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鉄分とは

鉄分は、主に赤血球の「ヘモグロビン」（赤血球に含まれる赤色のたんぱく質）に含まれており酸素運搬やエネルギー代謝など、生命維持に関わる重要な役割を担っています。しかし不足すると、さまざまな健康問題を引き起こします。

また鉄には「ヘム鉄」と呼ばれる吸収率の高い鉄と、「非ヘム鉄」という吸収率が低い鉄が存在しており、前者は動物性食品（肉や魚）に多く含まれ、後者は植物性食品（大豆や野菜）に多く含まれています。

猫の場合は肉食動物なので主に前者から鉄分を摂取して、健康を維持しているのです。

鉄はそのほとんどがヘモグロビンの構成要素として働いており、人にとっても猫にとっても欠かせない栄養素のひとつだと覚えてくださいね！

猫も鉄分不足になるの？

猫も鉄分不足になります。鉄分が不足して起こる代表的な病気に「貧血」がありますね。

鉄分は、ヘモグロビンやミオグロビン（筋肉中のたんぱく質の構成成分）などの重要な構成要素であり、前述の通り、酸素運搬やエネルギー代謝など生命維持に不可欠な役割を担っています。

しかし鉄分が不足するとヘモグロビンがつくれなくなり、貧血といった体に悪影響を招きます。重要な鉄分が不足する現象は人だけでなく猫にもあり、その原因もさまざまです。

猫が鉄分不足になる3つの原因

1.栄養バランスの偏り

猫は肉食動物で植物性食品を上手に消化・吸収できないため、吸収率が低い非ヘム鉄を含む植物性食品よりも、動物性食品に多く含まれる吸収率の高いヘム鉄を効率よく摂取するのが望ましいです。

しかしベジタリアンフードや手作り食を与えていたり、カサ増しとして穀物が多く含まれた粗悪なフードを食べていると、鉄分不足のリスクを高めてしまいます。

猫の1日の鉄分摂取目安量は80㎎/㎏なので、手作りフードであれキャットフードであれ、この基準を満たしているかどうかは、飼い主がしっかり確認するようにしましょう。

2.寄生虫感染

「鉤虫」という猫の消化管に寄生する内部寄生虫に感染すると、鉄分不足になることがあります。その理由は、腸の粘膜に寄生虫がかみついて血液を吸い続けるためです。

内部寄生虫による症状は駆虫薬を用いた適切な処置を行えば治せるので、黒いタール状の便をするといった症状がみられたら早急に獣医師に相談しましょう。

3.出血

外傷や事故による大量出血やガン、慢性的な消化管出血は、目に見えない出血が続くため気づかないうちに鉄分不足を引き起こす可能性があります。

外傷があればすぐに飼い主さんも気づくと思います。しかし内臓疾患は気づきにくいかもしれないため、定期健診を受けたり、そのほかの症状を見落とさないようにしましょう。

鉄分不足になると見られる症状は？

猫の鉄分不足になると赤血球中のヘモグロビンがつくられにくくなり、体全体が「酸素不足の状態」に（ヘモグロビンは体中に酸素を運ぶ役割をしています）。

そのため鉄分が不足した猫には、次のような体の異常があらわれるようになります。

✔元気消失
✔食欲不振
✔ふらつき
✔毛並みが悪くなる
✔粘膜の蒼白（歯肉や白目の部分）
✔息切れ
✔心拍数の増加
✔運動能力の低下　など

これらの症状がでていると「鉄分不足」の可能性があります。ただ他の病気によっても起こり得るため、確定診断には獣医師による診察が必要です。

猫は体の不調を訴えない動物ですが、日ごろから猫の様子を気にかけるようにして異常に早く気づけるようにしておくといいでしょう。

まとめ

猫の鉄分不足は、栄養バランスの偏りやケガや寄生虫感染といったことが原因で引き起こされます。

また日常のなかで猫の健康を守るためには、とくに栄養バランスの良い食事を与えることが重要です。市販のキャットフードを与える場合は猫の栄養基準を満たしているものを選び、手作り食を与える場合は獣医師に相談しながらレシピを作成しましょう。

健康的な食事は鉄分不足だけでなく、そのほかの病気の予防にも役立ちます。しかし、もし愛猫に「おかしいな？」と思うことがあれば、すぐに獣医師に相談してくださいね！

(獣医師監修：加藤桂子)