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高校生だった玉置玲央と松居大悟を演劇の道へと導いた舞台『ポルノ』24年ぶりの上演に、「舞台でしか挑戦できない作品」と前田敦子も参加

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高校生だった玉置玲央と松居大悟を演劇の道へと導いた舞台『ポルノ』24年ぶりの上演に、「舞台でしか挑戦できない作品」と前田敦子も参加

 劇作家、演出家、そして俳優としても活躍する長塚圭史率いる阿佐ヶ谷スパイダースの旗揚げ公演『アジャピートオジョパ』に新たなエピソードを加え、2002年に上演された『ポルノ』。現実と妄想を行き来する、どこか不思議であたたかく、そしてスリリングでハートフルなホラー、とさまざまな色合いの物語を描き出したエンタテインメントとして、その世界観が高く評価された。

 
 その2002年の公演を観ていた2人の高校生がいた。ひとりは後に劇団ゴジゲンの主宰者となり、舞台演出、映画監督、脚本家、俳優と、まさに何次元もの幅広い活躍をみせ注目を集める松居大悟。そしてもうひとりは、舞台、映像とさまざまに俳優としての色彩を変えながら現れ、さらには演出も手がける玉置玲央。松居と玉置は共に1985年生まれで、松居は生まれ育った福岡で、玉置は東京で高校時代の同時期に舞台『ポルノ』を観て、これまでに体験したことのないような演劇的刺激を受けたという。その後、松居も玉置も、長塚主宰の演劇プロデュースユニット阿佐ヶ谷スパイダースを前身とする、舞台公演プロデュース、制作、マネージメントを手がけるゴーチ・ブラザーズに所属し、互いの『ポルノ』体験を知ることとなる。共に『ポルノ』という演劇体験が、その後の進むべき道の標となったことが読み取れ、演劇の力の大きさを改めて思い知らされた。

▲作・長塚圭史(左)と演出・松居大悟(右)。松居は2016年に下北沢・スズナリにて長塚圭史作『イヌの日』を演出し、その独自の感性が大きな話題を呼んだ。

 
 「ぼくと玲央(玉置)は、2010年に同期として同じ事務所に入ったんです。ぼくが、圭史(長塚)さんの『ポルノ』を高校時代に観て憧れ、それで『ポルノ』を制作したゴーチ・ブラザーズに入ったということはあちこちで話をしていたんです。何かの折に、玲央が「何? 阿佐ヶ谷スパイダースの話? オレも高校生のときに『ポルノ』観てたんだよ」と言って、それで『ポルノ』やってみたいのと訊いたら、玲央も「やれるのであればやってみたい」って言っていましたね。でもぼくらはまだ20代で、『ポルノ』という芝居は坂の多い町が舞台で、美術にしても大劇場や中劇場あたりでやらなければいけない作品で、経験値が足りないなという感じでした」

 玉置は「話した内容としては具体的な内容より、すごい衝撃的作品だったよね、みたいな話をしたと思います。ひとつ象徴的な演出があって、あの演出すごかったよねって、盛り上がったことを憶えています。空から主人公の町会議員に立候補する国旗耕二の顔がプリントされたビラが降ってくるんですが、それが終演後に客席の床に散らばっているんですよ。それを持って帰って大切にとっていたんですが、松居大悟も同じことをしたというのを聞いて、この人と『ポルノ』をやれる日が来るかもしれないと思ったことを思い出します。これまで生きてきて体験したことのないようなガツンという感じの衝撃の舞台でした」と今でも当時の衝撃が胸に熱くたぎっているようだ。

 松居も「ぼくは福岡で三谷幸喜さんとかG2さんとかちゃんと伏線回収して面白いというような演劇を楽しんで観ていた中で、演劇やミニシアターの映画が好きな母に連れられて阿佐ヶ谷スパイダースの『ポルノ』を観に行って、衝撃というのか映画でもテレビでも小説でも漫画でも表現しないようなすごく言ってはいけないことを言ったり、やっちゃいけないことをやったりするのをみんなで暗闇の中で共有して、たとえば笑ったりとかしている、いけないことをしている感がすごく気持ち良くて、何が面白いかわからないまま足元に落ちたビラを持って帰って、これは何だったんだろうというのが24年くらい続いている気がします」と。

