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美しいだけでなく切れ味もシャープ!イマジネーション広がる創作ハサミの世界

おたくま経済新聞

佐藤聖也さんのハサミ(佐藤聖也さん提供)

 手にピッタリと絡みつくようなハサミに、レース細工を思わせる繊細な装飾のハサミ。これらは日本でも珍しいハサミ専門の作家、佐藤聖也さんの作品です。

 金属造形作品の美しさだけでなく、道具として手に馴染み、切れ味も優れた数々のハサミを生み出している佐藤さん。これまでの歩みと、その作品についてうかがいました。

 小学校の頃からハサミを含む文房具が好きで、特に金属でできた文具を収集していたという佐藤さん。北海道のデザイン専門学校に進み、木工やジュエリー、金属工芸に触れるうち、まずはジュエリーデザインに没頭したといいます。

 しかし、いつしか自分の中にある違和感に気づきます。

 「着用のことなど考えずに大胆な装飾などをしているうち、ファッションアイテムであるジュエリーというのは自分に合っていないと気づき、金属の造形美を追求する表現媒体として、装飾的なハサミを作ることにしました」と、ハサミ作りの発端を語ってくれました。

 専門学校1年次の半ば頃に完成したという、ハサミの処女作。形になった喜びと同時に、まだまだもっと良いものが作れる、思いつくという気持ちが今までの人生で一番強く起こったという佐藤さんは「自分は一生ハサミを作り続ける」と確信。運命の人に巡り会えたような感覚を得たそうです。

 自分を思う存分表現できるハサミという媒体を得たことで、佐藤さんの作家性は大きく花開きました。

 2017年、1~3作目の作品(「えんのこ」「麗しのはさみ(アンティーク調のはさみ)」「種子のはさみ」)を北海道貴金属工芸組合が取材するジュエリー展示会「職人力展」に出品したところ、出展者とスタッフによる投票で札幌市教育委員長賞を受賞。

 「裏ではハサミがジュエリーの賞をとっていいのか?という議論もあったようですが、それすら乗り越えたということで自信になりました」と、こんなエピソードもあったそうです。

 専門学校卒業後は金属加工会社で近代の加工技術を学び、そして完成品を作りたいということでサインディスプレイ会社に勤務するかたわら、作品を作り続けます。

 社会人となり、自分の時間を捻出するのが難しくなったため、新たに3Dソフトと3Dプリンタで原型を作り、鋳造するという手法を確立したといいます。

 この手法により、さらに自分の意図したクオリティの作品が作れるようになった、と佐藤さん。いよいよ独立し、同じく作家を目指す友人とシェアハウスして自宅兼工房を開設したのは、2021年の夏のことです。

 作品作りを重ねるうち、デザインからモデリングへの手法も確立。現在は学生時代のようにアイデアスケッチを手書きでまとめてから、コンピュータ上でモデリングし、原型を出力するようになったそうです。

 液体金属でできているような「鮮やかな毒のハサミ」は、表面に真空蒸着などの新しい技術を適用。メッキできない金属を表面に成膜し、メッキのような効果を得ています。

 また、壮麗な「ハートの女王のハサミ」は、習得したジュエリースキルを注ぎ込み、細部まで作り込んだ作品。「不思議の国のアリス」に登場する、ハートの女王をモチーフにしています。

 美しい造形に目を奪われてしまいますが、ハサミとしての機能も妥協していません。

 「ハサミとは特別なものであり、その恩恵を最大限に受けるには信頼できる道具たる性能が必要だと考えています」と、高級ステーショナリー並みの切れ味を有しています。

 ハサミは日常品でありながら非日常性を強く帯びている不思議な道具、とも佐藤さんは語っています。

 「一生モノの道具であることと、自分の理想世界をいつまでも忘れないためのお守りのような存在になれれば」との想いを作品に込めているそうです。

 ファンタジー色を感じさせながら、それでいて切れ味は抜群という佐藤さんのハサミ。現在はご自身のサイト「jewelry-scissors」で作品を販売しています。

 多くは一点モノですが、今春より「ハートの女王のハサミ」など、過去の作品の一部をレギュラー商品として購入できるようになるとのことです。

<記事化協力>
佐藤聖也さん(@f9u6yq)

(咲村珠樹)

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