私も「この後一体どうなるのだろう」と思いながら描いています(笑)──週刊コロコロコミック『コンビニ令嬢きらら』コミックス第1巻発売記念! 戸山トモ先生インタビュー
大人気コロコロマンガが毎日無料(※対象話にかぎる)で読めるWEBまんがサイト「週刊コロコロコミック」で好評連載中の『コンビニ令嬢きらら』。
浮世離れしたお嬢様・きらら、冷めた現代っ子・ヒロキ、そして2人を取り巻くケモBL同人作家、特殊護衛メイド、ロジカルお嬢なエリアマネージャーなど個性豊かなメンバーが織りなすギャグマンガはSNS中心に話題沸騰。待望のコミックス(単行本)1巻が2026年6月26日(金)に発売となりました。
そこでアニメイトタイムズでは第1巻発売記念インタビューとして、作者・戸山トモ先生への直撃インタビューを実施! この記事を読めば、あなたも様子のおかしいコンビニ「ヘブンイケルン」で“レジぴっぴ”したくなること間違いなし!
【写真】『コンビニ令嬢きらら』コミックス第1巻発売記念! 戸山トモ先生インタビュー
万バズ職人・戸山トモ先生
──ついにコミックス第1巻が発売されましたが、現在の率直な感想を教えてください。
戸山トモ(以下、戸山):ついにコミックスが出るという喜びが1割、頼むから絶対に売れてくれという祈るような気持ちが9割といったところです。
──戸山先生ご自身もSNSでネタにされていましたが、コミックスの説明欄では「万バズ職人」と紹介されていましたね。
戸山:編集部から辱めを受けています(笑)。実は、週刊コロコロコミックに掲載されている第1話のカラー扉絵にも「万バズ職人」という言葉が入っていて、最初にそれを見たときは思わず笑ってしまいました。
このくらい煽った方が人の目につきやすくて良いと思いますが、まさか単行本の説明欄にも入っているとは思いませんでした。別に私自身は万バズ職人でもないですし、少し恥ずかしい気持ちもありますね。
自分の中で「早くふざけたい!」という衝動が湧き上がってきてしまうんです
──普段のSNSの投稿は1~2コマほどの「瞬発力」が強い作品が多いですが、『コンビニ令嬢きらら』は数ページにわたる「持久力」が必要なストーリー漫画です。それぞれを描く上でどのような違いがありますか?
戸山:SNSに上げるような1~2コマの作品に関しては、あらかじめバズりそうなワードや言い回しを考えて描いています。
一方で、『コンビニ令嬢きらら』のようなストーリー漫画に関しては、そこだけを切り抜いた時にバズりそうなコマを、特に第1話から第3話にかけては意識的に入れ込みました。ストーリー全体でバズるかわからないというのもありますが、自分の中に「1コマネタはウケるけど、ストーリー漫画はウケない」というジレンマがあるんです。今はそこを模索している状態なので、今後はストーリー漫画でもバズりたいとは思っています。
──作中のきららの「長所、お金持ち! 短所、なし! 以上ですわ!!」というコマは、正にバズりそうなキラーフレーズがあるコマで個人的に大好きです。
戸山:連載開始時のインタビューでもお話させていただいたんですけど、あのシーンは「どこかを切り抜いた時にウケそうな要素を入れたい」と考えて、後から追加した部分なんです。だから、気に入ってくださったのは正に狙い通りで嬉しいですね。
ただ、それだけ聞くと狙い通りにバズらせているように思われるかもしれませんが、このコマ自体はそれほどバズっていません。商業作品として連載しているマンガの切り抜きであることを見透かされているのかもしれませんし、あるいは単純にコマ自体にそこまでの瞬発力がなかった可能性もあります。いずれにせよ、狙ってバズらせるのは難しいと痛感しました。
──今回の単行本には未収録ですが、第13話のハイパーしごできバイトリーダー・理田倍人(りだばいと)のエピソードも最高なので、彼もどこかでバズってほしいです。ページが進むにつれて突拍子もない展開が積み重なっていくのが面白かったです。
戸山:第11話と第12話ではエリアマネージャーという敵キャラクターのような存在を登場させたので、少しピリッとした真面目な展開が続いた気がしたんです。それもあって、私の中で「もっとふざけたい!」というフラストレーションが溜まっていたんですよね。
担当編集さんには「ものすごく仕事のできるバイトリーダーが現れるけれど、大怪我をしてすぐに退場する」と説明したんですけど、頭を抱えられちゃって。最終的には「読者が『作者の頭がおかしくなったのではないか』と思うくらい、徹底的にやってください」と言われたので、そこから「バイトリーダーが分身する」という設定を考えて、さらに分身が本体を見失うといったネームを描いてOKをもらっています。
