【ダルバート行脚・提唱者独占インタビューもあり】エスニック界隈で突如流行の「ダル餅」って何だ!? “聖地&発信地” で奇跡の邂逅を初体験 / 鶴ヶ島「アムリタ」
2025年もついに3月に突入したが、実はエスニック好き界隈では今年に入ってから「ダル餅」なる料理というかムーブメントが盛り上がりつつあるのをご存知だろうか。
あるエスニック好きの方が1月初旬、X(旧ツイッター)にダル(ひきわり豆)スープに餅を投入した写真を「#ダル餅」とハッシュタグをつけて投稿したところ一気に拡散。常連客のリクエストに応じる形でダル餅をレギュラーメニューに加えるエスニック料理店まで出てきている次第なのだ。
・ダル餅の “聖地&発信地” 参りへ
というわけで日本で最初に「ダル餅」を提唱した方のお気に入り店であり、ダル餅の聖地とも発信地ともされるインド&ネパール料理店「アムリタ インドスパイスカレーとナンと」に足を運んでみた。
東武東上線鶴ヶ島駅から徒歩約3分。近隣のファミリーやカップルも訪れやすい “アットホームなカレー屋さん” という雰囲気もありつつ、本格的なインド及びネパール料理も提供している。
店内には写真とともにたくさんのメニューが掲げられていてついついうれしくなってしまう。ノーマルのナン(330円)、チーズナン(650円)、ガーリックナン(530円)に加え、はちみつチーズナン(750円)、バターココナッツナン(530円)、チョコレートナン(700円)などの変わり種も並ぶ。
さらには「とろ~りチーズのタンドリーチキンピザ(単品900円 / ランチはサラダつき930円)」という新進気鋭のナンメニューも興味と食欲をそそられる。
同店の料理人はネパール出身。バターチキンカレーとナンのような北インド系カレーを提供するいわゆる「インネパ店」でもあるが、ネパール料理も豊富にラインナップ。
厨房のタンドールの上ではマトンを干して自家製のスクティ(スパイスに漬け込んだ肉を乾燥させてさらにスパイスで和えて提供するネパール料理)も作るほどの本格派だ。
・ダルバートの種類も豊富
金・土・日限定の「アムリタスペシャルダルバート定食(1780円)」や
「ネパール×12種の野菜入りベジタリアンプレート(1780円)」、
「ネパール×12種の野菜入り 豆腐ティッカマサラダルバート(1880円)」といった個性派であり趣向を凝らしたダルバートもメニューに並んでいる。
色とりどりのメニューに目移りしてしまうが今回のメインは何と言ってもダル餅。心を落ち着かせるため、最近提供する店が増えてきたアルコール度数8%とストロング系のネパールビール「ゴルカ(650円)」で喉を湿らす。
ドリンクとともに供されたパパド(豆から作られた煎餅のようなもの)とタマネギのアチャール(ピクルス)、ダイコン・キュウリ・ニンジン・キャベツなどのアチャールは酒の肴に最高。
特にキャベツ入りのアチャールが抜群に美味しい。サラダ感覚でもりもり食べられる。
次いで運ばれてきたのが「クワティカレー」。発芽した豆を複数種使用した栄養満点のカレーで、ネパールでは8月の伝統行事が行われる時期に食されるハレの日の料理だ。
・ダルスープと餅の邂逅
クワティに続き、ついに本日の主役である餅も運ばれてきた。これまでダル餅では茹でた餅を使用してきたというが今回は揚げ餅で登場。これには提唱者の方も驚いていた。
ちなみにダル餅は同店のレギュラーメニューではなく提唱者の方が店にお願いして特別に用意していただいている。
揚げ餅にクワティカレーをかけてダル餅へと進化させていく。
餅=米なのでカレーとの取り合わせは本来であれば違和感ないはずなのだが、初体験なのでそのヴィジュアルに少々戸惑ってしまう。
ニョーンと伸びた餅とカレーを一緒に食べると……美味い! 滋味深い発芽豆のカレーに餅がしっかりと合っている。確かにこれはもっと広まってもいい食べ合わせだ。
・ダル餅誕生の経緯と今後の展望を提唱者に聞く
ダル餅提唱者であり発信者である方に誕生の経緯について聞いてみた。
──どういった流れでダル餅が生まれたんでしょうか?
