今まで発信ベタな業界だったなと感じます。
――発信に力を入れたいちばんの目的ってなんだったんでしょう?
大岩さん:求人がいちばんの目的でした。求人票ってA4にバーッと情報が書いてありますけど、それだけだと会社のことって分からないじゃないですか。たとえ見学に来てもらったとしても知ってもらえないと思って。それでInstagramを使って作業内容とか、どういう人が働いているかとか、どういう思いでやっているかを発信したんです。
――実際に求人への応募数は変わりましたか?
大岩さん:問い合わせが0だったところから、半年経った時点で30件になりました。その中で実際に面接した方が5、6人ですかね。
――すごい! それだけ「サンクスファーム」さんの発信が響いたわけですね。
大岩さん:やってよかったなって思います。発信してくれている方は発信のスペシャリストなので、そういう方たちに頼めば、経費はかかりますけど、そのぶん自分の仕事ができますから。「サンクスファーム」って自分たちで何もかもやるっていうよりは、いろんな人とつながって、いろんな人に育ててもらっている会社なんですよ。
――お互いの得意な分野で力を発揮し合って会社を良くしていっているんですね。
大岩さん:そうやってつながった人たちのことを「チームサンクス」って呼んでいるんです。私たちにとってはそのチームに入ってくれることが、もう本当にありがたくて。一緒になって農業を進めていっている感じですね。
――SNSでの発信の効果もあるとは思いますが、それにしても「サンクスファームで働きたい!」と思う人がそこまで多いのはどうしてだと思いますか?
大岩さん:働き方ですかね。そもそも農家って、昔は基本的に休みがなくって。雨が降ったら休みだけど、予報を見て休みのつもりでいたら雨が降らなくて仕事をしないといけなくなるとか。いくら農業が好きでも、さすがに休みは欲しいじゃないですか。ワークライフバランスじゃないですけど、業界的にも働き方を見直さないといけないなって思っていたんです。
――農業が好きなのにつらい、っていう状況はもったいないですよね。
大岩さん:美味しいものを作っている人が陰で超つらい思いをしていて笑顔がないとか、そういう現場っていっぱいあると思うんです。でもそうじゃなくて、美味しいものを作っている最中の思いにも重きを置くことにして、休みを増やすとか、働き方を変えることに力を入れています。
チームサンクスを広げて、「サンクス」が飛び交う明るい地域にしたい。
――ところで「サンクスファーム」って、略して呼ぼうとすると自然と「サンクス」になりますよね。素敵な社名だなって思いました。
大岩さん:そうなんです。仲のいい人たちは「サンクスさん」って呼んでくれるんですよ。それって「ありがとう」じゃないですか。だから、みんな知らぬ間にありがとうを発信して、知らぬ間に感謝を伝えているんですよね。
――なるほど……!
大岩さん:私たちの経営って地域の方から農地を預かって、委託で作業をしてもらって生計を立てているので、基本的にこちらからの「ありがとう」の気持ちがあるんです。経営理念の「Enjoy農業でHappy and Thanks」には、「楽しくやろう」「みんなで幸せになろう」というのと「感謝を大切に」っていう思いがあって。将来的にチームサンクスをもっと増やしていけば、もっとたくさんの「サンクス」が飛び交うようになって、地域が明るくなるんじゃないかなって思っています。
――ちなみに、「サンクスファーム」さんのお野菜やお米ってどちらで購入できるんですか?
大岩さん:県内だと「ピアBandai」の「ピカリ産直市場 お冨さん」がメインですね。あとは「そら野テラス」さんかな。枝豆とかはほとんど県外へ出荷しているので、県内ではちょこちょこと販売しています。
――大岩さんの今後の目標はありますか?
大岩さん:地域農業をしっかり守って、さらには日本の農業を守るために、まずは会社として農業経営をしっかり軌道に乗せるっていうことですかね。「サンクスファーム」から派生した分家というか、フランチャイズ化を考えていて。個人でやってもいいし会社経営をしてもいいし、そうやってチームサンクスが広がっていくと新潟の農業が盛り上がっていく、つながりが増えていく。技術とか経営のことも隠すことなくどんどん出していこうと思っているので、農業界を盛り上げていきたいですね。
サンクスファーム黒鳥
新潟市西区黒鳥4761
TEL:025-211-3207