台湾の釣具屋をのぞいてみたら…想像以上に“ほぼ“、いや”モロ“日本だった!?
先日、仕事で台湾の首都・台北へ行く機会があった。海外出張のタイトなスケジュールとはいえ、仕事を完璧に終わらせてしまえば、そこから先は貴重なボーナタイムである。
普通なら「西門町でグルメだ」「九份で観光だ」と言いそうなところだが、そこはやはり釣り人。「台湾の釣具屋って、一体どんな感じ?」という純粋な好奇心が芽生え始め、さっそくスマホでグーグル検索を開始した。
その釣具店は、駅の真ん前という一等地に鎮座していた
画面に現れたのは、「漁拓釣具」という文字。「……“ぎょたくつりぐ”と読むのだろうか?」と、漢字文化圏ならではの親近感と違和感を同時に覚えながら、MRT(地下鉄)に飛び乗った。
最寄り駅に到着し、ホームに降り立って改札へ向かおうとしたそのとき、思わず立ち止まってしまった。何と駅のホームから真正面に、その釣具屋がドカンと店を構えていたのだ。しかし、建物の外壁に掲げられた看板を見て、私の脳内はさらにこんがらがることになる。
「ETUOH……“エトゥオー”って読むのか?」
台湾の地下鉄「MRT」(場所によっては地上)の唭哩岸駅で下車すると、ホームの目の前に見えるのが漁拓釣具の本店。公式HPによると、台湾全土で13店舗を展開しているようだ
入店前にAIでも読み方を検索してみたが…よく分からん。「世の中、知らなくてもいいコトもある」と自分に言い聞かせ、店内へと歩みを進めた(未だに分からない…)。
漁拓釣具 台北東華店
住所:台湾台北市北投区東華街二段322号
TEL:+886-2-2821-4486
HP:https://www.etuohshop.com/
営業時間:11時~21時30分
期待と裏腹の「デジャヴ」
そこは日本の釣具店そのものだった
海外の釣具屋を訪れる際、アングラーなら誰しも「その国独自の、見たこともないご当地ルアーに出会えるかもしれない」などといった淡い期待を抱くものだ。かくいう私も「台湾限定の面白いルアーでも発掘してやろう」とワクワクしていた。
ところが、一歩足を踏み入れた瞬間に押し寄せてきたのは、猛烈な「デジャヴ」だった。何というか…ほぼ、というよりモロ、日本の釣具屋と一緒なのだ! 陳列棚の雰囲気から漂う空気感、そして置いてある商品が、普段私が日本で通い詰めている量販店とほぼ変わらない。
おや、どこかで見たような…それもそのはず。だってほとんどが日本製ルアーだもん!
「どういうことだ…MRTに乗ったら知らないうちに日本に帰ってきていたのか!?」なんて錯覚に陥りつつ、とりあえず最も興味があるルアーコーナーへ直行してみた。
そこに並んでいたルアー群はDUO、ジャッカル、ケイテック、エバーグリーン、メガバス、O.S.P…。全体のほぼ100%に近い割合が、日本製ルアーで埋め尽くされている。
スタッフの方に聞いてみたところ、現地アングラーの日本製品に対する信頼度はハンパなく、もはや“妄信“に近いレベルで愛されているらしい。日本のモノづくりの凄さを再確認すると同時に、「台湾製の尖ったルアーが見たかったな~」と、少々贅沢な物足りなさを感じてしまった。
(帰国後に知り合いに聞いたところ、町の小さな釣具屋には「ザ・台湾!」なルアーが置いてあるらしい)
いやいや…もう日本と同じじゃん。日本人なら「コレ…怪しいな~」と疑ってしまうような商品が一切ない!
