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「机の下の足型」は氷山の一角! 全国の小学校にひっぱりだこの教師が飛び込み授業で目を疑った教室とは?

コクリコ

「机の下の足型」は氷山の一角! 全国の小学校にひっぱりだこの教師が飛び込み授業で目を疑った教室とは?

全国の小学校で3000時間以上の「飛び込み授業」を行ってきた菊池省三先生。彼が教室で目撃した「机の下の足型」など、子どもを型にはめ、壊していく公教育の歪みとは?学級崩壊や不登校を防ぎ、子どもを救うための「コミュニケーション教育」の重要性に迫ります。

飛び込み授業をする菊地省三氏 

数々の崩壊した教室をコミュニケーションの授業で立て直し、NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」や日本テレビ系列「世界一受けたい授業」などにも出演した教育者・菊池省三先生。相手の話を聞く、自分の考えを話す。コミュニケーション教育によって子どもの心は成長し、教室が落ち着ける場所となれば学習意欲も上がります。

現在、菊池先生は全国の国公立小学校に招かれ「飛び込み授業」を行っています。その時間は約10年で3000時間以上。そこで子どもたちを壊す教育を目の当たりにすることも。著書『足型をはめられた子どもたち』から、いま学校で何が起きているのか、なぜ、子どもが荒れてしまうのか、なぜ、コミュニケーション教育が必要なのかをご紹介します。

4月、「成長したい」と子どもたちは答える

「近所の子が登校拒否になって……。あんなに明るい子だったのに」
「担任が学級崩壊で休職してしまった。新しい担任が来たけど、学校の先生ってそんなに厳しい仕事なの?」

保護者のみなさんの不安や戸惑いを耳にすることが少なくありません。ことが起きて、強い問題意識を持たれる方たちです。一方で意外と多いと感じるのは、こんな声です。

「小学校がここまで大変な状況なんて? 知らなかった」

わが子が幼稚園まではとにかく可愛がって育てた。でも小学校に上がると、“現実”が待っている。そのことを知らなかった、というケースです。

前述の登校拒否の他に、学級崩壊や子ども同士のスマホのメッセンジャーを通じたトラブル、暴力事件まで……。データも過去最多を更新し、小学校の不登校児は44人にひとりの13万7704人、精神疾患によって休職した教員は3458人、学校暴力は8万2997件(いずれも2024年の文部科学省による)とあり、これは日本社会全体の由々しき問題です。

私は教員時代、毎年4月の最初の授業で子どもたちに、「一年後に成長した自分でありたいか、否か」と聞いてきました。ここでほとんどの子が「成長したい」と答えます。ごくたまに「したくない」と言う子もいましたが、少し追加で質問をしていくと「成長したい」と答えたものです。

そうした子どもの希望に現実は応えられているか、私が実際、全国の小学校でこの約10年間に3000時間以上の授業を行うなかで見てきたものも、厳しいと言わざるを得ない状況でした。

約10年3000時間超の飛び込み授業で見たもの

かくいう私は、それ以前33年間勤めた北九州市の公立小学校の教員時代、学級崩壊した多くの教室をコミュニケーション教育によって立て直してきました。その様子を2012年にNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」で取り上げていただいたこともあり、「菊池道場」という教育関係者のネットワークが広がっています。現在、全国30都道府県約500人が私とともに学んでいます。

なぜ、数々の小学校を見ることができるのかと言いますと、私は2015年に、54歳で福岡県北九州市の公立小学校教員を早期退職し、その後は、教育実践研究家として全国の公立小学校を中心に「飛び込み授業」を続けてきたからです。

飛び込み授業とは、先生たちが見学するなか児童の前で行う実践的な授業(示範授業)のことです。私は各地からお声がけをいただき一日1~3コマの時間でコミュニケーションの要素を取り入れた授業を行っています。ありがたいことにこれまでに8つの自治体から教育アドバイザーなどの委任状をいただき活動しているところです。

北は北海道、南は沖縄まで、年間250日以上、各地の教室に足を運んでいます。この10年間での授業時間の累計は約3000時間でした。いま最も、日本の子どもの98%が通う公立小学校の教室の現状を、時間をかけ、幅広く見続けてきている存在だと思っています。

小学校2年生の机の下に置かれた足型

私が伝えたいところは、日本の公立小学校の厳しい現状と、実行可能なソリューションです。実際、教室がここまで来ているのかといういくつかの事例を紹介します。

2016年、四国のある小学校の2年生の教室を訪れたとき、私は目を疑いました。子どもたち全員の机の下に、足型が置かれていたのです(イラスト参照)。 「何ですかこれ?」と尋ねると、学校を案内してくれた先生はこう答えました。 「この位置に足をちゃんと置いて座れ、という指示なんです」

