理凰のコンプレックスに、“勝ち抜いていかなきゃいけない世界の人間”として共感ーー『メダリスト』リレーインタビュー第3回:鴗鳥理凰役・小市眞琴さん
2026年1月から放送中のTVアニメ『メダリスト』第2期。今週放送の第16話(score16)でも、前回に続き、全日本ノービス選手権への出場を懸けた、中部ブロック大会での熱戦が描かれていく。
放送開始に合わせてスタートしたアニメイトタイムズのリレーインタビュー第3回は、主人公・結束いのりと同じ小学6年生で、男子ノービスの注目選手でもある鴗鳥理凰を演じる小市眞琴さんが登場。オリンピック銀メダリストの鴗鳥慎一郎を父に持ち、天才・狼嵜光と兄妹同然に育ってきたという複雑な境遇の理凰をどのように演じてきたのか。第1期を振り返りつつ、第2期の見どころなども語っていただきました。
【写真】メダリスト:小市眞琴、演じる理凰のコンプレックスに共感【声優インタビュー連載第3回】
原作を読んだ時から理凰を演じたいと思っていた
──第1期での理凰は、いのりと司に次ぐ、第3の主人公と言ってもいいくらい深掘りされたキャラクターだと思います。第1期の最終話までを演じる中、小市さんの理凰に対する印象などは、どのように変化していきましたか?
鴗鳥理凰役・小市眞琴さん(以下、小市):第一印象は、わりと生意気な男の子って感じでした。最初のシーンから「ブスエビフライ」というXのトレンドになるくらい印象的なセリフを(いのりに)言っていましたし(笑)。でも、明浦路先生のところに教わりに来る第10話からは、理凰の今の感情が分かるようなモノローグが出てきたりして。印象としては、だいぶ変わっていきました。ただ捻くれているだけじゃなくて、本当は真っ直ぐな芯のある純粋な男の子だったところがねじ曲がっちゃったんですよね。第1期の理凰を演じるのは、それをほどいていく作業でもあったのかなと思いました。
──かなりキツい台詞も言うけど本当は良い子というのは、演じる上でのバランスが難しかったのでは?
小市:難しかったです。自分の中で、ここまではいかない方がいいかなとか結構考えながらやっていました。「(明浦路先生の)バッジテストの級が低かったら言ってやろう」とか言いながらも、「(予想よりも低い)初級だよ」って言われたら、動揺したりするし。褒められて嬉しい時とかもそうですが、子供らしいところが出る時もあるんですよね。なので、そういうところはしっかり見せて、可愛らしいところもある子だけど、今はこういう状態なんですと演技からも伝わるように考えていました。
──終盤、良い子の一面も表に出せるようになったことは、小市さんとしても嬉しいことでしたか?
小市:信頼できる大人、明浦路先生という存在が見つかって、素直な言葉が出せるようになったことは、良かったねって思いました。まあ、お父さんもいるんですけど、それは別として(笑)。彼の近くにそういう大人がもう一人できたことが、理凰の中ですごく大きいことだったのかなって思います
──慎一郎も良いコーチであり良いお父さんだろうと思いますが、親子だからこその難しさもあるんでしょうね。
小市:ただ、明浦路先生のおかげでねじ曲がったところがほどけていったとしても、ひねくれたまま残っている部分も絶対にあると思うんです。成長過程で変わっていったところもあるだろうし、壁を乗り越えたからといって、全部が全部、素直になるのは違うのかなって。
──いのりに対して、ちょっと意地悪なことを言うところなどは、すでに理凰という少年の個性になっているのですね。
小市:そうなのかなって。一度作った関係性がなくなるわけではないと思うので。
──小市さんは、様々な作品で少年役を演じられていますが、その中で理凰は比較的、掴みやすいキャラクターでしたか? それとも、最初は試行錯誤して、お芝居を作り上げたキャラクターでしたか?