 さらに玉置は「同じくです。ぼくも大人に連れられて面白い芝居があるから観に行こうということで行って、それまで王道的な芝居ばかり観ていたので、舞台でこういうことをやっちゃっていいんだ、こういう作品もあっていいんだというのを初めて観たんです。ホントに、価値観をひっくり返されるというのか、むしろ、それまでになかった新しい価値観をぶち込まれるという体験を多感な高校生のときにしちゃったという感じでしたね。今でも原体験として自分が芝居やるとか、舞台をやるとかいうことの指標、道標となっているような作品でしたね、衝撃でした」と興奮冷めやらぬという感じだ。

 『ポルノ』に大きな刺激を受けた松居と玉置が、演出家と俳優としてこのたび24年ぶりに上演される『ポルノ』に挑む。ゴーチ・ブラザーズに入所した同期のタッグとなる。そこに「演劇でしか挑戦できない作品」だと直感したという前田敦子が加わる。

 前田は「長塚さんとは役者さんとしても演出家さんとしてもご一緒したことがあって、今回戯曲を読ませていただいて、どこかひょうひょうとしている感じが伝わってきて面白いなと、何かスコンって入ってきたんですよね。松居さん、玉置さんが少年時代に観て何がなんだかわかんなかったけど、ずっと残っている。そういう作品に出合えるっていいなと思って。なかなかないじゃないですか。そんな体験いいなって、覗きたいなって、すごくシンプルに思って、かきたてられたというのが参加したいなと思ったきっかけですね」とすでに『ポルノ』熱に感染しているようだ。

 物語を簡単に紹介しておくと、「なりたいんだよ議員。弱者の味方になりたいんだよ」と、坂の多い町・坂上町で行われる町会議員選挙に立候補した国旗耕二の公約は、高齢者や歩行に障害のある人のために町にある全ての坂をエスカレーターにするというものだ。それでも支持率が伸びず、自身の公約に説得力をもたせるため、耕二と妻の美和子は恐ろしき行動に出る。一方、美和子は別の悩みも抱えている。7人の男女が織り成す、美しくも醜悪な恋物語。観る者に、どんな衝撃が待っているのか……。

 国旗耕二を玉置が演じ、妻・美和子を前田が演じる。

「すごく癖のある人たちがたくさん出てくるんですが、みんな必死に生きているんですよね。真直ぐだからすごく笑っちゃうし、母性がくすぐられるというか、愛おしい。まだ、本読みしかしていない段階ではあるんですが、こんなに魅力的なキャラクターがいっぱい出てくる戯曲もなかなかないなと思って、それぞれ違うキャラだけどみんなが愛おしい。最初読んだときと、今では少しイメージが変わってきました。観ている人たちにはどう見えるんだろうなと想像するとすごい楽しいです。今の時代では絶対できないことだなと、そこに最初は気持ちがとられたんですが、キャラクターたちの内面が見えてきたときに、全然違うもっと深い人間というものを感じられる。だから観てくださる方たちにも最初はすごく衝撃的な感じが記憶に残るかもしれませんが、でも、あれってこういう意味だったのかな、意外とこういう人っているよね、自分かもしれないよね、というのがすごい散りばめられていて、人間力がすごいというのか、今の自分がわかるというのが測れる、すごい深い作品だなとの思いが強くなっている最中です」と前田は長塚作品を読み込む。

 
 松居は「『ポルノ』という作品に出合い、上京してきたときに圭史さんの作品は、阿佐ヶ谷スパイダースの作品もそうですし、『ウィー・トーマス』『ピローマン』などPARCO劇場など外部公演の演出作品も含めて観ていたんですが、すべてにおいて寂しさとそこに対して抗っている中での矛盾めいたものだったり、人間が人間であることの叫びみたいなものと、社会の規範からはずれていたって、その人が正しいと思っていたら、それはそれでいいんだということを圭史さんの舞台で2時間かけて納得させられるような説得力みたいなところが、ぼくの好きな圭史さんの部分です」