小学校2年生が使っていた机と椅子。机の下にあるのは足型。椅子の座面には滑り止めのマットが敷かれています。イラスト 野波ツナ

椅子の座面を見ると、クッションではなく滑り止めのマットのようなものが敷かれています。「おしりをこの位置に置きなさい」「動かしてはいけません」ということです。思わず、“教育虐待”という言葉が頭をよぎりました。「そこにじっとして座って、学力を上げなさい」と、学校側から強制されているとしか見えません。

型にはめる教育の一方、暴力を受ける教師も

同年、九州地方では、本来子どもたちがわいわいと楽しめるはずの給食の準備時間に、「ランチビフォー」という時間を設定して、子どもに次々とプリントの問題を解かせる学校がありました。

また2023年、四国の別の小学校では、最初から黒板に授業内容がすべて書き込まれていて、それを子どもが教師に代わってクラスメイトに向かい読み上げるのを、「セルフ授業」と称した授業も目にしました。

荒れた教室も少なくありません。2024年、関西のある小学校。私は2年生の教室での飛び込み授業を任されていました。自分の授業の前に、算数の授業の様子を参観しに行きました。

27人の学級に、10ほどの空席があります。その教室には女性の校長先生が補助で来ていて、運動場で遊んでいた男の子ふたりを連れ戻してきました。すると、彼らは、先生の机の上のパソコンでプロ野球の動画を見始めたのです。校長先生が、騒ぐ子どもたちを注意したら、男の子が髪を引っ張ろうとする場面も目にしました。

同様に、私が直接経験したことではありませんが、全国を回るなかで知り合った先生方から、「子どもに日常的に噛みつかれて、流血している」といった暴力行為についてもつねづね耳にしています。

現役教師が言えない代わりに重大事態を発信

もちろん私は、全国の厳しい状況にある教室にこそ呼ばれるという面はあります。それゆえ、わざわざ厳しい面を切り取って述べる、ということは大なり小なりあるでしょう。とはいえ、ここで紹介するエピソードは全国の一定地域の話ではなく、各地域で起きている出来事です。これらを横つなぎのようなかたちでまとめたのは新しい点でしょう。

私は確かに目にしました。大都市圏のみならず、山奥の小さな小学校でも壊れていく教室と子どもの姿を。それらはある意味、「数字以上」の実態を表していると思います。

もうひとつ、現職の先生方は、外の世界に教室で起きていることをなかなか発信しないゆえ、私のような立場の者が担うという点も意義としてつけ加えておきます。

後にくわしく記しますが、教育委員会など上部からの方針に従った結果として教室が厳しい状況に陥っても、現場の先生たちはそこでわざわざ反発するエネルギーを注ごうとしない傾向があります。また、自分の担任する教室が荒れてしまった場合、校内の他の先生に迷惑がかかることを恥ずかしいと思う人も少なくありません。

だからこそ、本書では1つ目に、現職の教員ではない私が外に伝えるという役割も果たしたいと考えています。

子どもたちには公立小学校で「話す力」「聞く力」をつける教育がされていない。<Photo by iStock>

子どもが壊れる原因とは

私は誰が悪いのかを言いたいわけではありません。ただ、子どもたちが壊れる原因は見えています。それが2つ目に言いたい点です。

私は、荒れた教室を立て直す請負人として学級崩壊した多くの教室でコミュニケーションの授業を行い、1年ないしは2年で子どもたちが変わっていく姿を目にしてきました。なぜなら、「言葉が育てば心が育ち、心が育てば人が育つ」からです。

しかし、現状、子どもたちには公立小学校で「話す力」「聞く力」をつける教育がされていません。逆に学校の教育は、「型にはめる」ほうへほうへと向かっています。書名を『足型をはめられた子どもたち』としたのは、先に紹介した足型はすでに撤去されていますが、「足型」がいまの公教育の象徴と捉えているからです。

3つ目に伝えたいのは、現状を変えるソリューションのために、日本全国の公立小学校へのコミュニケーション科の授業を導入することの提案です。週に1コマ、年間35週(1年生は34週)。主要教科の授業時間は減らしません。たとえばその1コマで、子どもたちがテーマに応じて自分の考えを話し、クラスメイトや先生の意見を聞いて、コミュニケーションをとることを学ぶというものです。

