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『すずめの戸締まり』への批判理由とは?感想・評価を4つのポイントから分析

ciatr[シアター]

『すずめの戸締まり』すずめ

新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』がついに公開されました!早速多くの感想や評価・レビューがSNSや口コミサイトに寄せられ、大きな話題を呼んでいます。

おおむね泣ける傑作だという高評価が続く本作ですが、批判が出ているのも事実。以下では、本作に対する感想を、4つの観点から、賛否それぞれ紹介していきます。

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『すずめの戸締まり』感想はおおむね高評価!

『君の名は。』とどっちが傑作か

新海監督最新作『すずめの戸締まり』の主なテーマは「見捨てられた土地」と「地震」。

日本全国の美しい景色と地震という恐ろしい災害が交互に描かれる、臨場感あふれる展開が高く評価されました。

なかでも新海監督が今回のストーリーを起案するに至ったきっかけ・東日本大震災の描き方は、賛否ともに大きな話題を呼んでいます。

11年が経過し、震災の記憶が薄れかけている2022年現在。傷から立ち直った人がいる一方で、今でも心の奥底にトラウマを抱え、必死に押し殺しながら毎日生きている人も多いはずです。

正面からトラウマと向き合うという挑戦的な描き方をしたことで、一部からは不安の声も上がっているのも事実。しかし心の傷の描き方が丁寧で「あの日を忘れない」という強い想いが感じられると、多くの観客がクライマックスに涙しました。

そのほかにも新海組のさらなる進化を讃える感想で溢れ、原菜乃華ら声優陣の演技や新たな布陣で挑んだ劇伴、映像の美しさもまた高く評価されています。

『すずめの戸締まり』に批判があった理由

映画に寄せられた批判は大きく分けて3パターン。以下ではそれぞれについて解説していきます。

①震災の描き方に「怖い」という声も

1つ目は地震という題材についてです。リアルな描き方が評価された反面、トラウマを煽るという指摘もみられました。事前告知のとおり、本作は地震描写や緊急地震速報の警報音が流れます。

該当シーンで苦痛を感じた人もいて、気軽に鑑賞を薦められないのは厳しいですね。

一部では、地震を人為的に防げる設定や、人柱的な役割が続いていることへの疑問も……。ファンタジーなのは納得の上で、「観ていてキツすぎる」との意見がありました。賛否が割れる設定だとして、そうした事柄を考える良い機会になるかもしれません。

被災者の反応も三者三様

すずめの実家に向かう途中、「この辺てこんなにきれいな場所だったんだな」と言う芹澤の言葉に、すずめが「ここが、きれい?」と反応するのが印象的だったという声もあります。震災から時間が経って、復興したように見えても傷は残り続けており、被災者とそうでない人の見え方は違うのだと感じたと言います。

また一方で、「地震を止める」という、自然災害を人間の力でどうにかできるような設定が受け入れづらかったという声も。

新海誠監督はこれまでも自然災害を題材とした作品が多かった一方で、今回ははっきりと「東日本大震災」という単語は出てこないものの、3.11の日付や、すずめが宮城県に住んでいたことが描かれています。実際に起った災害をSFとして扱ったことに、賛否両論ありました。

③すずめが悪い?行動への賛否

家出やスナックでのアルバイト、育ててくれた叔母への対応など、すずめの行動を疑問視する声も多く上がっています。

また田舎道でヒッチハイクをするなど、かなり無茶なことをしていながら、それらがするするとうまくいってしまいすぎることに疑問や無理やり感を感じた人も多いようです。

原作小説ではすずめの苦しみや苦労がより詳細にシーンごとに描かれているので、小説を合わせて読んでみると少し解決されるかもしれません。

③ストーリーが薄っぺらいと感じる人も

『すずめの戸締まり』は、その重要なテーマの1つに「地震」を掲げていますが、そのストーリーは薄っぺらいと感じた人もいたようです。

本作では主に震災で母を失ったすずめの個人的なトラウマが描かれており、被災後に社会がその傷跡とどのように向き合っていくのかは、まったく描かれていません。震災は個人のトラウマとなるような出来事であることは確かですが、社会全体にも大きな影響を与えます。そうした社会としての向き合い方が描かれていないという意見もあります。