肩透かしの先で出会った、台湾最大手の“本気”
ルアーコーナーでの「ほぼ日本」という現実に少々肩透かしを食らいつつ、次はロッドコーナーへと向かった。
こちらもルアー同様、シマノやダイワといった日本ブランドが圧倒的なシェアを誇っている。しかし、ここでようやく「台湾ならでは」の要素と出会うことができた。
「路亞」=「ルアー」のことを指すのだが、その発音は「ルヤ」となるのが台湾式
実はこの「漁拓釣具」さん、単なる小売店ではない。台湾最大手の釣具問屋という巨大なバックボーンを持っており、何を隠そう「HEARTY RISE(ハーティーライズ)」という、気合いの入った自社ブランドを展開しているのだ。
ロッドコーナーの一等地には、このブランドの「VALLEY HUNTERⅡ」と「SLASH MONSTER」という、2種類のモバイルルアーロッドが前面に押し出されていた。
「VALLEY HUNTERⅡ」(左)と「SLASH MONSTER」(右)の、HEARTY RISEが誇る2トップ。ブランクスの素材もナノアロイ、トレカT1100G、トレカM40X、ガイドも富士工業と、日本製ロッドと同じ条件で製造されているようだ。対象魚はライギョ(天然)やバラマンディ(管理釣り場)、グルーパー(天然&管理釣り場)、バス(管理釣り場)など
「ほう…問屋さんのオリジナルか」と、興味本位で実際にロッドを手に取ってみたのだが、これが凄かった。全体の質感が極めて高いのだ。
ブランクスのシャープさやデザインにいたるまで、日本のハイエンドロッドと並べても遜色ないレベルで作り込まれている。「何なら今ここで、プライベート用に買っちゃおうか」と、財布の紐が緩みそうになったくらい高品質なロッドであった(思っただけで、そもそもそんなおカネ持ってないんだけどね)。
渓流用ルアーロッドもスタンバイ。対象魚はマシールと呼ばれる、日本でいうニゴイに似た魚で、最大70cmクラスにもなるという
エサ釣りコーナーで遭遇!謎の「ランバダ」
われわれ日本人としては、カタカナの「マルキユー」を見慣れているだけに、漢字で「丸九」と表記されると「…マルマル? キュウキュウ?」と混乱しそうになる…
続いて、エサ釣りコーナーの様子を探ってみることにした。
台湾ではウキ釣り(フカセ釣り)の人気がひじょうに高いらしく、棚には日本製のウキがこれでもかと大量にラインナップされていた。おもな対象魚はキビレやボラ、アイゴ、イサキなど。実際、台北を流れる大河「淡水河」のほとりでも、日本のフカセ釣りと同様に撒きエサで魚を集めるスタイルの釣り人を見かけた。
淡水河の河口でフカセ釣りに興じるジェントルマン2人組。ちょうどいいタイミングでボラが食い、ロッドが大きく曲がるが…このあとバレた…
となれば、気になるのは撒きエサの種類だ。コーナーを覗くと、やはり鎮座していたのは日本の定番ブランド「マルキユー」。台湾でもその人気は絶大らしいのだが、ここで台湾ローカルの意地を見せる大ヒットメーカーに遭遇した。それが、台湾メーカーとしては大きなシェアを誇るという「黏巴達」なるブランドだ。
「黏巴達」と書いて、日本語でカタカナ読みだと「ニエンバーダー」、意味はダンスのジャンルのひとつである「ランバダ」とのこと…否が応でも世界の(解釈の)広さを感じさせられる
パッケージの漢字が気になり、その場でスマホ検索してみた。すると、発音は「ニエンバーダー / nián bā dá」。さらにその言葉が持つ意味を突き詰めていくと…何と、あの世界中で一世を風靡したダンスの「ランバダ」だという。
なぜ、よりによって釣りエサのブランド名に「ランバダ」を選んだのか? 水中でお魚たちが情熱的に踊り狂ってしまうほど、集魚力がすさまじいのか? 真相は謎だが、台湾の釣り業界が持つ独特のユーモアに触れた瞬間でもあった。
サビキ釣りも人気が高いようで、HEARTY RISEブランドの「SABIKI」もラインナップ。「柔道=JUDO」と同じように「サビキ=SABIKI」という表記が世界標準(なのだろうか…)!
