「省エネに関する意識調査2025」。家を建てるなら太陽光発電や蓄電池を導入したい人は8割以上に
8割以上が現在の住まいの断熱性能が低いと感じている
住まいの断熱性能や省エネルギーに対する意識は高まっている。2025年4月から、すべての新築住宅に「省エネ基準適合」が義務化となり、また、東京都では太陽光発電設置が義務化されるなど、新築を取り巻く環境も変わってきている。住まいの断熱性能に関して、消費者は実際、どのように感じているのだろうか。まず、現在の住まいに関してみていこう。
一条工務店が行った「省エネに関する意識調査2025」によると、「現在の住まいの断熱性能が低いと感じたことはあるか」という質問に対し、「よくある」が50.7%、「ある」は32.3%となっており、8割以上が現在の住まいの断熱性能は低いと感じていることが分かる。
また、「よくある」「ある」と回答した799名に、断熱性能が気になったきっかけを尋ねたところ、最も多いのが「自宅内の暑さや寒さが気になったから(61.6%)」という結果。次いで「自宅内の結露やカビが気になった(13.9%)」。その他「冷暖房の効きが悪いと感じる」「光熱費が高いと思った」という声も挙がっているという。
しかし、断熱性能が低いと感じていても、断熱リフォームを検討したことがあるか、という質問に対しては、検討したことがある人は、17.6%と2割を切る回答だった。不快さや不満を感じているものの、なかなか行動に移すことができない姿もうかがえる。
【調査概要】 調査手法:オンラインアンケート/調査期間:2025年1月18日(土)~2025年1月26日(日)/調査対象:全国の男女/有効回答数:963サンプル/回答者:女性517名、男性446名(10代以下2名、20代73名、30代335名、40代214名、50代189名、60代133名、70代以上17名)
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100にならない場合がある。
断熱等級4の義務化、納得するもののコストアップが不安
次に、省エネ住宅に関する制度面についての捉え方をみていく。
高断熱・高気密に作られ、エネルギー消費量を抑える性能を備えた省エネ住宅。2025年4月から、すべての新築住宅に「省エネ基準適合」(断熱等級4以上が最低基準)が義務化された。
調査実施時点(2025年1月)で、この「断熱等級4」が、今年4月より新築住宅の最低基準(義務化)となることを知っている人は約4割。そのうち7割以上が「断熱等級4」が新築住宅の最低基準(義務化)となることが良いと考えている。
その理由としては「ヒートショックなどの健康リスクが減るから」が最も多く70.4%。次に「冷暖房効率が良くCO₂削減につながる」が67.5%となっている。他、「エネルギーの安定供給につながる」「補助金などを活用できる可能性がある」という答えも聞かれた。「ヒートショック」という言葉も一般化し、住宅の室温等に影響する断熱性能が家づくりの中でも重要なポイントであることは認知されているようだ。
一方、「新築住宅を建てるときのコストが上がりそう」という不安の声もあがっている。住宅資材の高騰が注目されている今、なおさらコスト面は気になるところだろう。
2030年度以降ZEH水準の断熱性能が最低基準となる予定であることを知っているのは約3割
今後、省エネ基準の段階的な引き上げが予定されている。2030年度以降の新築住宅では、ZEH(Net Zero Energy House[ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス])水準の断熱性能が最低基準となる予定だ。
「ZEH」を知っている方(699名)に、「2030年度以降、新築住宅はZEH水準の断熱性能が最低基準となる予定であることを知っていたか」を尋ねたところ、「知っていた」は36.1%。家づくりの予定によって異なるが、まだまだ認知されているとは言い難いのが現状のようだ。
ただ、現在ZEHの家に住んでいない、またはわからない方で、ZEHに「とても興味がある」人は65.6%、「どちらかと言えば興味がある」人は32.0%。多くの方が興味を持っていることが分かる。暮らしの中でのエネルギーに対する意識の高さが読み取れる。
8割以上が太陽光発電システムや蓄電池を導入したい
省エネルギーという面では、太陽光発電システムや蓄電池も身近な機器となってきている。最近では、異常気象により増えている自然災害への対策のひとつとして、興味を持っている人も多いだろう。
調査でも、「これから戸建て住宅を建てるなら、太陽光発電システムや蓄電池を導入したいか」の質問に対して「はい」と回答したのは83.7%と多くの人が取り入れたいと考えていることがわかる。設置したい理由のトップは「発電された電力を自宅で使用することで電気料金を節約するため」が85.9%。次いで「災害・停電時の非常用の電源とするため」51.4%という声も多い。電気を熱源とする家電や設備機器に囲まれた現在の暮らしの中では、電気が確保できないことへの不安は大きいのは頷ける。
調査でも、台風や地震等の災害で約3割の人が、1日以上続く停電を経験している。
その際に困ったことは「冷蔵庫・冷凍庫が使えず食材が傷んでしまった」が24.4%。次いで「冷暖房が使えなくなった」「照明が使えなくなった」「トイレが使えなくなった」などの声も聞かれる。
電気エネルギーのありがたさ、現代の生活には欠かせないエネルギーであることを身に染みて感じているのだろう。
住まいや暮らしにとって、住まいの断熱性、省エネルギーは必須
調査からは、住まいの断熱性や省エネルギーへの意識の高さと共に、断熱性能等の義務化を肯定しつつ、現実的なコスト面などには不安を持っている消費者の姿がよみとれる。
同時に、近年多発する災害などによって、太陽光発電システムや蓄電池のメリットを感じている人も多いようだ。家電量販店などでも、ポータブルタイプなどがみられ、身近なアイテムとなっていることも要因のひとつかもしれない。
現状では、多くのハウスメーカーでは、義務化となる断熱性能4以上が一般的となっている。
義務化に関しての家づくりの現場での混乱などは少ないだろう。より性能を高めた商品の提案が多くみられるので、さまざまな条件の中、わが家の場合はどこに重点をおくのか、しっかりと検討することが大切だ。太陽光発電システムと蓄電池も、省エネルギーはもとより日々の暮らしの安心を生み出す機器として欠かせない住宅設備機器となっていくだろう。メーカーごとに機能や特徴が異なるので、メンテナンスも含め将来を見据えて選ぶことも重要だ。
家づくりの際には、法的な基準をクリアするだけでなく、わが家にとって何を優先するべきなのか、家族構成やライフスタイル、予算も含め多角的に検討し、バランスのとれた住まいを実現したい。
■取材協力
一条工務店
≪イイコト調査≫
https://www.ichijo.co.jp/research/article/energy_saving/
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