一方で新海誠監督は、2022年12月のpenのインタビューで「想像を超えた大きな出来事が起きた時、人間は神話や説話や昔話など自分の手のひらに乗るサイズにまとめて物語の形にパッケージ化することで、認識可能な状態にして、起きたことの意味を考えるよすがにします。」とコメント。

「人間はそういう行為を繰り返してきたと思うんですね。僕たちが今回の映画でやりたかったのは、そのように現実に起こった出来事を物語として語り直すことでした。」と語っています。

④ファンタジックすぎる舞台

新海誠監督の映画はよく神話モチーフが使われていますが、今作はいつにも増して神話の色が強い仕上がりになっています。そのためそのファンタジックな世界観に、いまいち馴染めなかった人も多くいたようでした。

さらに「ミミズ」や「ダイジン」、「後ろ戸」が何を表しているのかよくわからず、物語を理解しきれなかったという声も。たしかに用語の説明はたいていセリフ1回ずつしかなかったので、映画を一度観るだけだと設定を把握しきるのは難しいかもしれません。

原作小説は293ページもあるので、2時間の映画にするには内容が詰まりすぎていたのかもしれないですね。

評価が気になる4つのポイント

ここからは、『すずめの戸締まり』に対する評価を4つの観点から解説。ストーリー、声優、映像・音楽、批判に分けてみていきましょう!

①ストーリーの泣ける度・笑える度

『すずめの戸締まり』は特に後半部分、『君の名は。』『天気の子』と比べて、全体的に重いストーリーに仕上がりました。

震災で母親を喪った少女が各地で他人の温かさに触れ、過去を受け入れて成長する。そんな姿に胸を打たれ、嗚咽するほど号泣してしまったという観客が続出です。

一方前半のドタバタ劇はコミカルなシーンも楽しめます。草太が椅子だからこそクスッと笑えるシーンも多く散りばめられました。草太の声優を務めた松村北斗も「自分の中にこんなに感性の幅があったんだなと思いました」と、作品が引き出す感情の幅広さに驚いたことを語っていました。

②声優のレベルの高さ

新海監督は前作『天気の子』続き、無名に近い新人俳優を主人公役に起用。相手役の松村北斗(SixTONES)はジャニーズですが、こちらも声優は初挑戦でした。

原が透き通る声で演じた鈴芽は誰からも愛される主人公となり、一方、松村は「神と人間の融合体」という新海監督のオーダーに見事な演技で応えました。2人と同じくらい話題なのが、唯一無二の声で声優としても注目を集める伊藤沙莉!

さらには、新海作品のキャストが別役で出演し、ファンから喜びの声が上がりました。

③映像・音楽のクオリティ

本作は走って飛んで(!)の連続で、ジェットコースター並の躍動感と疾走感。水や空などの表現はもちろん、各地の風景から伺える監督の手腕への言及もありました。

カメラアングルも素晴らしく「IMAXで観るべき」と言う人が後を絶ちません。

映像美が彩る世界観を盛り上げたのが、3度目のタッグとなるRADWIMPSの主題歌です。劇伴は陣内一真との共作ですが、新海作品のイメージはそのままに何段階も上に押し上げていると、従来のファンからも高評価を得ています。

『すずめの戸締まり』は批判もあれど高評価!歴史に残る傑作

『すずめの戸締まり』は、新海誠監督の集大成にして最高傑作という評価と批判とで意見が真っ二つにわかれる映画。基本的には超高評価が続いていますが、価値観や好みによっては引っかかる箇所も多いようです。

いずれにせよ、前2作とはかなり違った系統の本作。ぜひ劇場で、自分の目で観て判断してください。

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