「正月にお餅が余りがちで。ある日、自作のダルスープにお餅を入れてみたんです。ダルスープって豆を煮込むだけだから実は結構簡単に作れて」
──それをXで発信したんですね。今や「#ダル餅」でXを検索すると思い思いのダル餅が出てきますし、提供しているお店も探せるほどになりました。
「意外と反響があって(笑)。自作する方や行きつけのエスニック店にお餅を持ち込んで作ってもらう人も出てきてくれて。お餅を雪見だいふくにしてスイーツ系のダル餅を作る方もいましたね」
──ダル餅誕生からわずか数ヶ月でエスニック界隈ではトレンドになりました。
「ハッシュタグ『#ダル餅』の投稿をリポストして布教しているのですが、今後は私の手を離れていって、各地でダル餅が定着していってくれたらうれしいです。節分には豆を年の数食べますから、正月に余ったお餅とダルスープで節分を迎えるなんて定番行事になってくれたら最高ですよね」
・ダルバートも “ダル餅化” させていく
提唱者の方のお話をうかがった後はダルバートも “ダル餅化” させていくことに。提供されたのはこの日のためのスペシャルなダルバート。
内容は左上からダルスープ、マトンカレー、タマネギのアチャール、チキンセクワ(鶏肉の炭焼き)、青菜炒め、野菜アチャール、キュウリとニンジンのスライス、トマトベースのピリ辛ソース、野菜のタルカリ(おかず)、そしてセンターにかぐわしいバスマティライスが鎮座ましましている。
ダルスープはクワティカレーと同様に豆たっぷりでギー(水牛の溶かしバター)もしっかり使用しているようでかなりリッチで濃厚な味わい。これだけで立派な一品料理だ。
パパドを砕き、ダルスープをライスにかけて「ネパール式ねこまんま」として味わっていく。これは最高に美味い。
マトンカレーも肉がゴロゴロ入っていてさらにスパイスもビシッと効いていて美味しい。ビールとライスがどんどん進む。
タンドールで焼き上げたであろうチキンセクワはジューシーで香ばしい。酒の肴としてもかなり優秀だ。
そして、こちらのダルスープにも餅を投入してダル餅にしていく。
先ほどのクワティカレーよりはやや緩めのダルスープと揚げ餅の相性も抜群。中華料理にはおこげにあんかけをかける「中華おこげ」というメニューがあるが、それのネパール版のような印象だ。
ビールを飲み干したところでネパールのだったんそば焼酎「ソムラス(650円)」を水割りで追加。
同行のエスニック料理エキスパートの方とどんな酒がダル餅と合うか話していたところ「ハイボール、焼酎、日本酒は間違いないのでは」となり、こちらをオーダーしてみたがダルスープをまとった香ばしい揚げ餅とソムラスの相性はやはり抜群だった。居酒屋のシメとしても最適ではないか。
ダル餅を挟みつつダルバートにカレーとすべてのおかずを重ねてスプーンを進めていく。が……
餅はやはり腹にたまる。2個半というのは筆者の胃のキャパを超えていた。というわけで残ったダルバートやツマミ類はテイクアウトすることにした。本当に腹パン。
間違いなくダル餅は美味いし、ダルスープと餅の相性の良さを実感できた。数年後にはダル餅が恵方巻のように節分の風物詩になっている──そんな可能性もあるやなしや。
・今回訪問した店舗の情報
店名 アムリタ インドスパイスカレーとナンと(amrit)
住所 埼玉県川越市鯨井新田12-27 トレニアコーポ1F
営業時間 11:00~15:00 / 17:00~22:00
定休日 火曜
執筆:ダルバート研究家・田中ケッチャム
Photo:RocketNews24