こんな場所が、どの地域にもあったらいいのに。板宿『宿り木』のきちんと丁寧に作られるごはん 神戸市
板宿の街角に佇む、9席だけの小さなお店『宿り木(やどりぎ)』(神戸市須磨区)。賑やかな駅周辺の雰囲気とは打って変わって、落ち着いた大人の街のごはん屋さんです。
アーチの窓に、そっと掛けられた暖簾が目印。
以前は『板宿キッチン おくひら』として、現店主のお父さんとお母さんが洋食店を営んでいました。地元の人で知らない人はいないほど有名なお店でしたが、ご両親の高齢化を理由に閉店。
5年前に現店主である娘さんが、お父さんと共に『宿り木』として復活させ、今も当時の常連さんたちを中心に、地元で愛されるお店として継承されています。
「お客さんのほとんどが70歳以上なんです」と店主さん。取材中にも年配の方が入れ替わり立ち替わり訪れては食事を楽しみ、店主さんと会話を交わし、満足そうに帰って行く姿を見かけました。
そのフランクなやり取りはさながら親子のよう。店主さんとお客さんの信頼関係が伝わってきて思わずこちらも笑顔になります。
同店のメニューは、「幕の内」と「日替り」の2種類。テイクアウトのお弁当もあります。今回は「幕の内」をいただくことに。
注文してしばらくすると、揚げ物の香ばしい香りが漂ってきます。温かいおかずは注文を受けてから作られるため少し時間がかかりますが、その分できたてをいただけるので楽しみに待ちます。
こちらが「幕の内」。お重に盛られたおかずはどれも馴染みのあるものですが、その組み合わせはとても魅力的で、「こんなごはんが食べたかった!」と嬉しくなります。
香ばしい香りの正体はエビフライ。揚げたて熱々で、サクサクです。丁寧に下処理されているので雑味はなく、尻尾までカリッと美味しくいただけます。
季節野菜の炊き合わせはじゅわっとお出汁が染み出し、しみじみとした美味しさ。鶏の照焼も牛肉巻も、素材の味が活かされていて、濃い味を付けなくてもこんなにも滋味深い味わいなのだなと気付かされます。
国産の食材を使い、丁寧に手作りされる料理。すべて1人で作られているため時間がかかりますが、手間を惜しまず作られる味はひとつひとつ噛みしめたくなる深さを感じます。
「幕の内」は、かつて店主のお母さんが担当されていたそうで、その味を引き継ぎ、少しのアレンジを加えて出されています。以前からの常連さんも納得の味です。
よく来られるというお客さんにお話を聴くことができました。「商売っけのないお客さん思いの店やな」とのこと。
もっと効率的に多くのお客さんを集めることはできるかもしれないけれど、例えばゆっくり食事をしているお客さんがいれば、急かさずのんびりしてもらい、それで入れない場合には丁重にお断りするなど、「今いる人にゆっくりしてもらう」ことを徹底しています。
ふらっと立ち寄って、体に優しい食事をし、店主や居合わせた人との会話を楽しむ。自然に生まれたコミュニティスペースに助けられている人は多くいると思います。
こんな場所が、どの地域にもあったらいいのに。そんな風に思わされる温かい場所でした。
※店主1人で営業しているため、待ち時間が長くなる場合があります。2人以上で訪れる時やお弁当のテイクアウトの場合は、事前予約がスムーズです。
場所
宿り木
(神戸市須磨区戎町1-4-15)
営業時間
11:30~14:00(L.O.13:45)
定休日
水曜日、土日祝