 玉置は「今でこそ言語化できますが、当時若いころに観ていた圭史さんの作品の印象って、不謹慎さとか、猥雑さとか、はばかられるような表現が当たり前のように出てくることが多いと感じていました。当時はホントにこういうものがあっていいんだというのが、ずっと圭史さんの作品にはあって、新しい価値観を拓いてくれるような作品群だったなと思うのと同時に、今言語化するなら、どこか歪んだ登場人物とか歪んだ世界観が必ずあって、歪んでいるけど彼らが抱えている思いとか、感情とか問題とかというのは、非常に真直ぐで、彼らにとって正義のある正しいことに取り組んでいるんですね。結局全体がいびつになっちゃうんですが、それでガチャガチャになって、そこが圭史さんの作品のすごさで、阿佐ヶ谷スパイダースの作品の〝おもろい〟ところだなと思いましたし、思っていますね、今も」

 松居「不謹慎だけど品があるんですよね。やっちゃいけないことをただやっているんじゃんなくて、何か品があるのが好きですね」

「それ、大事だよね」と玉置。

 前田も「いずれの登場人物たちも自分の中にある軸が全然ズレない。それが見てて気持ちいいなと思うので、そういう部分は自分の中でも持っていたいなと思います。私は間違っていないという、それは決しておしつけではなくて、それが普通だと思っていることがみんなの軸にあるなと。だから、その役としてしっかりと立っていたいなと思います。観ている人が気持ちよく観てもらえる舞台になったらいいなと思っています。モヤッとするのではなく、スカッとして欲しいですね」

 さらに玉置が「登場人物たちって、それぞれの正義と愛情があるんです。歪んだ表現や世界の中にも。それをきちんと俳優としては突き詰めて表現して取り組んで劇世界を立ち上げることができれば、何かこの時代においては不謹慎かもしれないことがきちんと意味を持って、観てくださる方に伝わるんじゃないかと思ってやっていますし、信じていますし、それをきちんとがんばるべきだなと思ってとりくんでいるところなんですよね」と意欲を示すと

 続けて前田も「今回若い方たちにも観ていただきたいと思うんです。やれないことが増えてきている時代でもあるかなとも感じることもありますので、そんななかで、こういうこともしていいんだ、というような創作意欲が若い方たちの中でも掻き立てられる、当時の松居さん、玉置さんみたいに。だったらほんとにすてきなことだという意味でも、この作品に今チャレンジする意義はすごくあるんじゃないかなと思います。観ていただいて、ちょっとでも明るい未来が見えたら嬉しいです」と長塚作品へのそれぞれの思いを余すところなく語り続ける。

 同じ志をもって舞台『ポルノ』に向き合う3人の仕事ぶりを紹介しておくと、個人的体験から言えば、松居大悟に親しんだのは主に映像作品である。ドラマ脚本家デビュー作であるNHK「ふたつのスピカ」に映画監督デビュー作である松田翔太主演の『アフロ田中』。そういえば、教師役で長塚圭史も出演していた。映画では菅田将暉、野村周平、吉沢亮、佐藤二朗らが出演していた監督作『男子高校生の日常』、蒼井優、高畑充希、太賀(現・仲野太賀)出演の『アズミ・ハルコは行方不明』、『バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』の監督も手がけている。松居自身の実体験を基にした舞台を映画化した成田凌、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、高良健吾、さらに前田敦子も出演していた『くれなずめ』では監督・脚本を手がけている。テレビでも監督を務めた「バイプレイヤーズ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」(脚本も)をはじめとする「バイプレイヤーズ」シリーズ3部作、WOWOWで放送された「月刊 松坂桃李」の一編「横★須★賀探偵事務所」では監督・脚本・出演と3役を務め、ドキュメンタリーふうのドラマが印象に残った。

 

 また、玉置玲央は、「大奥 Season2 医療編」、藤原道兼を演じたNHK大河ドラマ「光る君へ」、源孝志作・演出、倉科カナ、毎熊克哉共演の「TRUE COLORS」、大石静脚本、阿部サダヲ、松たか子共演の「しあわせな結婚」といった近年のテレビドラマで、お茶の間でも顔が知られる存在になったが、ぼくが初めて玉置を意識するようになったのは、やはり舞台だった。G2演出の『こどもの一生』、新国立劇場 開場20周年記念の井上ひさし作、栗山民也演出の『夢の裂け目』、PARCO劇場オープニング・シリーズ長田育恵作、栗山民也演出の『ゲルニカ』、野田秀樹作、杉原邦生演出で、成田凌、葵わかな、白石加代子、前田敦子共演の『パンドラの鐘』、吉田鋼太郎演出のオールメールによる『ジョン王』でのコンスタンス役。吉田いわく役も役者も〝モーレツな女性〟と評する3人の女性の1人だ。段田安則、上白石萌歌、江口のりこ、高橋克実らが共演の『リア王』では野心家のエドマンド役を演じていた。さらに藤田俊太郎演出『Take Me Out』。