私としては「これが面白いんだ!」と思って送り出した話なんですけど、読者の皆さんの反応が少し怖くもあって、明日(※取材当時)の公開をドキドキしながら待っています。
──『コンビニ令嬢きらら』は感情のジェットコースターが激しい作品ですよね。トイレ掃除をする良い話があったかと思えば、その後にギャグ要素の強い回がきますし。エリアマネージャーが登場して閉店までの真のカウントダウンが始まったと思ったら、理田倍人が出てくるわけですから。
戸山:毎回「これで本当に大丈夫なのか……?」とストレスを抱えながら描いているのもあって、自分の中で「早くふざけたい!」という衝動が湧き上がってきてしまうんです。それで、あの緩急が出てしまうのかもしれません。
本連載が決まった段階で「さて、ここからどうしよう……?」と大きな壁にぶつかりました
──先生の過去作『ぽこてん!』もそうですが、いわゆる「堕落した生活を送る主人公」や「労働を嫌がる主人公」がよく登場する印象があります。そんな先生が本作では「労働を楽しむ主人公」を描くようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
戸山:『コンビニ令嬢きらら』の企画自体は、お嬢様キャラクターを描くならどんな設定が面白いかを思案した時に、お嬢様とは真逆の「庶民が日常的に利用するコンビニで働かせたらギャップが生まれて面白いのではないか」という、かなりシンプルな発想からスタートしています。
週刊コロコロコミックの掲載コンペまでの時間も短かったため、ダメで元々の気持ちで挑んだ企画だったので、あまり深く設定を練り込んでいなくて。いよいよ本連載が決まった段階で「さて、ここからどうしよう……?」と大きな壁にぶつかりました。
私自身の生活を投影したような「堕落した生活を送る怠惰な主人公」にした方が圧倒的に描きやすいのは事実です。でも、『コンビニ令嬢きらら』は「主人公のお嬢様が働いていた方が面白い」というタイプのお話なので、私自身の性質とは真逆のきららを動かすのが難しくて悩みましたね。
最終的には「お嬢様だからこそ世間の常識から大きくズレている」というギャップをベースに、きららの目線を通して庶民の当たり前の生活を描くことで、私の作風とのギャップや面白さが逆に引き立つのではないかと考えて第4話以降の構成を作っていきました。
これらは全て本連載が決まってからの後付けになるんですけど、読み切りの段階では細かいことは本当に何も考えていなかったのが真相です(笑)。
──本作は週刊連載化に伴って、魅力的な新キャラクターが続々と登場していて、公式の紹介でも「ケモBL同人作家」「特殊護衛メイド」「ロジカルお嬢なエリアマネージャー」などが挙げられています。これらのキャラクターたちも、週刊連載のスケジュールの中で、ある種のドライブ感を持って生み出されたのでしょうか?
戸山:一応、本格連載前に、どんなキャラクターがいたら面白いかを書き出してはいます。その時は「ケモBL」という具体的なジャンルまでは決めずに「同人オタク女」みたいなアイデアレベルでしたが。
そんな感じで4〜5キャラほどアイデアとして書き留めてはいましたが、最終的に採用されたのは第5話~第6話に登場した徒労トロという「ケモBL同人作家」だけです。
その後に登場する「特殊護衛メイド」のコルトとシグとかになってくると、事前のアイデアのストックが無い状態で、週刊連載を走りながら作っているキャラクターになります。
──そんな自転車操業のような状態から、あの個性的過ぎるキャラクターたちが生まれていたんですね。
戸山:「特殊護衛メイド」のコルトとシグって、ちょっと設定とかベタじゃないですか。こんな属性のキャラクターがいたら好きになってくれる人がいるかもと想像しながら描いたラフを担当編集さんが気に入ってくださって、それで本編に登場することになったんです。
だから、本当にその時々で思いついたキャラクターをとりあえず描いてみて、作中で使えそうだったら登場させるような感じになっています。
──『ぽこてん!』にも美園というお嬢様が登場しますが、どことなくきららに似ています。もしかして元ネタなのかとも思ったのですが、実際のところはどうなんでしょうか?
戸山:美園が基になったというよりは、単純に私の中のお嬢様の引き出しがそれしかなかったのが真相です(笑)。
私の中でお嬢様といえば「〜ですわ」というお決まりの口調で白か金の髪色、ハーフアップでリボンをあしらった髪型、独自の強固な世界観を持っているイメージなので、その引き出しを開けたら自然ときららの姿になっただけですね。
私も「この後一体どうなるのだろう」と思いながら描いています(笑)
──お話を伺っていると、担当編集さんのアドバイスが作品に色々と反映されているようですが、特に印象的なアドバイスは何かありますか?
