第24回「ミッドライフクライシス」
「私たちの未来は、私たちで作る!」
あなたの「困りごと」、「モヤモヤ」、「お悩み」、
もしくは、「変えていきたい社会の課題」などを通して、みんなで一緒に「これから」を考えていく番組です。
今回も、リスナーの方からいただいたメッセージに、スタジオの3人がこたえました。
私は、コロナ禍に26年間勤めた会社をリストラされてしまいました。それから100社以上の会社に履歴書を送って、ようやく採用された会社も8月いっぱいで倒産してしまいました。
私は、いままで、学校を小・中・高と、ずっと皆勤で真面目に頑張ってきたのですが、その成果が見られないこの現状がとても嫌になってしまいます。
小泉:大変な状況だったね。本当にきちっと、皆勤賞で頑張って真面目に生きてきたという人がこういう状況に。
上村:電話番号が書いてあったので、スタッフがより詳しく、お話を伺いました。
※紹介の許諾もいただいています。
自動車の電球を作っている会社でおよそ26年、働きました。環境への配慮が欠かせない時代の中で電球の需要が急激に減り、製造部門が大きく縮小、およそ半数がリストラに合いました。これまで、がむしゃらにやってきました。それが50歳を前にして、人生設計がおかしくなった感じです。
今は精神的にも落ち着かず、常に求人を探しながら、年齢が合うものに履歴書を送って、という繰り返しです。これが35歳だったら、違っていたのではないかと思います。私の願いは「早く定職を見つけて安定したい」。
景気が上向いてきた、とは言われますが、私は地方に暮らしていて、むしろ、景気が悪化しているという印象しかありません。
小泉:そうか。こういう工場とか、物を造る業種の人もいろいろな変化が起こっているだろうと思う。あと、円安だから外資系の会社のリストラもすごくあった、って聞きますよね。
大石:そうですね。
小泉:きっと、今は「きちんと就職しなくてはいけない」っていう想いに駆られていると思う。そんなふうには思えないかもしれないけど「これは新しい人生のチャンス」と捉えて、いろいろなアルバイトとか、自分が携わったことのなかったようなお仕事とかも短期的に、という気持ちで行ってみたりすると、また世界が広がったりしないですかね。そんな簡単ではないのかな。
大石:僕の父が60歳くらいの時に会社を一旦辞めて、新たな職探しみたいなことをしていたんです。ずいぶん前ですけど。でも、前にやっていた管理職とかのプライドなんかもあって、仕事が何ヶ月かしか持たない、みたいなことがあってね。
小泉:そうだね。
大石:だけど、夏休みの宿題で本棚を作ってくれたんです。うちの父親もメーカーの技術者で、ものすごく立派な本棚が出来上がったんですよ。やっぱり、製造現場で蓄積されてきた技術、コツコツとやってきたことって、すごいんですよね。
小泉:製造現場の人たちが会社を辞めて、リタイアした人たちが作った物とか、結構ありますよね。
大石:あります。スピーカーとか。あと、僕の会社は元々ベンチャーでしょ?ベンチャーの会社って、ベテランの製造ノウハウって手に入らないんですよ。みんな若いから。
小泉:そうそう。若い企業が、欲しているかもしれないよね。そういうのをうまくマッチングできたらすごくいいから。地方だから、っておっしゃってるけど、意外とあるかもしれないよなって思ったり。
大石:こういうノウハウを求めている人はいると思う。
小泉:こういう時、ネガティブになってしまうと思うけど、「新しいチャンスだ」って思うと、いろいろなものが目に入ってくると思うの。自分の運命とか人生を好転させるのは結局自分だから。今は苦しいかもしれないけど、ちょっと違うところに目を向ける。精神的には、そういうアドバイスができるかな。
上村:今、広がりを見せている働き方が「スキマバイト」。働く人の働きたい時間と、雇い主の働いてほしい時間をマッチングするサービスです。「安定したい」という人の解決策にはなりませんが、働き方が多様化している時代に「こういう選択肢もある」と知っていることはひとつの武器になるかもしれません。
小泉:今まで自分がやってきたことって絶対に、ひとつも間違いじゃないから。それが活かせる何か、に出会えると思うので、頑張ってください。
M) 明星 / トータス松本
幸福度は「U」のような形
ミッドライフクライシス
お悩みから視点を広げて、こんな話題も紹介しました。
上村:アメリカの科学誌「ネイチャー・エイジング」に発表された研究結果によると、老化はゆっくり進むのではなく、急に加速する。その年齢は44歳と、60歳ということです。
小泉:私、かなり前に1回目がきているはずなんですけど、なんの自覚もなかったです。
上村:(笑)
大石:ちょっとね、体力は落ちたなって思う。すぐ眠たくなるとか。
小泉:あ、そういう意味では、私は早く起きちゃう、目が覚めちゃう始まりは44歳あたりだったかも。笑
でも、私は体調の変化とかは、ちょっと太る、ちょっと汗が出る、とかしかなかったから。60歳が目前だからね。
大石:「この辺で来るよ」って知っているだけでも、心の準備がね。
上村:こうした中で注目されているのが「ミッドライフクライシス(=中年の危機)」。40歳から50歳の「人生の折り返し地点に立つ人の曖昧な不安」を指す概念です。ジェンダーに関わらず、おそよ8割の人が40~50代に大きな危機を迎えるとされています。
小泉:私は、中年期って、ただ楽しく過ぎていっちゃったんですけど。勉強して、大学を卒業して、就職して、っていう人はちょうどぽっかり。女性だと子育てが安定して一人になって、自分の時間ができた時にそこを何で埋めるかわからなくなっちゃうっていう相談に応えたことがあります。
大石:ちょうどこの年齢って管理職になるタイミングだったり、ちょうど終わるタイミングだったり。
小泉:そこまですごく頑張ってたから、急に「えっ」ってなるかもね。
上村:この間、母親がちょうどそうなってました。今、53歳なんですけど、姉のことを20歳で産んで、一番下の妹がこの春大学1年生になったんですね。20歳の時からずっと子育てを中心にやってきたら、急にぽっかり穴が開いちゃって。「私はこの先どうやっていけばいいんだろう」「存在価値はどうなってるんだろう」っていうのに陥ってました。でも、そこで自分を見返して「やっぱり子どもが好き」って発見したんです。
小泉:わー。
上村:そうしたら新たに地元の幼稚園のバスの添乗員みたいなお仕事を始めて、それがすごく楽しいみたいです。
小泉:よかったね。
上村:落ち込んでいる時は、すごく心配しました。「子どもたちが元気に育ってるからいいじゃん」って思うんですけど、感謝もいっぱい示しているつもりなんですけど。
小泉:自分の役割みたいなものが終わっていくことに寂しさを感じたりするんだろうな。でも、よかったね。そうやってちゃんと向き合って、なにかできることが見つかるといいですね。
(TBSラジオ『サステバ』より抜粋)