 
 前田敦子の初舞台は2014年の前川知大作、蜷川幸雄演出、綾野剛、成宮寛貴、伊藤蘭らと共演した『太陽2068』だった。その後岩松了作・演出の『青い瞳』、三浦大輔作・演出で、その後映画化もされた人気アイドルグループKis‐My‐Ft2のメンバー藤ヶ谷太輔、江口のりこら共演の『そして僕は途方に暮れる』、野田秀樹作・演出の『フェイクスピア』、玉置玲央とも共演した『パンドラの鐘』、2022年には長塚圭史上演台本・演出の、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース作品ミュージカル『夜の女たち』にも江口のりこ、北村有起哉らと出演している。さらに月刊「根本宗子」第19号『共闘者』、フロリアン・ゼレール作、ラディスラス・ショラー演出、橋爪功、若村麻由美、岡本圭人ら共演の『飛び立つ前に』と、名だたる劇作家、演出家と組み、いいサイクルで意欲的に舞台出演を重ねてきている。

「同じ空間で不謹慎な言葉などに思わずクスッって笑ったりする、そういうのを共有できるのも演劇ならではで、今回そういうのがすごく楽しいんですよね。セリフだけでもおもしろいのに、役者さんがいることによってさらに面白くなっていく。わかっているのに面白いなって。何にもしばられていない自由な場所、それが演劇であってほしいなというのは今回改めて思いました。何も怖いものはない状態でやりたいことをやらせていただこうかと。舞台って苦手意識はあるんですが、だから知りたいんだと思います。気になっちゃうんです。怖いもの見たさみたいなところが、すごくあるのかもしれません。それがクセになってきているんだと思います」と舞台の怖さを感じつつも、すでに舞台ならではの醍醐味を感じている様子だ。

 
 最後に演出を手がける松居大悟のメッセージを紹介しておこう。「阿佐ヶ谷スパイダースの『ポルノ』を再演するのではなく、今回集まった座組で『ポルノ』を創るという意識をもって臨んでいます。ただ時代として観ている人たちが舞台作品を浴びる量も24年前よりけっこう増えた気がしますし、作品を観る人が物語を考察するのも以前よりちょっと速い気がする、とも思っているのでお客様が作品を追い抜かないようにというか、それこそ冷静に考えるよりもスカッとするというか、登場人物を追いかけながら気持ちのいい状態で作品にノッていって、作品がハートに残った状態で劇場を後にしていただくのがいいなと。ゆっくりとした間で劇場を出ていきながら、つまりあれってこういうことなんだよな、というように必死に観客の方に食らいついていただけるような感覚で作品を作りたいなと思っています」

(上段左から)玉置玲央、前田敦子(中段左から)鳥越裕貴、藤谷理子、小野寺ずる(下段左から)岩本晟夢、うぇるとん東

『ポルノ』
作:長塚圭史
演出:松居大悟
出演:玉置玲央、前田敦子、鳥越裕貴、藤谷理子、小野寺ずる、岩本晟夢、うぇるとん東

<東京公演>
〔公演日程〕4月2日(木)~4月12日(日)
〔会場〕下北沢・本多劇場(東京都世田谷区北沢2-10-15)
〔問〕ゴーチ・ブラザーズ03-6809-7125(平日12:00~17:00)

<福岡公演>
〔公演日程〕4月15日(水)~4月16日(木)
〔会場〕西鉄ホール(福岡市中央区天神2-11-3 ソラリアステージ6F)
〔問〕ピクニックチケットセンター050-3539-8330(平日12:00~15:00)

<大阪公演>
〔公演日程〕4月25日(土)~4月26日(日)
〔会場〕サンケイホールブリーゼ(大阪市北区梅田2丁目4-9 7F)
〔問〕キョードーインフォメーション0570-200-888(12:00~17:00※土日祝休業)

取材・文=二見屋良樹

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