米高騰と闘う桃太郎 50年近く親しまれる地元のおにぎり店 三重県四日市市
四日市市を中心に16店舗を展開する「おにぎりの桃太郎」(本社・同市久保田)にとって、秋は行楽やイベント需要で繁忙期となる。原材料の高騰が続き新米も大幅に値上がりするなか、創業から間もなく50年を迎える同社の取り組みを紹介する。
【今後の展望などを話す上田社長=四日市市久保田】
上田輝一現会長(74)が22歳の時に渡米し、ハンバーガーショップに感激して「日本のファーストフードはおにぎり」と直感。1975年に家業で営んでいた諏訪商店街のすし店の玄関横に広さ1.5坪の1号店をオープンさせ、2か月後に同市西浦に本店と工場を開設。88年、現在地に本社と工場を移転した。巨大な桃に入った桃太郎の人形が設置されたのはこの時だ。現在は市内に14店舗、菰野町と桑名市にそれぞれ1店舗を展開している。
【本社社屋にあるシンボル】
2019年に上田耕平現社長(43)が就任。翌年、米を三重県産のブランド米「結びの神」に変えた。冷めても美味しいのが特徴だが、炊き方が難しく、試行錯誤を重ねて強い火力で一気に炊き上げる炊飯システムを導入した。
米は年間契約で約200トンを仕入れているため不足することはないが、今年は昨年の1.5倍ほど高騰することが見込まれる。これまで一部の商品の値上げをしてきたが、今回は全商品の値上げが避けられない状況だという。
大幅な値上げは顧客離れを起こす恐れがあり、慎重に判断する。値上げをするとしても、美味しさや地元企業ならではの経営者の顔が見られる、同社ならではの付加価値アップを追求していく。
同社にとって運動会などイベント時の大口の予約販売は要で、雨天の場合に当日午前6時まではキャンセルできるなど、20年以上前から安心して発注できるよう工夫して売り上げを伸ばしてきた。食品ロスを減らし高品質を維持するために冷凍冷蔵技術も向上させており、現在は販路を拡大できる機内食への採用を目指している。
製造現場では、1人の従業員が異なる作業をこなすマルチタスクに力を入れている。調理のどの作業ができるのかを従業員がスキル表に記入しており、複数の業務をこなせる人は時給が上がる。モチベーションアップにもつながるため、従業員の気持ちに寄り添いながら効率化を図っている。
人気のだし巻き玉子は、全店舗分を工場で3人の職人が焼いていた。繁忙期は上田社長もフライパンを握るが、半自動で焼ける玉子焼き製造装置を導入し、職人以外でも焼けるように改善した。
これまでリーマンショックやコロナ禍など逆境があっても発展を続けてきた同社。地元で信頼されるローカルフードチェーンとして、挑戦を続けていく。
【ショーケースにずらりと並ぶおにぎり】