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Penthouseもカバー!小沢健二「ぼくらが旅に出る理由」新しい年にふさわしい90年代の名曲

Re:minder

1996年05月16日 小沢健二のシングル「ぼくらが旅に出る理由」発売日

新年の決意を代弁してくれる「ぼくらが旅に出る理由」


新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

さて、そんな挨拶を、最初に誰に伝えるのだろう? 親や兄弟、パートナー、新年早々お仕事という人もいるだろうし、1人暮らしの人は、最初に出会った友達かもしれない。あるいは、不特定多数の人へ、XやInstagramなどでメッセージを送る人。

ではそんな新たな年の始まりに、最初に聴く音楽は? 新たな年の始まりに、去年の嫌な思い出はリセットして、前を向いて歩いて行こう。そんな決意を代弁してくれそうな曲が、小沢健二の「ぼくらが旅に出る理由」だ。

この曲は、1994年8月31日に発売された、小沢健二の2枚目のアルバム『LIFE』に収録されている。同アルバムからのシングルカットは数多いが、本作もリリースから2年近く経った96年5月16日に、イントロと歌詞の一部分をカットしたシングルエディット版が発売。同年4月よりスタートしたフジテレビ系ドラマ『将太の寿司』の主題歌ともなった。

個人と世界が繋がっていることをナチュラルに意識させてくれる名曲


遠く外国へ旅立つ恋人を、空港まで見送るために、東京タワーから続く道を歩く2人。あまり乗り気でなかった彼女もはしゃいでいる。歌詞2番では “摩天楼”=おそらくニューヨークから恋人の手紙が届き、それに返信する主人公。

今なら国際電話はおろか、SNSやZoomで簡単に繋がることができるが、この曲が登場した1994年は、ようやく携帯電話に買取制度が導入され、一般に普及する下地ができた年。遠距離恋愛のカップルが心を通わす手段は、まだまだ手紙という時代である。恋人同士のミクロな視点での心の交換に対し、サビの部分では、

 遠くから届く宇宙の光
 街中でつづいていく暮らし
 ぼくらの住む世界では旅に出る理由があり

ーー と、一気にマクロ視点へと広がっていく。小沢健二の楽曲には、こうした広がり方をする作品が多い。何気ない暮らしの中にも、宇宙の光は届き、夕暮れは訪れる。”君” と “僕” の関係性が、自然な流れで “ぼくら” と複数形になっていく。個人と世界が繋がっていることをナチュラルに意識させてくれる名曲なのだ。

ポジティヴで多幸感に溢れた作品が多い「LIFE」


この曲のPVも印象深い。朝起きて手を洗い、歯を磨きながら新聞を読み、ヘアをセットし、最後はスーツを着て出かけるまで、延々と小沢健二のバストショットを1カメの早送りで映し出しているだけ(途中で分割画面になったり、目薬をさしてティッシュがどこにあるかわからなくなるところが面白い)なのに、映像を見ているだけで、今日も1日頑張るか! となってしまうのだから、もはや魔力である。

『LIFE』の収録曲にはポジティヴで多幸感に溢れた作品が多いが、「ぼくらが旅に出る理由」は、別れのワンシーンも、あるいはPVで表現された平凡な朝の風景も、人生の句読点の1つであるかのように描きつつ、その先の未来に向けて歩き出していこうという、前向きな意志を強く感じさせる。

 誰もみな手を振ってはしばし別れる

ーー この締めの一言も複数形で表現されている通り、誰もが自分の物語としてシンクロできるのだ。

渋谷系というジャンルの特性でもあるが、小沢健二はその楽曲が様々な過去の名曲からの影響、インスパイア、オマージュで語られることが多い、その一方で、言葉がストレートに伝わる歌唱法でもあり、聴き手とダイレクトに共振する強力なリリックを持ち合わせてもいる。

毎日スタジオアルタに通い続けたタモリへの心からのプレゼント


この曲が再び注目を集めたのは、2014年のことだった。フジテレビお昼の長寿番組『笑っていいとも!』の最終回直前に、小沢健二が16年ぶりのテレビ出演を果たした際のことである。ボーダーシャツにメガネ姿の小沢健二は、年相応のアラフォー・ムードを醸し出しながら登場した。タモリと小沢の仲の良さは、多くの人が知るところ。しばしの楽しげなトークがひと段落すると、小沢はおもむろにギターを抱え、「タモリさんと番組スタッフの皆さんに」と、歌い出したのが「ぼくらが旅に出る理由」だった。

その16年の間、小沢はニューヨークで暮らし、その後ラテンアメリカ、アフリカ、アジアの国々を周り、自分の目で世界を見つめ直す時間を持った。この海外放浪期間の様々なエピソードをタモリに語った上での、この曲の弾き語りである。

続いて、タモリがその歌詞を絶賛したという「さよならなんて云えないよ」、さらには「それはちょっと」「ドアをノックするのは誰だ?」をメドレーで歌った。その最初が「ぼくらが旅に出る理由」だったことは、16年間海外を放浪してきた小沢が、16年(いやそれ以上の長い年月)、毎日スタジオアルタに通い続けたタモリへの心からのプレゼントに思え、観ているこちらも胸熱になってしまった。ことに、テレビで観ていた往年のオリーブ少女、あるいはティーンエイジャーの頃、小沢の音楽に出会った氷河期世代たちは、このシーンにどれほど勇気づけられたであろう。

渋谷系直撃世代のみならず、幅広い層に愛されるナンバー


「ぼくらが旅に出る理由」は、カバーも数多い。2008年の安藤裕子をはじめ、フジファブリック、野宮真貴、さらにはアニメ映画『GAMBA ガンバと仲間たち』の主題歌として倍賞千恵子がカバーしている。つい最近も、Penthouseが日産自動車SUV “エクストレイル”(X-TRAIL)とのコラボ動画『NISSAN X-TRAIL e-4ORCE presents THE CONCERT DRIVE』内でカバーし、12月20日に配信リリースもスタートした。

リリースから30年が経ち、渋谷系直撃世代のみならず、幅広い層に愛されるナンバーとなった「ぼくらが旅に出る理由」は、いつの時代に聴いても普遍的な魅力を放っている。小沢健二の持つポジティヴ・シンキングが「人生の旅」の一幕として表現されたこの曲こそ、新たな時代の幕開けにふさわしい1曲に思えるのだ。

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