小市:元々、原作を読んだ時から理凰が好きだったので演じたいと思っていて、自分だったらこういう演技がしたいという考えは最初からありました。それに加えて、原作のつるま(いかだ)先生や監督さんたちの「理凰はこうしてほしい」というご指摘も取り入れて作り上げた感じです。オーディション原稿のセリフは、基本的に原作から選ばれていたんですけど(第4巻の)「俺は全部あるから、何のせいにもできない……」という、理凰の中ですごく印象的な台詞も入っていて。
──アニメでは、第11話にあったセリフですね。
小市:そのセリフは、本当に絶望しているように演じたんです。でも、「諦めないでください」というディレクションを頂いて。理凰は、何のせいにもできないって思っているけど、根っ子ではやっぱりスケートのことを諦めきれてない。だから、本当は心の奥底では、誰かに助けてほしい気持ちはあるのに、ひねくれちゃって、いろんな人を突っぱねてきた。それでも、明浦路先生は「理凰さん、いた!」って見つけに来てくれて。そこで、やっと本音を言えるというシーンなんですよね。だから、もう諦めているようにしないでと仰っていただけたのは、自分の中で新しい気づきになりました。
捻くれちゃってる理凰は、人間味があって魅力的
──理凰は、話す相手によって口調や態度などがガラッと変わります。演じる時、特に意識したことなどがあれば、教えてください。
小市:たしかに、あそこまで変わるのは面白いですよね(笑)。今、喋る相手にどういう感情を持っているのかは、常に意識しました。それこそ明浦路先生に対して、最初のとげとげしい時と、初めて「明浦路先生」って呼んでからの態度の変化は、今、明浦路先生にこういう感情がある、ということを踏まえた上でやっているので、その距離感はかなり変わったかなと思います。
──私は、犬飼総太君と話す理凰を初めて観た時、「そういうキャラだったの?」と驚きました。
小市:理凰にとっての総太君は、本当に仲の良いスケート仲間の男の子ですけど、総太君はそうでもないみたいだし……。そこは、ちょっと切ない関係性ですよね(笑)。
──総太君とのシーンでは、テンションのギアを一段上げるみたいな感覚ですか?
小市:ギアを上げるのは明浦路先生に対する時で、総太君には本来の理凰の性格。子供っぽくて、ねじ曲がってない部分を見せるのが良いのかなって思っています。だから、上げるというよりは、ちょっと変えるって感じかも。
──小市さんの思う、理凰というキャラクターの魅力を教えてください。
小市:私は理凰のガチガチのコンプレックスこそ、魅力だと思うんです。親や光に対するコンプレックスとか、(光のコーチでオリンピック金メダリストの)夜鷹純に対するコンプレックスとか。周りが天才だらけなんですよね。たぶん(父の)慎一郎さんは秀才だと思うんですけど、理凰から見たら、すごく才能のある人だろうし。
才能のある人に囲まれ過ぎて、本人も同じように目指したいところがあるのに、そこへ行けない歯がゆさ。他の人から見たら、理凰も才能がある子ですけど、周りがすごすぎて「いや、俺なんて、まだまだ」ということが積み重なっちゃって。それで、感情が「俺は飛べない。もう無理」と苦しんでる。その結果、捻くれちゃってるところはすごく人間味があって、私は魅力的だなって思います。
『メダリスト』に出てくる子たちは、才能の塊みたいな子も多くって。理凰は才能がないわけではないけれど、そこにもがいている子なので。いのりや光とは違う悩みがある。実際の選手の中にも同じような悩みを持っている子もいると思いますし、そこを描けているのは、このお話の魅力にも繋がっているのかなって思います。
──理凰の場合、父親がレジェンド級の選手で、家族同然に育った光もすごい天才であるというのが、よりキツい環境ではありますよね。
小市:しかも、光に抜かされているのがキツいですよね。「なんでも聞いて。おれのお父さん、銀メダリストだから」とか言っていたのに、あっと言う間に抜かされて。たぶん、心の中では尊敬していたであろう夜鷹純には、「邪魔だよ」って言われて。可哀想すぎます(笑)。
──大人なら言葉を選びなよと思いました(笑)。
小市:夜鷹は言葉足らずな人だから、気持ち的には「ここにいたら、怪我しちゃうよ」って意味だったのかな(笑)。本心は分からないですけど、理凰はめちゃくちゃ傷ついている。そういう、すくすく育っていない感じも良いんですよね。
──そういうところが好きというのは、ご自身が演じるキャラクターとして? それとも、観る側としても好きなのですか?
小市:どちらもですね。私もわりとコンプレックスを抱えがちな人間で。周りと自分を比べて落ち込んでいたので、理凰の感情はよく分かるんですよ。でも、それってたぶん私だけじゃなくて、他にもそう考える人も多いのかなって。私の場合は、オーディションに勝たなきゃいけない。理凰の場合は、金メダルを目指している。ある意味、勝ち抜いていかなきゃいけない世界にいる人たちは、特に理凰の気持ちが分かるんじゃないかなと思います。
第1期の理凰の気持ちを引き継いでいけた
──ここからは、第2期について伺っていきたいと思います。理凰は、第16話で、いのり、明浦路先生、新キャラクターの八木夕凪と話すシーンが描かれます。第2期最初のアフレコでの心境やスタジオの雰囲気を教えてください。
小市:いよいよ、第2期が始まった〜という気持ちでした。スタジオの雰囲気に関しては、第1期の時は『メダリスト』の前から知っている方が多かったので、最初からとにかく和やかな感じだったんです。もちろん、収録の時は緊張感がありました。ただ、第2期からのキャストの方は初めましての方や、あまりご一緒したことのない方が多かったので、私が勝手に緊張していました(笑)。
──『メダリスト』のキャストとしては、先輩なのに緊張していたのですね。
小市:3話目からの参加だったので、「第2期はどんな空気感でやっていますか?」って探りを入れるところから始まりましたね。
──第2期は、第1期の終盤で司に心を開いた後の物語になるわけですが、演じる上で特に意識したことなどはありましたか?
