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存在自体がロック!【梶芽衣子インタビュー ②】実写版「幽遊白書」でも新たなチャレンジ

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2024年03月24日 梶芽衣子のアルバム「7(セッテ)」発売日

前編【梶芽衣子インタビュー ①】からのつづき

3月24日に発売された、梶芽衣子の6年ぶりのオリジナルフルアルバム『7(セッテ)』。ご本人と、作曲者でありプロデューサーでもある作曲家の鈴木慎一郎を招いてのインタビュー。後編はレコーディングのエピソードからミュージックビデオ制作、そして昨年末に公開され大きな話題を呼んだNetflixドラマ『幽☆遊☆白書』の話題まで、存分に語っていただいた。世界的に注目を集めリスペクトが止まない、梶芽衣子の飽くなきチャレンジをお届けします。

「できない」って、私が一番言いたくない言葉


―― 今回のアルバム『7(セッテ)』は、企画の立ち上げからレコーディングまでの期間がわずか2ヶ月と聞いて驚きました。

梶芽衣子(以下:梶):普通ではありえないスケジュールですよね。これは私の誕生日(3月24日)に発売する、というのを決めていたので。

鈴木慎一郎:(以下:鈴木) 僕は2ヶ月の間、1曲メロディーを作って、オケを作り、そのオケを作っている間に次の曲のメロディーを考えて、ギターで作って… という繰り返しでした。

―― 全盛期の筒美京平さんのようなお仕事ぶりですね。

鈴木:期間が短い時は、瞬発力がないとできないですよね。プロの仕事の一番難しいところは、自分で自分の作ったものにジャッジを下すことだと思うんです。本当の締め切りの前に、“このメロディーで行こう” と自分にOKを出す作業が、実は難しいんです。締め切りを伸ばせばいいものができるかといえばそうでもなく、一発目のアイデアが一番良かったりもするので。それこそ半年間かけていたら、こういうアルバムはできなかったと思うし、「星空ロック」みたいな曲はできなかったと思います。

梶:彼が歌っているデモを聴いて曲を覚えるんですが、彼は歌がすごくうまくて、気持ちよく歌ってるから、余計に良く聞こえちゃうのね。「これ私がやるの?」って思った曲調もいっぱいあって、「星空ロック」は特にそうかもしれない。「無理よ、こんなの」って思うけれど、でも、「できない」って、私が一番言いたくない言葉だから、なんとか自分のものにしてやり遂げました。

―― それに加えて、全11曲のレコーディングが1日で終わったという話には驚きました。

梶:トータルで3時間半でした。だいたい1テイクでOK、多くて2テイクです。でも実は前回の『追憶』というアルバムの時の方が、もっと短かったんですよ。あれは気持ちよく歌えたんです。なぜならテーマが違うから。『追憶』はタイトル通り、過去を振り返る作品で、歌詞もそうなっているから、メロディーも自然とノスタルジックなものになっているんです。もちろん今の時代に聴いてもかっこいいものにはなっているけれど、今回は正反対の作風なんです。コロナ禍を経て、前を見て生きていく、というのがテーマですから、曲調やアレンジも新しいものが多くなっているんです。

「愛の剣」のミュージックビデオはゲリラロケ


―― 明日を見据えた攻めの作品なんですね。だから曲調も自然とアグレッシヴになる。また、今回「愛の剣」のミュージックビデオも制作されていますが、その時のお話もお聞かせください。

梶:あれは渋谷でのゲリラロケです。ヒカリエの方からスクランブル交差点まで歩いているんですが、一発OKでした。というか二度とできないですよ。

―― 渋谷でのロケといえば、「さそり」シリーズの3作目『女囚さそり けもの部屋』の冒頭で、梶さんが刑事の成田三樹夫さんの片腕を地下鉄の車内でぶった斬って、その腕をぶら下げたまま渋谷の街を疾走するシーンがどうしても思い出されます。

梶:あれもゲリラ撮影でしたね。あの頃とは街もすっかり変わって、昔の面影は全然ないです。今回の撮影では、ライトもないし、ディレクターは「途中で何かあったら止めます」というので、「それはダメ、途中で止まったら空気が変わるから、途中でダメだと思っても、通しで最後までやってちょうだい」と申し上げたんです。「やり直すなら最初からにして」と。映画でもあるんですが、一度撮影を止めて、そこで一息ついちゃうと、役者の生理も変わるし、そこまで持っていこうという芝居の緊張感が途切れるんですよ。その覚悟のもとでやったので、一発OKでした。

―― アルバム11曲を1日で歌入れするのと、同じことですね。

梶:そう、その感覚なんです。喉も言うなれば生楽器ですから、声の感じも変わっちゃうでしょう。

鈴木:通常は、例えば1日1曲をレコーディングして、11日間かけて11曲を録音するのが通常なんです。それだと並べた時に、全部均等によくなっているんですが、凸凹があるのが人間なので、1日を通して疲れていく具合だったり感情の揺れだったりも、1日に封じ込めることができるんですよ。それがたまらなくセクシーですし、上手く歌うことよりも、そのエモーショナルな部分を重視したいというのもありました。

