横浜市磯子区の和菓子店「磯子風月堂」 7月末で86年の歴史に幕
国道16号線沿いにある老舗和菓子店「磯子風月堂」=磯子区磯子=が7月31日(水)をもって閉店する。3世代にわたり86年間続けてきた店の歴史に幕を下ろす。
同店は1938年に伊勢佐木町で創業。当時は上生菓子店として、料亭への贈呈用和菓子を扱っていた。米軍による占領を機に、現在店を構える磯子の地に移った。
現在は、濃厚なごまだれを弾力のある餅で包んだ「ごまだれ餅」が一番の人気商品。「磯子の逸品」に初回から選出され続けている。また、今でも一つずつ手作りしている「黒糖饅頭」は2018年放送のNHK連続テレビドラマ小説「半分、青い。」の作品中で、女優の永野芽郁さん演じる主人公・鈴愛が食したことでも有名。「現在、饅頭は機械で大量生産されることが多く、一つ一つ手包みで作られているものは少ない」と同店の職人・石原さん。
和菓子界をけん引
コロナ禍にSNSで行われた「アマビエチャレンジ」をきっかけに作った上生菓子「アマビエ」を、石原さん自身が発案した「#全国和菓子アマビエ大会」と共に投稿すると、全国の和菓子店がそれぞれオリジナルのアマビエをかたどった和菓子を投稿。コロナ禍の和菓子業界に活気を与えた。アマビエは「疫病退散」の妖怪。青く色づけられた波模様「青海波」には「平穏な暮らし」への願いが込められている。
利用者からは閉店を惜しむ声が多く、近隣に住む常連客の森川ユリ子さん(38)は「地元で和菓子屋といったら風月堂。亡き母がよく買ってくれていたごまだれ餅は、思い出の味です」と話す。
石原さんは「皆さんが寂しいと言ってくださるのでありがたいです。スタッフ一同心よりご利用お待ちしております」と話した。24日から最終日まで、休まず営業する。