介護施設ができるSDGsへの取り組み|6月5日は環境の日!環境問題への取り組み方を考えてみましょう
本日のお悩み:介護施設で利用者さんとできる環境問題への取り組みが知りたい!
6月5日は環境の日です。それに伴い、施設でも環境に対する取り組みを何か行いたいと思っています。
利用者さんも一緒にできる取り組みがあれば教えてください。
そもそも環境の日やSDGsとは?
執筆者/専門家
後藤 晴紀
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/9
ご質問ありがとうございます。 素晴らしい取り組みをご予定ですね。
利用者さんと職員さんが一緒に取り組める「環境の日」にちなんだエコ活動やSDGsへのアプローチについて、具体的かつ実践的にご紹介できればと思います。
記事をご覧になられた方も、より分かりやすいように「環境の日」と、「SDGs」についてのご説明から始めさせていただきます。
1.環境の日とは
環境の日は、国連が定めた国際デーで1972年、日本とセネガルの提案により、国連総会で「世界環境デー」が制定されました。この日は、国際デーの1つとして、世界中の人々に環境問題への意識を高めるよう促す特別な日となります。
日本では、1993年に「環境基本法」により、この世界環境デーを「環境の日」として定め、環境保全への関心と理解を深め、積極的な活動を促す日として制定されています。
日本では環境庁の主唱により、環境の日を含む6月を「環境月間」としており、様々なイベントが行われています。※
※参考:環境省「Environment Day & Environment Month 環境の日&環境月間」
■環境の日に向けた取り組みの意義
福祉・介護の現場で、環境の日に向けた取り組みを行うことは、利用者の方々に「自分たちの行動が社会に貢献している」という実感をもっていただくことができ、QOL(生活の質)の向上にもつながります。社会の一員として、そして地域の資源として利用者さんに活躍の場を提供できることは素敵ですね。
また、職員にとってもSDGsや環境意識を再確認する好機となり、職場の連帯感やモチベーションの向上にも寄与すると考えています。
さらに、当事者意識の高まりによる、副次的な効果として施設運営のコスト削減や、適切な備品の管理にも繋がっていくと思います。
2.SDGsとは
SDGsとは、国連が掲げる「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略称で、「エス・ディー・ジーズ」と読みます。「持続可能な開発」とは、「将来の世代のニーズを満たす能力を損なうことなく、今日の世代のニーズを満たすような開発」のことです。
あらゆる貧困に終止符を打つことが地球規模の課題であり、持続可能な開発のための必要条件であるとして、達成すべき「17の目標(ゴール)」が設定されています。
貧困や飢餓・平和・ジェンダー平等・教育などの社会面、エネルギーの有効活用・働き方改革・不平等の解消などの経済面、気候変動や環境保護など環境面のように幅広く目標を定めていて、持続可能な経済成長を目指しながら、「誰一人取り残さない」という基本理念のもと、各国が力を結集してゴールを目指しています。※
※参考:外務省SDGsとは
特別養護老人ホームでできるエコ活動5選
ここからは、特別養護老人ホームとデイサービス、ショートステイに分けて、各事業所で取り組むことができるアクションプランをご提案していきます。
まずは、特別養護老人ホーム(特養)での取り組みから紹介します。
1.リサイクル活動に繋がるレクリエーション
2.グリーン活動(緑化活動)
3.節電・省エネ活動
4.クリーン清掃活動
5.廃棄物のリサイクル
1.リサイクル活動に繋がるレクリエーション
リサイクル活動をレクリエーション感覚で楽しむと、利用者さんも楽しく環境問題への取り組みに参加することができます。
■ゴミの分別をゲーム感覚で実施
食後のゴミや日常の廃棄物の中から、「燃えるゴミ」「資源ごみ」「不燃ごみ」などを見分ける活動を、職員と利用者さんで一緒にレクリエーションとして行いましょう。
間違い探しやクイズ形式にすることで、これまでの生活を振り返っていくことができ、活発な思い出話も聞くことができるかもしれませんよ。
■古布を使った雑巾作り
使い古したタオルや衣類を利用して、雑巾を縫う制作活動もリサイクル活動の一環です。利用者さんの生活リハビリにもなるだけでなく、施設内の掃除にも活用できます。
SDGs目標12「つくる責任 つかう責任」にもつながり、エコ活動を知りながら、子どもたちへ雑巾を作った思い出や、大掃除の思い出話などもできると思います。
2.グリーン活動(緑化活動)
利用者さんと一緒に自然に触れたり、栽培に携わる活動も環境問題への取り組みの1つです。
■屋外・ベランダ菜園の共同作業
園芸療法や活動として、プランターでハーブや野菜栽培を行うこともおすすめです。
育てて終わりではなく、育てたものを食事やおやつに取り入れることで、日々の生活と自然のつながりを実感できます。軽作業を中心にすることで、利用者さんにも負担なく取り組んでいただける活動になると思います。
■「施設花だんコンクール」の開催
各ユニットごとに小さな花壇を整え、季節の花を育てることで、交流や目標を持った取り組みも促進に繋がります。
さらに、完成した花壇を見て、職員や利用者さんに投票していただき、優秀ユニットなどを決めていくことで、利用者さんの生活環境が明るくなるでしょう。
■グリーンカーテン
最近ではご家庭や施設でも馴染みのある活動になっているグリーンカーテンの作成も環境問題への取り組みの1つです。