戸山:担当編集さんからは「読者の癖(へき)に刺さるような要素、ニッチなファンが熱狂的に好きになってくれるような属性を意識して入れた方が良い」とアドバイスをいただいています。もちろん、それを意識はしていますが、私はキャラクター作りが少し苦手でもあるので、今も試行錯誤しながら取り組んでいるところです。
そもそも、作中にたくさんのキャラクターを登場すること自体、担当編集さんと本連載決定後の展開を考えた時に、2人で決めた方針なんです。
きららの「お嬢様ならではの小ボケ」や「お金持ちギャグ」だけでは絶対にお話が続かないし、毎回「これは●●ですわ」と言っているだけでは話も膨らまなくて退屈じゃないですか。だから、一種の群像劇のような形にして多くのキャラクターを投入することで、きららがどんな反応をするのか見せる方が面白いと思ったんです。
──毎回「閉店まで、あと●日」とカウントダウンされています。これまでのお話を伺った限りでは、100日目に至るまでの具体的な展開も現時点ではあまり細かく作り込まず、ドライブ感で進めているのでしょうか? それとも100日目の結末だけは決まっていますか?
戸山:一応、ざっくりとした結末のイメージは考えていますが、その場のノリやドライブ感で決めていくかもしれません。だから、読者の皆さんは「本当に100日後にコンビニが潰れてしまうのか、ぜひ最後まで見届けよう!」という気持ちで読んでいただけたらと思います。
──巻末の次巻予告にもありますが、店長が「売上を10倍にする」と言い切ってしまいましたからね。
戸山:私も「この後一体どうなるのだろう」と思いながら描いています(笑)。
自分でストーリーを作るのが苦手だと言っている割には、計画性を持たずに描き進めてしまっているんです。「とりあえずこの話をなんとか着地させたい」「とにかく最後まで逃げ切りたい」という気持ちだけで、ずっと走り続けているような感覚です。
とは言え、一応は「どう着地させるか」という青写真は何となく頭の中にあるので、そこはご安心いただければと思います。今後、作中の残り日数が急に進んだり、あるいは時が遡ったりする展開があるかもしれませんし、そこは私の好きなように描いていこうと思っています。
──週刊コロコロコミックでの連載と言うこともあり、これまでとは読者層が大きく異なるかと思います。何か意識して変化をつけている部分はありますか?
戸山:私の中で、週刊コロコロコミックという媒体は青年誌に近いのではないかと思っています。今の週刊コロコロコミックのラインナップは少し上の世代に向けた作品が多いような印象を受けるので、基本的にはあまり子供向けであることを意識しすぎずに描いています。
ただ、作中で「凌辱(りょうじょく)」という言葉を使おうとした時は、担当編集さんからNGが出てしまい、それなら別の表現で「辱(はずかし)める」だったらいけるかと食い下がってみたのですが、それも却下されたことはあります。
私は元々の作風もあってか、強いワードを好んで使いがちで、その方がギャグとして面白いという思考回路をしているんです。でも、週刊コロコロコミックは過激な表現に関しては明確な線引きがされていて、その辺りは青年誌とは違うのだと自覚しましたね。
──SNSでは「週刊と打つと獣姦と変換される」と投稿されていたのを覚えています。
戸山:私個人としては、本当はもっと全力で下ネタを描きたいという想いがあります(笑)。ただ、編集部からは「小学生でも読めるラインを意識してほしい」と言われているので、そこは今後も気を付けないといけないと思っています。
──そういった制約の中で『コンビニ令嬢きらら』という素敵な作品を世に送り出しているわけですが、これまでに読者から寄せられた反応で、特に印象に残っているものはあります?
戸山:短期連載時に頂いたコメントで「1000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000話までやってくれ!」というのがあって、もちろん年齢はわからないんですけど、コロコロキッズっぽいコメントだと思って嬉しかったです。
私としては、この作品をあまりキッズ向けだとは思って描いていなくて、自分と同世代か、あるいはもう少し下の世代の男女をターゲットにしているというか、基本的には自分が好きなように描いている感覚なんです。だからこそ、子どもと思われる読者からコメントをいただけると嬉しいですね。
あと、短期連載時はまだスケジュールに少し余裕があったので、背景の細かい部分まで描けたんです。その背景にこっそり仕込んでおいた小ネタに対して、読者の方が気づいてツッコミを入れてくれたのは、隅々までじっくりと読み込んでくれているのだなと感動しました。
私としても「誰か見つけてほしい!」と思って描いているので、そこで読者と一種のコミュニケーションが成立したような気がして嬉しかったですね。
働いていたコンビニが潰れた思い出
──以前、Xに「実はメディアファクトリー時代、ポケカを子供達に教えるお姉さんとしてバイト採用されてた」というエピソードが投稿されていましたが、先生ご自身はコンビニでのアルバイト経験はありますか?