アパレル&収納ガジェット事情
2階へと上がると、そこはアパレルや大型用品のフロアになっていた。ダイワ、シマノ、がまかつといった日本のメガブランドのウェアがズラリと並ぶなか、ここでも自社ブランドのHEARTY RISEが健闘している。
これまたスタッフからの情報だが、現地ではバスプロやフカセ釣り師が着ているような、スポンサーロゴが全面に入ったド派手なトーナメントシャツ風のデザインがトレンドのようだ。
整然と並んでいるアパレル群。このほかにもフィッシングバッグやライフジャケット、フィッシングシューズなど、品ぞろえは本当に豊富だ
さらに、釣行に欠かせないハードグッズのシェアも、日本と完全に一致していた。クーラーボックスはダイワとシマノの二大巨頭が市場を圧倒。一方で、バッカン類に関しては台湾発のブランド「FUDIKA」の人気が高く、独自のシェアを確保していた。
クーラーボックスは、ほぼほぼ日本製。日本以上に「キャッチ&イート」の傾向が強いようで、大型クーラーの需要は大きい。バッカンは台湾ブランドの「FUDIKA」が売れ筋のようだ
そして極めつけはタックルボックスである。棚の主役として君臨していたのは、われらがメイホウの「バケットマウス」シリーズだった。もはやライバル不在の独占状態で、私がたびたび遊びに行っている台湾の釣り堀でも、現地のローカルアングラーたちが当たり前のようにバケットマウスを愛用している姿を何度も目撃している。
日本の「使いやすさの基準」は、海を渡った台湾でも完璧なスタンダードとして溶け込んでいるようだ。
タックルボックスは、メイホウの「バケットマウス」シリーズと「ランガンシステムBOX」シリーズのシェアが圧倒的。もはや「世界のメイホウ」だ
台湾の釣具屋は、日本人アングラーにとって「いつもの店の延長線」
駆け足で台湾の釣具店「漁拓釣具(ETUOH)」をレポートしてきたが、いかがだっただろうか。 「海外ならではの怪しい釣具」を期待して行くと拍子抜けしてしまうかもしれないが、視点を変えればこれほど心強い話はない。
遊漁船でのソルトルアーゲームも盛んなようで、メタルジグやタイラバ、タチウオテンヤなども壁一面にビッシリと並んでいた
もし、みなさんが「ちょっと台湾に旅行に行くから、ついでに現地の釣り堀や海、川で竿を出してみようかな」と思い立ったとする。その際、日本からわざわざタックルを持って行かなくても、街中の「漁拓釣具」に駆け込めば、日本と全く同じクオリティのアイテムが何でもそろってしまうのだ。いつも訪れている釣具店が台湾にもある、という感覚だ。
「漁拓釣具」は今年で創業50周年という、台湾釣り業界の超老舗。台湾を訪れた際には、ぜひとも立ち寄ってほしいショップだ
みなさんも台湾を訪れる機会があれば、ぜひ一度「ETUOH」を訪れてみてほしい。日本の釣具が海を渡り、現地の釣り人たちにいかに深く愛されているかを感じるだけで、日本人としてはウレシイ気持ちになれるはずだ。
私も次回の台湾釣り堀釣行の際には、現地で人気の売れ筋ルアーでも買い込んで、大物をねらってみようと思う(いつもながら、いつになるかは知らんけど)。
釣具屋ではないが、帰りに寄ったスーパーマーケットで台湾ならでは(東南アジアならでは?)な光景が。鮮魚コーナーにテラピア(左)とバラマンディ(右)が並んでいた。両方ともとても美味しい魚なのだが、日本で「食材」として見かけることは、まずないだろう…
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レポーター
プロフィール:くどぅちゃん
バイク雑誌→釣り雑誌の編集者を経て、現在はフリーランスのライター&編集者に。個人的な趣味としてもバイク&釣りを楽しんでいるが、完全にヘタの横好きで費用対効果がひじょうに悪いのが悩みドコロ…。