―― 今のレコーディングだと、何テイクか録ったものからいいところだけを切り貼りする形が、主流になってきていますからね。

梶:私はあのやり方ができないんです。それなら最初から通してやらせてほしい。 “その部分だけ気をつけて歌って” というのができないんですよ。

鈴木:それで僕は、前回のレコーディングの時に、怒られたんです。僕は大体どのアーティストでも、ワンコーラスで区切るんです。それで芽衣子さんにも「1番だけもう1回歌ってください」とお願いしたら「それなら全部やらせてちょうだい。演じているから止めないで欲しいし、後から直すなら直して」と言われました。そうか、1曲を通して演じる感覚をもう1回取り戻すより、1曲全体に対する表現がどうかを見抜かなければいかないな、とその点は勉強になりました。

アクションシーンが多かったドラマ「幽☆遊☆白書」の幻海役

―― ところで、挑戦といえば、現在Netflixで公開されているドラマ『幽☆遊☆白書』の幻海役も、新たな挑戦の1つだったのではないかと思います。

梶:あの役も、最初はお断りしたんです。アクションシーンが多くて、どうして私なのか? “みなさん、私の年齢をご存知なんですか!?” と。でも殺陣師の方にも「任せてください」と言われ、本当にお任せしましたけど、すごく大変でした。相手が25歳の北村匠海くんで、それを私が師範として仕込む役だから、対等に戦うシーンもあるんです。立ち回りだけで3日かかりました。

―― Nefflix作品ですから、潤沢な予算と日数で作られていることはよく聞きますが。

梶:衣装もオートクチュールで、生地から選ぶんです。仮縫いだけで3回やりました。カツラもハリウッドから来た方が手がけているんです。とにかくこの作品は原作の漫画の絵に近づけることが第一なので、髪の色もピンクでも紫でもないその中間の色、という注文に近づけるために何度も染め直したり。でも、体力的な面での不安はありましたけど、やって良かったと思っています。

日本の映画ってキャストの年齢にこだわるところがあって、一度お母さん役をやったらそのあとはもう、おばあちゃんの役しかないとか。日本では役者本人の実年齢やイメージにこだわるけれど、海外はそこは関係ないんですよ。レコードもそうですけれど、50年前の作品だって普通に出してくれるし、作品というものを本当に大事にして、尊敬する姿勢があるんですね。

デプレシャン監督からの熱烈オファーで決まったトークショー


―― それも、梶さんがワールドワイドで評価されている大きな理由でしょう、昨年の秋には、フランスのアルノー・デプレシャン監督が来日された際、国立映画アーカイヴで、『女囚701号 さそり』の上映後に梶さんとトークショーも行っています。あれもデプレシャンからの熱烈なオファーで決まったお話でしたね。

梶:最初は、クロード・ルルーシュみたいな作品を作られる監督が、どうして『さそり』みたいな作品が好きなんだろうと思いましたけど、お会いしてお話を聞いたところ「ヒロインがあんなに喋らないのに、シリーズ4作も作ってしまうなんて考えられない。世界広しといえども、こんな作品はこれからも出てこないだろう」とおっしゃっていたんです。最初にご覧になった時、こんな映画が日本にもあるんだと驚かれたそうなんです。「喋らないヒロインでいきたい」というのは私のアイデアだったんですが、やって良かったと思いました。でも、そうやって世界で私の映画や歌が評価されることは本当に嬉しいです。日本では私の年齢とイメージだけでお話が来るので、今回の海外でのレコード発売や、『幽☆遊☆白書』の出演は、その点に対するアピールになったと思っています。今度のアルバムも、シンちゃんでなければ私もロックは歌わないと思う。その意味でも本当に感謝しています。

鈴木:ここから10年先、15年先のことを考えると、僕は今が一番つまらない時代だと思ってるんです。音楽映像作りもコンプライアンスがどうとか制約が多くなっている。でもその形が変わってきている途中だと思う。『幽☆遊☆白書』もそうですし、音楽もきっとそうだと思う。単純にエンターテイメントとして面白いことをやっているものにスポットが当たると思っています。その意味で、若い人たちには、今は梶芽衣子という存在が、キャラクター商品のようになっているように思えるんです。でもレコードは意外に聴かれていなかったりもするので、芽衣子さん自身がエッジのきいた存在になっている、その活動の一環として、楽しんでもらえるような1枚になったかな、とは思っています。

発売記念ライブでは全曲歌う予定


―― 5月12日には、渋谷のPLEASURE PLEASUREで『7(セッテ)』の発売記念ライブも開催されます。ライブではこのアルバムからも、もちろん披露していただけるかと、楽しみにしています。

梶:全曲、歌う予定なんです。難しくて難儀している「恋は刺青」ももちろん歌います。どう歌おうかとずっと悩んで、何回歌っても2度と同じように歌えないんです。でも歌ってみて増村監督は奥が深い、と思いました。「恋は刺青」ってタイトルでなんだろう?って思いますよね。しかもそこに「初恋」と出てくるし。あれは絆の深い男女の、「恋は刺青のように跡が残る」という意味なのね。本当に、歌えば歌うほど、どんどん好きになってきました。ライブも頑張りますので、楽しみにしていてください。

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