戸山:よく書籍のカバーの折り返し部分に「著者近影」みたいなスペースがあるじゃないですか。小学館さんの単行本にはその枠があるので、そこにコンビニバイト時代のエピソードを書かせていただきました。
──かなりパンチの効いたエピソードが書かれていますね(笑)。
戸山:高校生の時に初めてコンビニでアルバイトをしたんですけど、働き始めてからわずか3~4ヶ月ほどで閉店してしまったんです。当時の仕事内容は、レジ打ちや前出し(商品を棚の手前に並べること)をやったり、それ以外にも品出しや雑誌の入れ替え作業など一通り教えてもらったとは思いますが、その記憶もほとんどなくて(笑)。
それくらい短いバイト期間だったので、当時の経験を『コンビニ令嬢きらら』に活かせているとしたら、まさに「自分が働いていたコンビニが潰れた」ことくらいですね。
──独創的なバイトリーダーがいたわけでもないんですね。
戸山:本当にごく一般的な普通のコンビニでアルバイトしていましたが、コンビニが潰れていく過程は、どこか不思議で印象深い経験でした。そのあたりのエピソードは、いずれ第2巻の巻末などに載せられたらいいなと考えています。
──ちなみに、作中に出てくるコンビニ食品を振り返ると「ボリューム唐揚げ弁当」や「肉まん」といったお肉系のメニューが多い印象です。何かお肉へのこだわりみたいなのがあるのでしょうか?
戸山:そんな細かいところまで見てくさってありがとうございます。明確には言っていないのですが、第10話できららがレンジでマヨネーズを爆発させてしまうのも「焼肉弁当」だったりします。どうしてお肉系のメニューが多いかと言えば、単純に「その方が描きやすいから」というかなり現実的な理由です。
これが魚系のお弁当などになってくると、魚だけでなく、他のお惣菜も描かなければならなくて手間がかかるんですよね。その点、お肉であればお肉単体と少しの漬物といったシンプルな構成で作画カロリーを抑えられるのが大きいです
肉まんにしても、きららが肉まんを手に持っていたら面白そうという理由です。ただ、質問の答えとしては「お肉は大好きです!」とお伝えしておきます。お肉とビール、この組み合わせが最高ですね。
──その「面白そう」という感覚でいくと、きららが何かあると突然「川柳」を詠み始めるのも同じ理由からですか?
戸山:川柳に関しては、担当編集さんから「キャラクターを立たせるために、何か一つ変わった行動をさせてほしい」と要望をいただいたのがきっかけです。それで、何をさせようかと考えていた時に、ふと思い出したのが3年ほど前に私が個人的に描いたネタイラストでした。
当時、「セミどもへ 路上で死ぬな 土で死ね」と五・七・五の川柳にメッセージをしたためて詠むというイラストをX(旧Twitter)に投稿したところ、少し荒れてしまったんですけど10万以上の「いいね」を獲得してバズったんです。
こんな形で、お嬢様が川柳を詠むというネタを書いたことがあったので、それを活かして設定に落とし込みました。お嬢様が川柳読むというのは、ギャップというほどではないですが、キャラクターの良いフックになるのではないかと考えたんです。
アニメ化された際には是非ちょい役でも良いので出させてほしいです
──今後、グッズ化やアニメ化など『コンビニ令嬢きらら』で叶えたい夢や野望があれば教えてください。
戸山:アニメ化は絶対にしたいです。もしアニメ化が実現した際には、作者特権で誰かの声を当てさせてほしいですね(笑)。というのも、高校生くらいの頃、私は将来の夢が「声優」だったんです。少し演劇の勉強をしていたこともあって、声優への憧れがずっと残っているので、アニメ化された際には是非ちょい役でも良いので出させてほしいです。
あと、リアルのコンビニとタイアップをしたり、単行本の特典として作中に出てくるケモBL同人をお届けするとか、やりたいことがたくさんあるのでとにかく第1巻が売れてほしいです。
──個人的には『炎の闘球女 ドッジ弾子』の特装版みたいにアクスタがほしいです。
戸山:アクリルスタンドも良いですね。ご要望があれば何でも描き下ろします! グッズ化を検討してくださる企業の方がいらっしゃいましたら、ぜひよろしくお願いいたします。この場をお借りしてアピールさせてください。
──最後に『コンビニ令嬢きらら』を愛する読者の皆さんにメッセージをお願いします。
戸山:いつも『コンビニ令嬢きらら』を読んでいただき、本当にありがとうございます。今回、単行本用にたっぷり漫画やイラストを描き下ろしたので、普段から週刊コロコロで追いかけてくださっている方にとっても必見の内容となっています。ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。