認知症の人は入浴も着替えもしたがらない…日常生活の工程が複雑で情報のパズルが完成しない世界とは?【認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方】
11:思考や行動が総合的にまとまらない情報のパズルが完成しない世界
○エピソード
ここ2週間ほど、毎日母に「お風呂に入って」と勧めていますが、「毎日入っているからいい。あなたが入りなさい」と言われます。下着が臭いますが。着替えも嫌がります。入ってしまえば「いいお湯」と喜ぶのですが……。
【あるある行動】入浴も着替えもしたがらない
服を脱ぎ、お風呂に入り、上がって、服を着て、髪を乾かすという、入浴など日常生活の工程は意外と複雑で、すべてのピースが揃って初めて完成するパズルのようなものです。前項までのように認知症の人は、記憶保持困難、言葉の理解や工程の想像ができない、見当識障害などにより一部が抜けてしまうなどの、パズルを完成させるためのピースが足りない世界の中にいます。
そのパズルが未完成のまま、周りに人にあの手この手で入浴を「お誘い」されると、「毎日お風呂に入っているのに」「今日は早朝あのに」「そんな気分じゃないのに」という気持ちになり、本人にとっては「納得」できない状態になります。それを「説得」し続ければ「疑念」が生まれ、もうパズルを組み立てるのも嫌になり、面倒になります。
しかし、関係性を壊したくないので、「もうやめた!うるさい!」とも言えず、「あなたが入ってきなさい」という「今お風呂に入れる権利を譲る」という言葉にしているのかもしれません。もしくは、入浴をしないことについて責められる状況から逃れたいという気持ちも少なくないでしょう。
そちらも着替えが面倒くさい人もいますし、失禁が他社にばれる恥ずかしさから、入浴を断固拒否する人もいます。
○もしあなたがこの世界にいたら?
眠くてどうしもうもないときに、お母さんに「お風呂に入りなさい!」と言われて、「面倒くさい!」「今は入る気分じゃない」と思ったことはないでしょうか?
【出典】『認知症の人に寄り添う・伝わる言葉かけ&接し方』著:山川淳司 椎名淳一 加藤史子