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【Iターン移住で夢を叶える】看護師からイチゴ農家へ転職! 先輩農家や仲間に支えられる日々【佐賀県白石町】

田舎暮らしの本

【Iターン移住で夢を叶える】看護師からイチゴ農家へ転職! 先輩農家や仲間に支えられる日々【佐賀県白石町】

有明海に面した肥沃な大地に恵まれ、農業が盛んな佐賀県白石町。特に施設園芸に適し、イチゴ栽培では県内有数のまちだ。神奈川県から白石町へ家族とともに移住し、農業研修を経て独立就農した工藤慎也さんの話を伺った。

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掲載:2025年3月号

佐賀県白石町(しろいしちょう)
佐賀県の中南部に位置し、有明海の広い干拓地と干潟で知られるまち。白石平野が広がり、その粘土質の土壌はレンコンをはじめとした野菜や米などの栽培に適している。2018年秋に誕生した新ブランドイチゴ「いちごさん」などのイチゴ栽培も盛ん。九州佐賀国際空港から車で約30分。佐賀市内まで有明海沿岸道路利用で約25分。

妻も娘も好きなイチゴで新規就農

イチゴハウスのなかで、工藤慎也さんと恵梨(えり)さん(37歳)、娘の陽向(ひなた)ちゃん(11歳)。

工藤慎也(くどうしんや)さん(36歳)
神奈川県出身で、看護師として老人ホームなどに勤務。家を購入するなら田舎でと考えたときに、地震が少ないという佐賀県を検討。ツアーや相談会に参加し、「いちごトレーニングファーム」がある白石町に決めた。2年間の研修後、2021年にイチゴ農家として独立就農し、恵梨さんとともに働いている。

 有明海に面し、干潟と農業のまちとして有名な白石町に、イチゴ農家として2021年に新規就農したのが工藤慎也さんだ。

「田舎暮らしのテレビ番組を見て、いつかはこんなのどかな暮らしをしたいと思ったのがきっかけです。30歳を過ぎたときに周りが家やマンションを買うなかで、関東で家を購入するのはイメージできなかったんです」

 どこなら購入したいのか、日本各地の情報を集めたところ、地震が少ないという佐賀県が候補に。訪れたこともなかったので、まずは県の移住体験ツアーに参加。その後、白石町に、「JAさが白石地区いちごトレーニングファーム」(以下、いちごトレーニングファーム)があることを知り、イチゴ農家として新規就農という道が見えてきた。

「いちごトレーニングファーム」は、イチゴ農家の担い手を育成するために、2019年に佐賀県、白石町、農協が協力して設立。慎也さんはその第一期研修生だ。

「縁もゆかりもない土地で、家族を養っていくことを考えると、農業の基礎知識や経営などがしっかりと学べ、また研修中の給料や家賃補助、車の貸与などの支援がある『いちごトレーニングファーム』は第一歩を踏み出しやすかったです。なにより妻と娘がイチゴ好きで賛成してくれたことが大きいですね(笑)」

 研修期間は2年間。研修と同時に慎也さんが着手したのが独立後の畑探しだ。家と畑が近くにあることを条件に探すものの、すぐには見つからない。

「知り合いもまだ少なかったので、地域の回覧板に記載して回してもらったら、ちょうどいい物件が見つかりました」

「JAさが白石地区いちごトレーニングファーム」の研修時代の同期とは、よく集まる。困ったときに相談できる頼もしい仲間だ。

回覧板で情報を集めた畑付きの一軒家。購入には、一部補助金を充てた。

お世話になった地域に、今後は貢献していきたい

 研修終了後は、恵梨さんとともに二人三脚でイチゴ栽培をスタート。だが慣れない作業は、想像以上に大変だったという。

「6棟のハウスがあるのですが、どうしても繁忙期は2人で手が足りず、妻のお母さんに手伝いに来てもらっています」

 最近では、恵梨さんはすっかり農作業にも慣れ、作業が早くなった。また仲よくなったママ友の1人が手伝いに来てくれるように。娘の陽向ちゃんも畑作業をよく手伝ってくれている。

「周囲はのどかな風景が広がっていますが、有明海沿岸道路を使えば佐賀市内まで車で約25分、意外と便利で暮らしやすいです。陽向もすっかり馴染んでのびのび育っています」と慎也さん。

ハウスは6棟、22aの広さがある。独立就農する際に、ハウスの設置には県、町、農協からの補助金を活用した。

すっかり慣れた手つきで作業を手伝う陽向ちゃん。「頼りになるうちのスタッフの1人です」と慎也さん。

 工藤さんが暮らすのは白石町でもイチゴづくりで有名な人が多い福富(ふくどみ)地区。この地区への新規就農者は珍しいこともあり、周囲がいろいろと気にかけてくれるという。

 今年から白イチゴの栽培も始めたという慎也さん。今後は、さらに面積を広げて、農協以外の出荷も目指すなどしていきたいと話す。「私も今後は研修生を受け入れるなど、地域に貢献していきたいですね」。

ホテルオークラJRハウステンボスのクリスマスケーキにイチゴが使われた。「ほかにも、ふるさと納税の返礼品など、いろいろと紹介いただき、とてもありがたいです」と慎也さん。

イチゴは、日照時間が短くなる冬の夜間、電気を灯して生長を促す電照栽培を行う。ハウスに灯りがともる風景は美しい。

移住して変わったこと 人とのかかわりが増えました

「神奈川にいたころは、近所付き合いはあいさつ程度で、仕事以外で人と話すことが少なかったですが、こちらに来てからは話すことが多くなりました。農作業をしていると通りかかった人が声をかけてくださったり、近所からいただきものをしたり、研修時代の仲間とは電話でいろいろと相談したりしています。人とのかかわりが増えたのが大きな違いですね」

白石町移住支援情報 移住希望者には住まいの補助あり。新規就農支援も充実

 有明海に面した白石町。町内に広がる白石平野は肥沃な大地で、野菜や米、麦の栽培に適している。町では、住まいの補助や新婚を機に移住する夫妻への支援金補助などを用意し、移住する人をサポート。また、「しろいし農業塾」「新規就農者育成総合対策」「青年等就農計画制度」など、新規就農をする人をサポートする制度も充実している。

栄養豊富な粘質土壌で農業に適した白石平野。弥生時代から自然陸化し、中世から現在に至るまでの多くの干拓事業で豊かな大地となっている。

文/水野昌美 写真提供/工藤慎也さん、白石町

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