子どもたちは、どんなに授業で知識を教えられても、言葉を駆使して相手に自分の考えや情報を伝える方法を教わりません。今も昔も同じことです。読者となっていただいているであろう、保護者のみなさんの世代もそうですし、いまの子どもたちもそうです。

「机の下の足型」は、教師と子どものコミュニケーションができていれば、それ以前に、教師がコミュニケーションの重要性をわかっていたなら、ガチガチに座らせる必要などないはずです。

授業中に好き勝手する子どもたちも、教室に子どもたち同士のコミュニケーションがあれば、そこが落ち着ける場となり、安心して学べます。教室が落ち着かないから外に飛び出すとも言えます。いまの子たちのほうが、型にはめる教育にさらされているから壊れていくと言えます。型にコミュニケーションはいりません。子どもたちがクラスメイトを警戒し心理的安心感がない教室は当然、荒れていきます。

「どうして菊池学級の成績が伸びたのか」

私がとるアプローチはたったひとつと言えます。

「教室内のコミュニケーション」

学年のスタートには学級目標を決めます。具体的には「一年後に言われたい言葉、言われたくない言葉」などといったテーマで話し合ったり、ホームルームではその日の日直のいいところをクラスメイト一人ひとりがほめたり、とおたがいをわかり合うことにより教室は子どもたち一人ひとりの居場所になっていきます。

子どもたちがあげた「一年後に言われたい言葉」には、前向きな言葉が並ぶ

子どもたちが教室に溶け込めば、教室全体の学力も伸びます。かつて私は市の教育センター長から、「どうして菊池学級の成績が伸びたのか」と理由を聞かれたものです。

私は全国で行っている飛び込み授業でも、子どもが変わる様を目にし続けています。一コマずつの授業が多いですが、「ひとつのテーマについて話し合う」「教室を自由に動き回って、クラスメイトと話し合う」などといった授業方法を通じて、教室の雰囲気が変わることが何度もありました。

このコミュニケーション科の設立が、日本の教育現場での根本的な状況改善につながるとも考えています。

いまの日本の教育現場では、対症療法ばかりが考えられています。学力が下がった、いじめや不登校が増えている。そういった問題が起きた末に、あと追いで対策を考えることがくり返されているのです。全国学力テストを復活させたり、いじめや不登校に関して法整備を行ったり、全国的なアンケート調査を実施したりと。

前述した「足型」や「給食の準備時間中のプリント」は、まさに学力テストの点数を上げるための対症療法でした。

この対症療法が主体となっている背景には、3つの側面があると私は分析しています。

ひとつは教育行政によるもの。学力テストの結果への重圧から、現場の先生が教育委員会や管理職の指示に従わざるを得ない状況となっています。

もうひとつは教員の不足です。約10年で離職者数が約3倍となり、1校あたりに必要な教員数は増加しているのに、なり手の数は年々減っています。そうなると教員自身が日常業務に追われ、型にはまっていくでしょう。

さらにあげるなら、3つ目としてパソコンやタブレットを使うICT教育の導入で現場の教師が混乱しています。

しかし、そこを責めてばかりいても、子どもが壊れていっている根本的な問題は解決しません。また対症療法のくり返しとなるでしょう。

重ねて申し上げますが、教室の子どもたちにコミュニケーション力がつけば、個人(クラスメイト)の尊厳を尊重し、教室を公共の場と捉えられるようになり、結果的には豊かな人間性と創造性が備わっていきます。やがては学級崩壊やいじめの問題に対しても、時に学力低下の問題に対しても、問題の根本を改善する予防策になりうるのです。

◆今回ご紹介の書籍はこちら 

『足型をはめられた子どもたち』
NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」、日本テレビ系列「世界一受けたい授業」などで、崩壊した教室を立て直す授業が紹介され大反響を呼んだ、菊池省三先生のコミュニケーション教育。子どもの生きる力を伸ばすメソッドへの支持は拡がり、講演や研修会は年間250回に及んでいます。

いま、教師の指導者として全国の小学校に招かれ、10年のあいだに行った飛び込み授業(示範授業)は3000時間超。各地の教室をもっともよく知る教育者です。そこで出合ったのが「机の下の足型」に代表される子どもを「型にはめる教育」。

本書では、公立小学校の現状を知っていただき、その解決策として荒れた子どもたちを変えてきた菊池先生のコミュニケーション教育を紹介。保護者のみなさんにとっても、子育てについての認識が180度変わる「ほめ方」や「叱り方」「語彙の増やし方」「考える力のつけ方」など、子どもを社会に送り出すために、家庭でできる実践法をお伝えします。

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