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13台の機械と9人の職人によって造られる「グッチ」のビットローファー[ホースビット 1953]を徹底解剖!

Dig-it[ディグ・イット]

ローファーに限らず、“革靴の名作”と呼ばれるもののほとんどは歴史あるシューメーカーが生み出し、時代を超えて愛されてきた。しかし、ラグジュアリーブランドであ「グッチ」のビットローファーはその中でも一線を画す稀有な存在である。

稀有な発展を遂げてきたキング・オブ・ビット

「グッチのビットローファーが革靴史に革命を起こした」。そう言い切っても何ら不自然でないだろう。

世界屈指のラグジュアリーブランドとしてその名を轟かせる「グッチ」の創業は1921年。イタリアはフィレンツェで鞄店として開業した。同ブランドが目指したのは、トスカーナの比類ない素材とクラフトマンシップ、そしてエレガントな英国式美学を融合することであり、ブランドの原点としてその後も受け継がれ、グッチの伝統を育んでいった。

その後、躍進を遂げた「グッチ」が、ローファーに馬具のデザインを落とし込んだ“ホースビット”を掛け合わせて生み出したのが1953年のことだ。幾度の廃番を経て、いまもなお世界中から支持を集めるこの名作はいわば「キング・オブ・ビットローファー」。イタリアで生まれながらも海を渡ってアメリカで大流行し、プレッピースタイルのアイコンとしても人気を博すなど、革靴史のなかでほかに例をみない発展を遂げている点も見逃せない。

何よりも米国靴や英国靴にはない柔らかさと気品を兼ね備えたルックスや、履いていることを忘れるほどの履き馴染みの良さはまさに一級品。この歴史的名作は革靴好きであれば必ずや所有しておきたい一足である。

Horsebit 1953(ホースビット 1953)を徹底解剖!

グッチのアイコンといっても過言ではない不朽の名作。柔らかなスムースレザーとビットのコンビネーション、マッケイ製法による履き馴染みと返りの良さなどその魅力を挙げればキリがない。イタリア生まれでありながら、名著『オフィシャル・プレッピー・ハンドブック』に掲載されるなど、アメリカでも愛された稀有な1足だ。15万2900円(グッチ クライアントサービスTEL0120-99-2177)

ヒールは約1.5センチ。アウトソールのコバ部分を丸く削り出すことで張り出しを抑え、丸みのある柔らかなシルエットを生み出している。ヒールの曲線は着用者の踵をしっかりとホールドするための機能的な設計だ。

ハの字に入るヒール部分のステッチが特徴。これらのステッチは役割分担がなされた熟練の職人による手作業によって施されている。ヒールにかけての絞り込みは少なく、着脱が容易なのも◎。

アウトソールはレザー製。高級紳士靴に多くみられるグッドイヤー製法ではなく、最小限のパーツで構成されるマッケイ製法を採用することで、シャープなルックスを実現し、何よりも新品時においても履き馴染みの良さを感じられる。

ブラックとともに定番カラーとしてラインナップするブラウン。シックな印象のブラックとはひと味異なる、柔らかなムードを醸し出す。ミリタリーやデニムなど、ややラギッドなパンツとも好相性。15万2900円

ローファーの顔とも言えるモカはハンドステッチによるもの。柔らかな履き心地の実現にひと役買っている。

アイコニックなゴールドのホースビット。[ホースビット 1953]こそがビットローファーの元祖である。

同モデルが誕生した1953 年に使用されたタグと同じデザインの“復刻タグ”。細部にまでこだわりが宿る。

革靴好きを虜にする名作は13台の機械と9人の職人によって造られる。

これらの写真は「グッチ」の[ホースビット 1953]の最新のメイキングカットである。この名作が造られるまでの過程において、13台の機械と9人の職人、そして7枚の革が必要となる。フロントのモカ縫いなどのステッチは精密な手作業によって施され、柔らかな履き心地と美しいシルエットを生み出している。

また、コバ部分を手作業で磨き上げることで丸く削り落とし、全体としての柔らかなムードを演出。これらの手作業によって、革靴好きであれば誰もが憧れる[ホースビット 1953]は誕生するのだ「グッチ」のアイデンティティともいえるゴールドに輝くビットの磨きも手作業で行うなど、これらの写真を見ればクラフトマンシップが存分に感じられる。

2ndお馴染みの面々が語る“グッチのビット”の魅力

「ローファーは昔、“不良の履き物” と言われていて、映画『サタデーナイトフィーバー』でジョン・トラボルタがディスコで踊るシーンの足元はビットモカシン。そのスタイルに憧れ、16歳の時に人生初のローファーとしてグッチのビットを買いました。何足も履き潰し、いまも大切にしています。人生をかけて関わっていく革靴という分野において、自分のバイブルです」(「GMT」代表取締役・横瀬秀明さん)

「ひと言でいえば“名作” ですね。ビットローファー以外も含めるとグッチの靴は20 足ほど所有しています。“色気” という言葉で表現すると陳腐に感じてしまうほどのエレガンスがあり、本来はカジュアルな革靴であるローファーでありながらもドレッシーなムードを放っています。それでいて履き心地や革の表情の柔らかさは優雅であり、自分にとって欠かせない1足です」(「ビームスF」ディレクター・西口修平さん)

「“ビットローファーといえばグッチ”というのは、トラッド好きにとっての共通認識だと思います。イタリア生まれでありながら、アメリカントラッドの分野においてもオーセンティックなアイテムであり、それでいてエレガンスも感じさせる。まさに唯一無二の存在だと思います。イタリアのプロダクトがアメリカでも受け入れられたという歴史にも個人的にはグッと来ます」(「J.PRESS & SON’S」ディレクター・黒野智也さん)

「約10年前にフィレンツェで購入しました。1980 年代の復刻モデルで、ショートノーズ、ヒールがやや高めのデザインのものです。馬具の轡(くつわ)をモチーフとしたビットの輝きは、それだけで気品を感じます。靴自体に存在感があるので、コットンスーツなどのシンプルなスタイルに合わせることが多いです。まるでスリッパのような履き馴染みの良さも魅力です」(「トゥモローランド」バイヤー・川辺圭一郎さん)

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