ゴーヤなどの野菜を栽培しながら、グリーンカーテンを設置することで、日陰を作りエアコンの設定温度を高めに設定できると思います。気軽に始められるエコ活動として取り入れやすい取り組みです。
3.節電・省エネ活動
光熱費や燃料費の高騰により、施設では大きな負担が強いられていますね。職員の皆さんにも節電のアナウンスが届いていると思いますが、業務を行いながらだと、なかなか意識が薄れてしまうかと思います。
そこで、環境問題への取り組みとして利用者さんと一緒に取り組んでみるのも1つの策です。
■利用者さんと一緒に「電気見守り隊」
使っていない照明やエアコンをチェックし、節電に協力する活動です。
「今日の節電指数」などを定めて、掲示板に記録していくことで達成感が得られると思います。
予めチェック時間を定めておくと、意識的に確認する習慣ができるようになってくるかもしれません。
4.クリーン清掃活動
■地域の清掃活動
利用者さんと地域を散歩しながら、トングとゴミ袋を持っていくだけで、地域のクリーン活動に携わることができます。
利用者さんが地域から感謝されるきっかけにもつながり、「ありがとう」を伝えてもらうことで、利用者さんにやりがいや喜びを感じてもらうことができます。
5.廃棄物のリサイクル
■施設で出た食品廃棄物の再利用
施設では多くの食品廃棄物が毎日出ると思います。これらを再利用するのも環境問題への取り組みの1つです。
導入への予算編成や費用は掛かりますが、食品廃棄物を分解して、堆肥にする機器もあります。施設で出た生ごみなどを活用することで、プランターや畑の堆肥のリサイクルとして、エコな循環を作り出すことができます。
デイサービスでできるエコ活動3選
次にデイサービスでできる環境問題への取り組みを紹介します。
1.エコクラフト制作
2.エコクッキング
3.環境の日・イベントデー
1.エコクラフト制作
■牛乳パックや新聞紙を使った工作
牛乳パックや新聞紙など不要になったもので、かご、小物入れ、壁飾りなどを作る活動は、手指のリハビリとしても有効です。
完成品は持ち帰っていただくことができるので、ご家族にも取り組みを知ってもらうきっかけにもなると思います。
■紙すき体験(再生紙づくり)
使い終わった紙を再利用して、しおりやポストカードを作ることも楽しく環境問題に取り組むことができる方法の1つです。
季節の花などを入れると見栄えもよく、ご家族へのお土産などにもなります。この活動のあと、さらにレク活動の一環として、暑中見舞いなどのお手紙作成にも活用できます。
2.エコクッキング
■地元の旬野菜を使った調理レク
地産地消の考えに基づき、無駄なく食材を使うレクリエーションを実施することも環境問題への取り組みに繋がります。
皮まで使うレシピなどを紹介し、無駄のないレシピを作成することで、SDGs目標2「飢餓をゼロに」の項目に貢献することができます。
3.環境の日・イベントデー
■エコ祭りの企画、実施
ペットボトルボウリングや、再生素材を使った縁日屋台風ゲームなど、楽しみながらエコを学べるレクリエーションの機会を演出すると、環境問題にあまり興味のない利用者さんでも、楽しく環境問題への取り組みを知ることができます。
職員も法被(はっぴ)などを着て参加し、施設全体で盛り上げられるとよいでしょう。
ショートステイでできるエコ活動3選
最後に、ショートステイでできる取り組みを紹介します。
1.環境ポスター作り
2.エコに関するインタビュー企画
3.リサイクルレクの実施
1.環境ポスター作り
短期利用でも取り組める簡単な活動として、塗り絵や貼り絵で「海をきれいに」「ゴミを減らそう」などのテーマを表現した啓蒙ポスターを作成し、施設内外に掲示することです。
商業施設などとも協力することで、地域との交流の機会にもなります。
2.エコに関するインタビュー企画
■「昔の暮らしから学ぶエコ」聞き取り企画
利用者さんの子ども時代の「もったいない精神」や工夫を職員が聞き取り、記録・掲示することで環境に対する意識の変化に繋がることがあります。
戦後の再利用文化や節電の知恵は現代にも通ずる内容が多く、世代間交流としても有意義になると思います。さらに、その知恵袋をカプセルトイにして、おみくじ感覚で今日のエコ教訓として毎日発表していくのも良いかもしれませんね。
3.リサイクルレクの実施
■廃油を使用したオーガニック石鹸製作
施設で出る廃油を石鹸に加工して再利用することは、楽しく環境問題に取り組める方法の1つです。
廃油での石鹼製作は、もしかしたら小学校の頃に学校で制作したことがある方もいらっしゃるかもしれません。廃油と化成ソーダで加工した石鹸は、清掃などに活用もできます。施設やご家庭へ持ち帰っていただくことも可能です。ただし注意点として、誤飲はもちろんのこと、身体や頭皮には使用しないようにしてください。
最後に:特別なことではなく、日常の中にエコを取り入れていきましょう!
福祉・介護施設における環境活動は、「特別なことをする」よりも、「日常の中にエコを取り入れていく」姿勢が大切です。職員の皆さんも利用者さんも無理なく、楽しみながら取り組める形で「気づき」を得られることが大切だと思います。
それこそが、自ら動きたくなる原動力となり、自立支援にも繋がり、持続可能で心豊かなケアの一環になっていくと思います。
また、こうした取り組みを広報誌やSNS、地域イベントなどで発信することで、地域からの信頼と共感を生み、安心の輪を広げることにもつながります。 6月5日をきっかけに、1年を通じた「環境にやさしい施設運営」を職員の仲間と共に育んでいきましょう。
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