小市:第1期から第2期にかけての間に、色々なイベントなどで理凰を演じる機会もあったので、理凰の気持ちとしては、そのまま引き継いでいけました。「よし、もう1回、ここで作り直そう」みたいな感じではなかったです。ただ、明浦路先生への気持ちは、(第1期最終話で)バッジテストを合格した後に、「ありがとうございます」という感情がもうちょっと乗ってるんじゃないかなと思って。「あ、明浦路先生!」って言うところのテンションの上がり方は意識していました。
──その結果、いのりに対する対応とのギャップがさらに大きくなっているわけですね。
小市:はい。いのりに対しては、変わっていないので(笑)。
──もう少しだけ第16話の内容に触れますが、理凰は、これから演技をする夕凪に「頑張って」と声をかけ、いのりに対しては、光が来るまでは夕凪がクラブのNo2だったことを伝えます。理凰にとって、夕凪はどのような存在だと思いますか?
小市:同じ名港ウィンドのチームメイトで、夕凪ちゃんは4歳からフィギュアを始めているので、小さい頃から知っているだろうし、幼なじみという意味では、最近、始めた子よりは仲が良いのかなと。でも、総太君ほどの距離感では、まったくないと思います(笑)。
第2期での理凰は清涼剤みたいな存在
──第2期では、新キャラクターも数多く登場していますが、第15話までに登場したキャラクターも含めて、特にお気に入りのキャラクターを教えてください。
小市:私、夕凪ちゃんが本当に好きなんですよね。努力型な子って、好きになっちゃうので。あと、(鹿本)すずちゃんは、キャラクターとしてとにかく可愛いくて好きです。すずちゃんは、原作の単行本に載っている4コマなどですごく可愛かったりするんですよね。いのりちゃんのほっぺをむにむにして、可愛い顔にする話とか(笑)。とにかく可愛くて、見ていて癒されるなって思います。それなのに、実はすごく強いっていうのも好きです。
──すずのようなタイプのキャラクターは、実力的には、あまりすごくない方が定番な気はします。
小市:そうですよね。でも、すずちゃんは、ただの賑やかし担当ではなく実力者。そこが好きです。
──まだ『メダリスト』という作品に触れていない人に、作品の魅力を伝えるとしたら、どのようなことを伝えますか。
小市:私は、人と人の関係性が大好きなんですけど、『メダリスト』はバディ物というか。もちろん、主人公はいのりと明浦路先生なんですけど、各大会とか、バッジテストごとに、別のキャラクターがピックアップされて。選手とコーチの関係性などを描いてくれるところが、すごく好きです。そういう二人の熱い関係を観たい方は、ぜひ観てほしいです。きっと「この二人の関係が好き!」っていうものが生まれる気がします。
あと、私もフィギュアスケートを全く知らない状態から入りましたが、それでも楽しめるように、すごく丁寧に描いてくださっています。アニメだと試合のシーンは、本当にフィギュアスケートの試合を観ている感覚になるくらい、迫力などがそのまま伝わってきます。音や光にも本当にこだわって作られているので。ちょっと漫画を読む時間がない方は、アニメからスッと入って、面白かったら原作を読んでもらったり、もちろん逆でもいいと思いますし。この機会に、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。
──最後に、まもなく放送される第16話と、第2期全体の見どころを教えてください。
小市:第16話は、夕凪ちゃんのことをよく知れるお話だと思いますし、観たら皆さんも好きになっちゃうんじゃないかな。ぜひ楽しみにしていてほしいです。あと、第2期に関しては、女子ノービスのみんながバチバチに戦っている中、理凰は清涼剤みたいな存在です。第1期では理凰が悩んでいて私も苦しいと思いながらお芝居していましたが、第2期は理凰的にはずっと楽しくて(笑)。それに理凰が頑張るシーンは、ちょっと先なので。
今回はお客さんではないですけど、ちょっと引いたところで女子の大会を観ている感覚でした。でもその試合がとても面白いんです。誰がどんな演技をして、優勝するのかとか。どんどん上手くなっていのりが、どれだけすごい技を繰り出すようになっていくのかなど、楽しみにしていてほしいです。
【インタビュー・文:丸本大輔】